特集5/対談

―― 既存の建物はそのまま残そうと思ったわけですね。
藤江 はい。現場を初めて見たときに、須永先生には残したいとお願いしました。なかなか現場に連れていってもらえませんでしたが。
須永 連れてきたくなかったですね、汚いので(笑)。
藤江 実際に来てみると、大きな旋盤機械と山積みの鉄工くずがあったのですが、土間の床が印象的でした。
須永 鉄の切り粉が落ちるので、昔はコンクリートを打たずに土のままでした。
藤江 床も壁も構造体も、全体が黒ずんでいて雰囲気がありましたね。
須永 黒ずんでいるのは、鉄を削るときに「しょうゆ油(あぶら)」を使うからです。茶色い油をたらしながら切削するので油煙が立ちこめます。
藤江 一見すると暗いのですが、中にいるとノスタルジックな感じで落ち着きがありますし、外から射し込む光がきれいです。床全体にコンクリートを打ったときに、現代アートのような空間が現れました。そのとき、古いものはそのまま残して、新しいものを対比させるだけで、全体が魅力的になるだろうと確信しました。そして、同形状ですが、寝室と水まわりという機能の異なるシンプルな形のボックスをふたつつくりました。
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