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UD style TOTOのユニバーサルデザイン

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ホッとワクワク+(プラス)

vol.27 インタビュー企画 TOTOの優しさをつくる人たち-第4回 開発者 江幡晶さん

TOTOバスクリエイトの配送作業スペースにて

vol.27 インタビュー企画TOTOの優しさをつくる人たち-第4回 開発者 江幡晶さん

TOTOバスクリエイトの配送作業スペースにて

「ご高齢の方もサポートする方も使いやすい介護ユニットバスに挑戦」

vol.27は、2014年度発売の新商品、
介護ユニットバスの開発者、江幡晶さんに話をうかがいます。
介助される人が安心して、快適に入浴できるように、介助する人は動きやすく、メンテナンスしやすく…
使用者全員の使い勝手を配慮して実現した、数々の工夫とその努力をお話しいただきました。

個別入浴化と分散設置により、施設向けユニットバスのニーズ高まる

個別入浴化と分散設置により、施設向けユニットバスのニーズ高まる

―――介護ユニットバスの開発のきっかけは、どういったことでしょうか?

現在、日本は高齢化が進行中で高齢者施設や高齢者向け住宅などが増加しています。その中でも特に増えているのが、サービス付き高齢者向け住宅。2012年4月は約4万戸でしたが、2014年10月はその4倍の16万戸になっています。こうした施設などでは、以前は大浴場などの共用浴場での集団ケアが主流だったのですが、最近はプライバシーへの配慮や、感染症予防のために、ひとりずつ入る個別入浴化が進んでいます。ですので、各階に共用のユニットバスを設置するようになってきているんですよ。また、高齢者施設を手掛ける設計者にアンケートをとったところ、ユニットバスを使いたいという回答が全体の6割を占めました。こういったところから、施設向けの介護ユニットバスの開発が始まりました。2年ほど前のことです。

江幡さんポートレート浴室開発部シーズ開発グループ
江幡 晶さん
東北大学で機械工学を専攻。1993年に入社後、材料の研究開発に従事。2000年より現職

介護ユニットバス写真介護ユニットバスの全景

―――在来工法の浴室と、ユニットバスの違いは?

いちばんは防水性ですね。また、在来工法の浴室と比べると浴室全体の保温性が高い。工期が短くて済む、というメリットもあります。

―――機能面ではどのようなところがポイントになりましたか?

まず、課題になったのは、介助が必要な方が浴槽へアプローチするシーンですね。介助する側もされる側も、快適かつスムーズに動くにはどうしたらいいか。私たちがたどりついた結論は、浴槽短辺側の一方にスペースを確保し、浴槽の縁に「トランスファーボード(フックタイプ)」というコンパクトな引っ掛け式の移乗台を取り付けられるようにすることでした。介助が必要な方にこれに一旦腰掛けてもらえば、介助する人は後ろから介助できるため、体勢を崩しにくいんです。また、浴槽脇のスペースを使うので、湯船の中に片足を入れずに済みます。トランスファーボードは着脱式で、使わない時はたたんで収納でき、洗い場は広々と使えます。

―――浴槽も、安心して入浴できるようにいろいろな工夫があるとお聞きしました。

ええ、そうです。まずひとつは、浴槽の底と、洗い場の高さを揃えたこと。高齢者が立位で入浴するときに、双方の高さに差があると片足を浴槽内に入れたとき、体のバランスを崩したりするんです。また、通常ですと浴槽の排水口は洗い場側についているのですが、介護ユニットバスでは、浴槽をまたぐときに邪魔にならないよう奥側に配置しました。

―――なるほど。

もうひとつは、浴槽の3方向の縁を握りやすいように溝を設けたことです。立ち上がるときやまたぐときなど、この溝があって握れるような形状になっていると、人は自然に握るんですね。3方向に溝があるとそういった動作もラクにとれるようです。

―――浴槽は、エプロン部の下の方にごく緩やかにカーブを描いているユニークな形状です。これにも意味がありそうですね。

いろいろな視点から、この独特の形が導き出されました。ひとつは機能の面から。上部よりも下部がすぼまっているとその部分に足を置くことができて、浴槽の縁をまたぎやすいんですね。段差の少ない滑らかな形状は、お掃除しやすい点もメリットですね。もうひとつはデザインの面からです。開発時に高齢者施設の方などにヒアリングをしたところ、介護ユニットバスに求められるデザインは「施設っぽくない」「柔らかく明るい感じ」「家庭的な雰囲気」であることが分かりました。ですので、デザイナーが、機能一辺倒でないきれいな曲線の形状に仕上げたんですよ。
壁には柔らかな木目を取り入れています。淡いベージュ系のほか、濃いブラウン系も用意しました。施設の廊下などのインテリアには濃い木目をあしらっているケースがあり、揃えてコーディネートできるようにと考えました。

介助の実演 浴槽に固定したトランスファーボード 左/トランスファーボード(フック式)を使用すると限られた介助スペースを有効に活用可能 右/トランスファーボードは浴槽の縁を挟むように掛けて固定できる

カットした浴槽をまたいでたった様子カットした浴槽をまたいで立った様子。浴槽の底と洗い場の高さが揃っていることがわかる

握りやすい形状の浴槽縁浴槽の縁は握りやすい形状で、ぐっと腕に力を入れて立ち上がりやすい

―――浴槽に入った姿勢は安定しているように見えますね。

浴槽内の背の当たる場所は、適度な斜度とカーブをつけて、寄り掛かったときずり落ちることなく心地よい姿勢を保ち続けられます。

―――シャワーの周辺の手すりは、掴みやすそうです。

この手すりの形がポイントです。洗面器置台がついてシャワーチェアが壁から遠い場合も、手元に近くしっかりつかめます。また、従来のものと比べると、両手でつかんで立ち上がったときに前傾姿勢になっても、頭と壁の間に余裕ができて頭をぶつけにくく、ラクな姿勢で立ち座りいただけますね。それから、ぐっと掴んでお尻を浮かせやすく、身体を洗いやすくするメリットもあります。以前から施設向けの手すりとして取り扱っていましたが評判がよく、介護ユニットバスにも組み込みました。

―――施設では、連続してできるだけ多くの皆さんの入浴を手伝わなくてはなりませんね。そうした効率を上げるための工夫はありますか?

ヒアリングによりますと、デイサービスなどの入浴サービスの回数が多いところですと、ひとり当たり30分程度のペースで次々に入浴いただく場合もあります。その際、ひとりずつ浴槽のお湯を入れ替えるんですね。そのため、お湯の入れ替えをなるべく早くしたいというニーズがあることが分かり、従来品よりも30%早く排水できるトラップを標準仕様にしました。従来の類似商品で4,5分かかっていたのですが、当商品では約3分で排水が可能です。

浴槽内に座った様子浴槽内に座った様子。背もたれの緩やかなカーブが背中にフィットし、一定の姿勢を保ちやすい

いすから立ち上がる様子いすから手すりをつかんで身体を持ち上げる際、頭をぶつけにくい

排水トラップの比較左が従来品、右が介護ユニットバスの排水トラップ。排水管の口径が大きくなっている

取り外しが簡単な引戸のレール出入り口の3枚引戸のレールは、簡単に外して洗える

―――使い勝手は、発売前にどのように検証されたのですか?

試作品のときに神奈川・茅ヶ崎のUD研究所などで、社内のユニバーサルデザイン部門の社員が実際に使ってみました。あとは、理学療法士の方、高齢者施設で実際に介助している方に依頼して、使い勝手を確認いただきました。今後は、すでに設置されている施設に伺い、使い勝手をヒアリングさせていただく予定です。

―――高齢化社会がますます進行して、介護ユニットバスはニーズが高まりそうです。

そうですね。施設を活用している方が、安心して快適なバスタイムを楽しめるようになるといいなと思います。私も何年か後には高齢者施設に入り、このユニットバスを利用しているかもしれません。介助してくださる職員の方に向かって、「これは私がつくったんじゃ」と言って、「はいはい、その話は何度も聞きましたよー」って言われるようなシーンが頭に思い浮かびます。そういうやりとりをするのが夢かもしれない(笑)。

―――年齢を問わず、バスタイムを楽しめる時代が来たように感じます。本日は、どうもありがとうございました。

ありがとうございました。

編集後記 歳を重ね、身体の動きがままならなくなってきた…そんな風に感じるようになってからも、バスタイムは変わることなく快適に過ごしたいもの。今回、取材で介護ユニットバスを使ってみて、自分自身が安全に入浴できるのはもちろん、介助してくださる方も動きやすいことがよくわかりました。将来の自分をイメージしながら、こういうユニットバスが我が家や入所した施設にあれば老後のバスタイムは安泰…とほっとしました。また、福祉機器らしくない、木目の壁や白い手すりをあしらったおしゃれなデザインは、ずっと多くの方が待ち望んでいたように思います。 日経デザイン編集者 介川 亜紀

写真/鈴木愛子 構成・文/介川亜紀 監修/日経デザイン 2014年12月12日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。


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次回予告
vol.28は、日経デザイン編集長の丸尾弘志氏がデザインの識者とこれからのユニバーサルデザインを語り合う、インタビュー企画第2弾です。
2015年2月下旬公開予定。