これまで段階的に拡張工事を行ってきたという第2ターミナルビル。今回拡張されたのはその大部分が、旅客だけでなく誰もが利用できる商業施設や展望スペースのあるエリアの南側部分。羽田空港の国際化に伴うこの増築を機に、従来のトイレのあり方を見直すことになったと青木さんは振り返る。
「今回トイレを計画するうえで重点を置いたのは、空港のトイレとして利用しやすいことはもちろん、商業施設のトイレとしても快適に利用していただけるような計画にするということでした」
新しいトイレをつくるにあたり、「荷物をもっと置きやすくしてほしい」など、トイレに対する要望も数々寄せられていたため、それらを反映したという。
要望が多かった荷物置き場については、ブースの左右幅に対して便器の位置を偏心させ、前と横にキャリーバッグが置けるスペースを確保。また、大・小便器ともに、背後のライニングにも大きめのボストンバッグ程度なら置けるよう、奥行きを確保した。「ブース内、小便器もゆとりをもたせているので、上に置いた荷物が落ちないかと心配せずに、ゆっくりと用を足していただけます」と笑いながら語るのは、設計の佐藤さん。
さらに、ブース内と小便器脇にも傘掛け用のフックを設置。女性には想像もつかないが、傘の置き場がないばかりに、自分の背広のポケットやベルトに傘を引っかけて用を足す男性も珍しくないとか。そんな行為の数々が、行き届いた配慮によって解消されている。
ブースの幅と奥行き、通路幅などの寸法についても、一つひとつ見直した、と佐藤さんは言う。
「たとえばブース内については、あきスペースやボタンの位置は適切か、また、ブースの内寸を増やしたらどうか、それだと余裕はできるが器具数が減ってしまうとか。通路の幅についても、ブース数が増えるとクランクができて、壁面に設置した手指乾燥機がじゃまになるのではないかなど、さまざまな問題に対して一つひとつ対応策を出していきました」