編集ノート

過去にとらわれず、
過去を活かす

文=伏見唯

古建築のよさが、もっと現代建築に活かされないものだろうか、とずっと考えている。人に訴えかける力をもった建築が、選り抜かれて現代まで残ってきたということがあるにしても、たとえば待庵や桂離宮のような、建築史を彩る秀麗な建物を前にすると、やはり感動する。ただ、そうした建築のよさを現代建築に活かしたいと思っても、一筋縄ではいかないだろう。生活、社会、技術あるいは法律などのあり方が、これだけ変わってしまっては、少なくともスタイルをそのまま維持するのは、あまりに難しい。もちろん和風建築のなかに、過去の参照を経た傑作はあるけれども、いわゆる正統な和風以外にも、古建築から得られる知性や感性の門戸は、開かれていてほしい。
そうした想いで、独自の和の展開を求めて取材した建築家は、結果的に、じつは村野藤吾から影響を受けた人たちばかりだった。作風がぜんぜん違うから意外に思われるかもしれないが、建築家本人の言葉でもある。村野藤吾の「現在主義」というスタンス、とくに古建築を尊重しつつも「過去にとらわれない」というところで、村野との共通点を感じた。つまりおそらくは、「過去にとらわれない」ことが、時にはむしろ、過去を活かすことになるのだろう。