Vol.25 シンプルなフォルムに驚きの性能! 高機能と高品質を両立させた洗髪洗面化粧台 新『サクア』の「エアインスウィング水栓」に注目。

Vol.25シンプルなフォルムに驚きの性能! 高機能と高品質を両立させた洗髪洗面化粧台 新『サクア』の「エアインスウィング水栓」に注目。Text:Yayoi Okazaki Photo:Hiromitsu Uchida

洗面台で髪が洗えたらいいな。そんな夢を形にしたのが1985年に誕生したTOTOの「シャンプードレッサー」、業界初の洗髪洗面化粧台でした。「朝シャン」という流行語を生んだこの初代発売から31年目となる今年、画期的な新製品が登場。それがフルモデルチェンジした新『サクア』です。スクエア形状の大型陶器製ボウルとシンプルモダンな水栓が、なんともスタイリッシュ! しかも洗面水栓では初のエアイン化に成功。約20%の節水が可能になりました。ただ、このecoな「エアインスウィング水栓」完成の陰に、若手開発者の過酷な時間との戦いが… スリリングな開発ストーリーをお届けします。

小薗 孝尚(こぞの・たかひさ)

機器水栓事業部
水栓開発部 水栓品質技術グループ

2012年TOTO株式会社入社
機器水栓開発部で洗面水栓開発を担当。
2014年度下期よりサクアのモデルチェンジに従事。
2015年度下期より改良設計担当に。


Chapter 1

未完成の新型水栓をいきなり任される?

未完成の新型水栓をいきなり任される?

僕が新『サクア』の水栓開発チームに加わったのは途中から。ちょうど基本構成決定後の段階でした。入社3年目の僕は、チームでもいちばんの若手。なのに、フルモデルチェンジする『サクア』の「エアインスウィング水栓」を担当して完成させろと。いきなりなので驚きましたね。本当に僕でいいのだろうか? そうとまどいつつも、すぐにスタートせざるを得ない状況に。というのも、完成目標はなんと4ヶ月後! しかも洗面水栓初のエアイン機能を搭載し、左右だけじゃなく上下にも動くまったく新しい水栓。責任の重さと不安で押しつぶされそうでしたが、デザインは驚くほど格好いい! 完成したときのわくわく感を想像して、なんとか頑張ってみようと決心しました。

仕事を引き継いでみると、エアイン機能の搭載自体はほぼ完成間近。問題はエアインで発生する不具合、それが「水はね」と「残水」でした。エアインとは、吐水に空気を含ませるTOTO独自の技術。洗い心地を変えずに節水できるのが優れた特徴です。でも空気を含んだ水粒ははじけやすい。水はねが増えると洋服のお腹のところがぬれてしまう。また水栓を閉めたあとに、ぽたぽたっと水がたれる。この「残水」がなぜかエアインで出やすくなる。水漏れと勘違いされると、お客さまに与える印象も良くない。どちらも解決するのが難しいからこそ、残されていた問題点でした。日程的には、同時並行で解決法を模索しないと間に合わない。気合いを入れて取り掛かりましたが、まさかこれほど大変な日々になるとは… 覚悟はしたものの想像以上でした。


  • 従来の水栓からデザイン一新。シンプルなスクエアフォルムが美しい。

  • エアイン化すると、一粒一粒が大きいので節水しながらしっかり洗える。

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Chapter 2

ミリ以下の穴との格闘で疲れ果てる。

ミリ以下の穴との格闘で疲れ果てる。

まずは「水はね」です。エアインで水粒を大きくすると、洗面ボウルに当たってはじけやすくなる。これを吐水口の穴を工夫することで、どうにかできないか。さまざまなパターンの試作品で検証実験をすることに。すべて穴の直径や配列、ピッチを微妙に変えたので、最終的には100パターン以上ですね。しかも試作品が届くと穴をまず測る。針のような測定器を使って1つ1つ全部ですよ(笑)。そのうえで、狂いを発見したら手作業で修正する。試作品の精度を完璧にするためとはいえ、細かい作業の連続で肩はもうバリバリ。それが終わると洗面ボウルの周囲にシートを貼って吐水させ、どの程度の水はねに抑えられるのか。水しぶきが飛んだシートの重さを測りながら検証と実験の繰り返し。このミリ単位以下の穴との格闘は、ほぼ1カ月続きました。吐水口の外列と内列の水粒を干渉させる工夫などで、水はねはなんとか解決しましたが、気分は相変わらず暗いまま。というのも、もう1つの難問が全然解決していなかったからです。

それが「残水」問題です。水栓のエアイン化が浴室、キッチンと実現しているのに、洗面台だけまだだったのも、この“残水野郎”のせい! 本当に苦しめられました。考え方としては、水の表面張力を利用して残水を止める。でも理屈ではわかってはいても、うまくいかない。吐水口の部品を増やすなど、あらゆる対策を実行してもダメ。もしかして、と疑いの目を向けた、いままでノーマークだったところが「残水」の原因だとようやく判明。僕らの盲点みたいな箇所の問題でした。この時点で期限まで1カ月を切っている。思い出すと、いまでもクラクラしますね(笑)。結局、その問題へ対応し「残水」は解決しましたが、まだ大きな課題が残っている。それが使い勝手の問題でした。


  • 使う側はあまり意識しない「水はね」だが開発者にとっては難問だった。

  • 吐水口の穴も100パターン以上の試作と実験を繰り返した苦労の成果だ。

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Chapter 3

誰もが使いやすい「夢の洗面台」をめざした。

誰もが使いやすい「夢の洗面台」をめざした。

この『サクア』は、もともと優れた機能性が特徴です。現行品でも、横に大きく動く「スウィング水栓」で、広範囲な散水を実現していました。ただし、新『サクア』の水栓はとてもコンパクト。見た目はものすごくスタイリッシュですが、この形だと上下の動きも必要になる。というのも、やはり洗髪洗面化粧台ですからね。ホースが伸びるハンドシャワー式でも、泡が残りがちな部分、特に襟足は両手でしっかり洗いたいじゃないですか。そのためには、吐水の着水ポイントが重要。襟足にちゃんと当たれば、水が頭全体をスムーズに流れる。そのために洗面ボウルも深めに設計されています。ただ、洗髪しやすい吐水の角度は身長で異なる。そこで大々的な洗髪実験を敢行。さまざまな身長のモニターさんが髪を洗っては乾かす、ひたすらその繰り返し。真冬だったので、めちゃくちゃ嫌な実験だったと思いますよ。でも、これで平均的な日本人の身長をカバーできる上下角度が判明。あとはその角度を三段階で保つ、つまりクリック方法をどうするかです。今回の水栓の取り付け部、いわゆるパネル部分はフラットで厚みがない。これもすっきりしたデザインのためですが、後ろ側の構造に余裕がなくて難しい。悩んだ結果、2案つぶしていまの最終案までたどり着きましたが、最後まで冷や冷やしましたね。今回はスタイリッシュなデザインにこだわった開発だったので、この制約の中クリック方法を成立させられれば、格好いいだけじゃなく、誰もが使いやすいecoな水栓になると信じてやり抜きました。


  • フラットなパネルを想定した試作品で実験と試行錯誤を繰り返した。

  • 上下にも動く水栓は今回が初。襟足もしっかり洗える角度を徹底追及した。

「残水」問題で1カ月ほど期限に遅れて関係者の方々にはご迷惑もかけましたが、この2月に無事発売できるのは多くの人の協力のおかげ。最後は総動員状態でしたからね。ほんの若造なのに、こんな大きな仕事をやり遂げられたと、完成したときは本当に感動しました。もともと僕の夢は、日々の暮らしが快適になるような住宅関連の商品を造ること。こんなに早く「夢の洗面台」造りに関われるとは。いまでは感謝の気持ちでいっぱいです。

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編集後記

編集後記


新『サクア』と小薗さんの記念ショット。ショールームの方に伺うと、お客さまの評判も上々だとか。使い勝手も本当に良さそうでした。

本当にお疲れさま。そう声をかけたくなるようなお話でした。洗髪時の着水ポイントも、本来はそこまでこだわらなくてもいいはず。ハンドシャワーを使えば問題ないですもんね。でもあくまでも使い勝手にこだわったのは、小薗さんご自身の体験から。一人暮らしになり、初めて洗髪洗面化粧台を使ったとき、あまりの快適さに感動したそうです。ご実家は古い木造家屋で旧式な洗面ボウルしかなく、友人の家で見た「頭が洗える洗面台」は、長い間憧れの的だったとか。新『サクア』は、小薗さんにとっても夢の洗面台なんですね。「こんなに立派な姿になって…」と、ショールームでの撮影でも感激モード。たしかに高級感あふれる「エアインスウィング水栓」は驚くほどスマート。でもその陰に苦闘の日々がある。「使う人は誰もそうは思わないでしょうけど」と小薗さんは言うけれど、そんなことはない。きっと昔の彼のように感動する人が出てくると思いますよ。

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