特集/インタビュー⑤

外側を考えること

―― この建物で私たちがとても興味をもったのは、薄い表層です。薄く透き通るファサードが屋根まで続き、既存の外壁とのあいだにスペースを設けることで内部空間がギリギリ保たれているように思います。
河内 周辺は住宅が建て込んでいますが、それぞれが家の前の通りに植栽を置くなどして親密に付き合っています。私たちも街に開きたいと思っていましたが、ある程度プライバシーもほしい。元の家では窓にくもりガラスが入っていたのですが、透明ガラスに入れ替えたうえで、スキンをもう1枚つくることにしました。既存建物の仕上げのうえに防水紙とガルバリウム鋼板を施し、道路面だけにさらに外側にFRPのスキンを付け加えるという構成です。FRPの波板はフレームをサンドイッチするように固定されています。両側から板を張ることで、スキンの厚さやモジュールを感じさせないようにと考えました。波板はこの界隈の建物でたくさん使われているデザイン要素です。フレームは、通常の建築では使われない40㎜角のアルミ材を中心とした規格部材です。このスキンにあける開口部の位置は、道路を挟んだ隣家との見え方で決めています。
 また、スキンと外壁のあいだは完全な外部ではなく、インテリアのような空間にしたかったので、階段室や住戸玄関は一部にFRPを屋根状に架けたり、打ち合わせスペース前は縁側のようにしています。3階のテラスも部屋のようにしたいと思い、インテリア用の照明器具の中に防水のランプを入れて部屋の雰囲気を出しています。
 外観を考えることはずっと続けています。私は以前、難波和彦さんの事務所で「箱の家」を何軒か担当しました。そのときには室内を深く検討していたのですが、外のことも室内と行き来しながら考えたいと思っています。以前は「建築は内部空間を確保するためのもので、外観は結果的に出てくるもの」という考えがあったと思います。しかし今自分は、住宅のまわりに対して考えていくことで、建物の外形や外観で周辺の環境とどのようにつなげるのかということに関心があります。
 かつては住宅をつくるときにも「都市」という相手をとらえて考えていたようですが、今の時代には、都市全体というよりも敷地の少しまわりの街に対するスケールを考えたい。そういう意味では、前提条件はよりはっきりしてきているように思います。
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