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 米国大統領選の日に泊まった。歴史的瞬間に遭遇した人々の熱狂ぶりを期待していたのだがカリフォルニア州ということもあり、まったく盛り上がりをみせていなかった。オバマのTシャツはさすがに売り切れていたが。
 さて、公開はもう19年前になるが、映画「プリティ・ウーマン」の舞台になったホテルである。高級なショッピング街、ロデオ・ドライブから帰ったジュリア・ロバーツやリチャード・ギアの姿を思い出す。あのシーンとなったロビーのデザインを探したのだが、それらしいところがない。映画はつくり込まれていたのだろうか。
 今はフォー・シーズンズのひとつ。375室のうち137室がスイート。タワー部ではなく本館に泊まった。
 広い! 約60㎡。部屋幅10m。
 前室、パーラー、ベッドゾーン、デスク、ワードローブ、パウダーとシャワーブース、バスタブとベイスン、トイレという順に一筆書きのように並んでいるが、ループではないのでトイレが恐ろしく遠い。テレビは薄型の大画面がベッドの前に鎮座している。オーディオ機器はiPodのコネクターがついていて、いつも聴いている音楽がすぐ楽しめる。ベッドは高さ700mmもあり、落ちるとけがをしそうだ。ベッドはどこでもどんどん高くなったが、このへんが限界。そう思いませんか?
 コーナーの部屋だから、窓が6つもあり、ひとつはガラリの折扉がつく。ベイスンはシングル。
 部屋全体の色調は壁塗装の「卵色」を中心に、カーペットの黄土色、家具などの茶系、バスルームの大理石ローザコラーレなど赤味のあるベージュ系できわめて抑えられている。生化学の語で「褐変(かっぺん)」という概念がある。地球上のすべてのものは酸化のため、褐色に変わっていくことをいう。ヒトが老化しても、ワインでも、そうなる。そういうこともあってか白から褐色にかけてはカラーリングのコンセプトで最も賛意を得られやすいと思う。究極の色であり、上品で優雅でもある。
 ロサンゼルスのホテルはたくさんあるが、モンドリアン・ホテルの出現以降、セレブの若者向きのようなホテルと、ビバリー・ウイルシャーなどのクラシック系の2種類が共存しているようだ。このホテルにしても1階のダイニングルームCUTやバーの改装では、リチャード・マイヤーを起用したコンテンポラリー・デザインで過渡期を感じさせる。
 モンドリアンの改装はベンジャミン・ノリエガ・オーティスがプロデュース。フィリップ・スタルク自身は2008年10月28日オープンのホテル、SLS@ビバリーヒルズのパブリックで、過激にもおもちゃ箱をひっくり返したようなインテリアをつくってしまった。刺激的なことこのうえなく、こんなものをつくった後はいったいどうするのだろうと思わせる。
 でもこの次に泊まってみよう。

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