特集3/ケーススタディ

保存修復ではなく解体再利用でもなく 中村勇大アトリエ ホームページへ

 普通。
 普通でない。
 形あるもののつくり手は、このふたつの領分を行き来し、横断し、どこかで落着点を見つける。
「普通」の領分だけですべてをすませてしまうと、なにごとも起こらない。どこにでもある「普通」がもうひとつ増えるだけ。
 独創が「普通でない」領分にあるのは明らかだが、そこですべてをすませられるわけではない。対象が建築の場合はなおさら。注文主の意向、法的な規制、素材の選択、施工上の納まり、耐久性、コスト、施工者の技量。それらはほとんどの場合、慣習にのっとった「普通」の解決を要請するものだ。そのほうがリスクが少なく、結果が見通せるからである。
 ふたつの領分の行き来は、存外難しい。だからたいていは、意図的に、あるいは無意識のうちに、境目はあいまいにされたまま放置される。

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