50年後も世界一の品質を

 SWFCがあるのは大規模開発が進む上海東部の浦東新区。立ち並ぶ高層ビルのなかでも群を抜いて長身の建物は、外観も異彩を放っている。装飾的なデザインが多いほかのビルとは一線を画した直線的なラインで、高層部には栓抜きのような逆台形の穴があいているのだ。
 展望台は100階、97階、94階の3カ所にあり、逆台形の上底が100階、下底が97階にあたる。到着早々さっそく展望台に上ってみたが、50~60階レベルの超高層ビル群すらはるか下に見え、しばし下界を見下ろす神の気分が味わえる。とくに、100階の展望台は床の一部も透明なので、真下に下界の風景が広がって見える。ただし、取材当日は幸か不幸か、雲り空だったため、高所恐怖症でもなんとか耐えられるスリルだった。
 ちなみに、94階の展望フロアにも意外な世界一がある。外が見える「世界一高いトイレ」がそれで、男女用とも開口部に面しており、外からのぞかれる心配もないので、開放的な気分で用が足せるおすすめスポットである。
 ところで、このプロジェクト、じつは苦節14年を経てようやく日の目を見たものだという。森ビルが着手したのが1994年、その後、97年には着工にこぎつけたが、アジア通貨危機に端を発し、米同時多発テロ、SARSの大流行などの影響でプロジェクトは一時中断した。同社設備設計グループの三上泰幸さんは「この逆境を逆手にとり、よりグローバル・スタンダードな建物にしようと設計の全面見直しを行った結果、より高く太いビルになり、03年の再着工を迎えました」と振り返る。
 中断のあいだに状況が変わって、日本企業が単独で工事を行えなくなり、中国の建設業者との連合体になるなど、その後も苦労の連続だったようだが、それを語ると取材時間の大半を費やしてしまうと苦笑する三上さん。目下、ドバイなど世界各国でより高い超高層ビルが続々建設中であるため、高さを競ってもいずれは抜かれてしまう。「それより50年後も品質的に世界一を維持できるビルを目指した」と語る。地震や強風に対する安全性とセキュリティには万全を尽くし、12フロアごとに煙の侵入をシャットアウトする避難階を設けるなど、防災計画にも抜かりはないという。

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