特集/ケーススタディ

過去と現在が遭遇する場 永山祐子さんホームページ へ

 多くの寺が点在し、郷愁を誘う街並みが続く、東京の谷中。散策路として人気のこの界隈で、交差点の角に「カヤバ珈琲」はかわいらしくたたずんでいる。木造2階建てで、出桁造の軒がまわる町家は大正5(1916)年築。板張りの外壁はすっかり焦げ茶色になり、100年近くの時間と空気を沈着してきたかのような趣を醸している。この建物に新しい要素を組み合わせて活性化してよみがえらせ、周辺の街にも一石を投じたのが、永山祐子さんの再生計画である。
 この建物は、ミルクホールやかき氷店などを経て昭和13(1938)年よりカヤバ珈琲として営業していたものが、2006年に閉店。その後NPO法人たいとう歴史都市研究会が借り受け、SCAI THE BATHHOUSEの協力のもと、谷中を新しい文化の発信地とするプロジェクトの一環として喫茶店を再生することになった。再生計画を依頼された永山さんは、すでに熟成されなつかしさの香る建物を、どのようにとらえ直して活用するかという命題に直面する。
「ノスタルジックな要素を拾い上げるよりも、空間のもつ特性を拡大解釈して見せることで、今の時代に合う別のストーリーが浮かび上がってくるのではないか」と永山さんは考えた。一般的には建物の保存活用というと、様式や使われている部材の特徴、その背景などを掘り起こし、復元したうえで余すところなく説明することに終始しがちである。しかし、永山さんは特定の様式や建材についての考察はあえて脇に置き、この場で生まれている、光の明暗のコントラストという現象と特性に着目した。


>>「カヤバ珈琲」の平面図を見る
>>「カヤバ珈琲」の光壁平面詳細図を見る
>>「カヤバ珈琲」の光壁断面詳細図を見る

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