目指すは大地 石井智子美建設計事務所 ホームページへ

 30年近く前、石井修の名を記憶に刻んだのは“目神山の建築家”としてだった。関西の阪神間の山に、長い年月かけて住宅をつくりつづけ、すばらしい環境の住宅群を生み出しつつあるというのである。
 でも、そう聞いても、出かける気までは至らない。神戸の電信柱再利用の「アトリエのある家」(1968)は昔、訪れているし、神戸のポートアイランドの「シャルレ本社ビル」(83)も見ているが、自分の関心との接点をつかめないまま日が過ぎ、結局、石井さんとは会釈程度で終わってしまった。あれこれ聞いておけばよかった、と今は反省している。
 近年になって、アレッと心に響く石井建築シーンをふたつ目にした。
 ひとつは屋上庭園の一件。屋上庭園はたくさん試みられているが、元祖ル・コルビュジエこのかた、建築と植物の美学的背反は克服しがたく、離婚直前の友人夫妻のようで見ていてつらい。木に竹を継ぐのも大変なのに人工物に自然物を継ぐのはもっと大変。うまくいっていたのは、本連載でも取り上げた藤木忠善の「すまい/サニーボックス」(63・99年vol.3)くらいか。それも、取材に行ったときには庭園部分はもう消えていた。
 そうした死屍累々状態のなかで、草むらにしゃがんでほほえむ石井さんの写真を見た。目神山の自邸の屋上庭園だという。屋上庭園の肝所は、建築への愛と植物への愛の両方が見る人に伝わることだが、それが実現している。行かねばなるまい。

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