特集/座談会

多様な東京だからこそ建築プロデュースも成り立つ

北山 織山さんや髙木さんを見ていると、建築が好きでくわしいし、都市に対する明確な思想をもっていますよね。集合住宅を建てると普通は地主が自分の最大利益のためにつくるわけですが、彼らは、周辺も含めた街をよくしようという精神で建築をつくる人を選んで一緒に建物をつくり、そういう建物が複数できることによって街をよくしたいんです。狙っているのはちょうど古い木賃アパートが立ち並ぶ、東京都の木造密集市街地整備地区のあたりです。
白井 以前、織山さんを取材したのですが、本来なら公共が整備すべき密集地を民間が変えていこうという思想はさすがだと思いました。
北山 東京という都市は、巨大ディベロッパーが中心の島の部分の大規模再開発をやって、その島を取り巻く海というか周辺部の泥沼のあたりの開発を彼らのような小資本が手がけている……両方が同時に動いている感じがしますね。このメカニズムは地方都市ではできない、多様な東京だからこそ建築プロデュースも成り立つと思います。大手ディベロッパーだけでなく、髙木さんや織山さんも都市をつくっているんですよね。
―― 若い建築家にとって、建築プロデューサーから指名されて大きな仕事を任されるというのは、ありがたいことですよね。
北山 クライアントをひとりつかまえればいい戸建て住宅と違って、大きな社会性をもったものをつくるというのは建築家にとって非常に大事で、そこで鍛えられるし、本当にありがたいことです。集合住宅の場合、設計料ではなく設計「量」が膨大で大変ですが(笑)。
白井 こと東京に関しては、建築プロデューサーが活躍する余地はまだまだありそうですね。
大森 これまでにないものをつくり出すときには、やはり明確なプロデューサーの存在が欠かせないと思います。
北山 今は社会がガラガラと大きく動いているから、かなり嗅覚をもっていなければできない仕事ですね。建築家にもそういう嗅覚が必要だと思います。多様な都市をつくっていこうというセンスや思想をもっていることが大切なんじゃないでしょうか。
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