ケーススタディ2

木の総合性

 網野さんの母親が、住み手として感想を話してくれた。「よく木のぬくもりなんて聞くけれど、確かに何かに包まれているような、あたたかな気持ちになりますね。それから、外が30度の日でもエアコン不要で、室内は快適ですよ」。息子である網野さんの前での話なのでやや大げさかもしれないが、お母さんは木が精神に与える影響や熱環境のよさを実感しているようである。
 木が精神に与える影響については説明が難しいが、そもそも木材は、軽さや強度、加工のしやすさはもちろん、断熱性、蓄熱性、調湿性にもすぐれた建築材料である。そして網野さんは、「木の性質を総合的に期待するためには、まとまった量の木を使う必要がある」と説明する。たとえば、木はグラスウールなどに比べて断熱性は劣るが、同時に蓄熱性や調湿性をもつ。そこで、柱間を断熱材の代わりに木材で満たせば、これらの性質を総合した壁ができる。断熱材は、そのうえで必要なら使う。結果として、大量の木材を使うことになるが、デッドストックを活用すること、下地材や仕上材が省略できることから、費用も妥当な範囲に収まるそうだ。しかし、仕上材を省略することで、木材相互や、壁・床の接合部は露わになるので、金物さえ見えない「木のカタマリの家」の構法は、とても複雑なものだろうと思われた。


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