Vol.15 地道な研究の日々が生んだ驚きのeco性能! 光触媒塗料の開発・普及に賭けた熱き思い。

Vol.15地道な研究の日々が生んだ驚きのeco性能! 光触媒塗料の開発・普及に賭けた熱き思い。Text:Yayoi Okazaki Photo:Hiromitsu Uchida

TOTOが塗料を開発販売していることをご存じですか? それもただの塗料ではありません。太陽と雨の力でセルフクリーニング、加えて大気をキレイにする効果も! TOTO独自の光触媒技術を応用した、驚くほどecoで優れた機能性塗料なのです。その性能は環境保全に熱心な企業や大気汚染に悩む海外では注目の的。もちろん「キレイを長持ちさせたい」一般家庭の外壁塗料としても、高い評価を得ています。しかし、その開発への道のりは「配合と実験、検証」の繰り返しでした。今回は光触媒塗料「ハイドロテクト カラーコート」開発のストーリーをお届けします。

大久保 康次(おおくぼ・こうじ)

TOTOオキツモコーティングス株式会社
技術開発部 開発課 課長
1999年 TOTO株式会社入社

2000年 塗料・コーティング事業立ち上げに参加。
以来14年間、光触媒塗料開発ひとすじ。


Chapter 1

開発は100種類 試作するところから。

開発は100種類 試作するところから。

ハイドロテクトとは、光触媒を利用したTOTO環境浄化技術のブランド名。僕の仕事はその塗料の設計です。といっても図面はありませんよ。配合を決めることを塗料の世界では設計と呼びますが、それだけでもTOTOの製品としては異色だとわかるでしょ。塗料は「材料の配合」ですべてが決まります。約10種類の材料をどの割合で、どんな順番で混ぜるかで、まったく違うものができる。料理みたいですよね。数えきれないほどパターンがあるので、最高の配合を見つけるのは至難のワザ。100種類つくってどうにか1つアタリがあるくらいです。また塗料は形を持たない製品なので、改良してもその変化は目で見えない。だから性能を証明するのが本当に大変! 新製品開発も、配合を微妙に変えた試作品を小さな板に塗り、60項目以上の実験、検証の繰り返し。それも1万時間水をかけまくったり、太陽光ランプを6000時間以上当て続けて顕微鏡をのぞいたり。はっきり言ってめちゃくちゃ地味な世界です(笑)。やっとの思いで100種類から1つに絞っても、いざ工場で製造してみたら、どんどん勝手に粘り始めたり(笑)。塗料はまるで「生き物」。しかも外壁に塗って初めて完成する「半製品」。独特の難しさがある製品だと思います。


  • 新製品開発は気が遠くなるほど地道な作業の繰り返し。

  • 実験器具が揃う塗料試作室は大学の研究室のような雰囲気。

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Chapter 2

ひらめきで最高の光触媒塗料が完成。

ひらめきで最高の光触媒塗料が完成。


光触媒塗料(右)だと水をかけると汚れが見る見るうちにキレイに。

ただ、僕が入社以来取り組んでいる「ハイドロテクト カラーコート」には、非常に優れた2つの機能がある。それが分解力と親水性。太陽の光で汚れを分解し、雨でその汚れを洗い流す。大がかりな手入れをしなくても、自然の力でセルフクリーニング、キレイな状態が長持ちする。耐久性も全然違います。しかも、大気汚染物質NOx(窒素酸化物)を無害な物質に変化させて大気中から除去する空気浄化効果があり、環境にもやさしい。これらはハイドロテクトだけの特徴で、TOTOが特許を持つ世界に誇れる技術です。だからこの機能を最大限に発揮する製品をどうしても造りたかった。それが2007年に発売した「ECO-EX」です。


塗ったことがわからないため扱い難かった透明コーティングに着色。乾くと透明になるよう改良された「ECO-EX」。

それまでは光触媒を上塗り塗料に混ぜる「混ぜ込み式」。光触媒は粒状なので、混ぜ込むと塗料内にもぐってしまい表面に出づらくなる。だから配合を変えて何年も試行錯誤してみたものの、この方式だとどうしても性能的に物足りない。なので、光触媒を透明なコーティングとして独立させたらどうか。つまり塗り方を変える。仕上げの一工程を増やすことで、優れた機能を存分に発揮できる製品になるのでは?そうひらめいたのです。それからは再び地道な「100種類の試作の世界」が2年間続きましたが(笑)。でもなんとか完成させたら予想通り!施工業者さんや建築家の方々など、惚れこんで使ってくださるファンが大勢できた。お客様の満足度も非常に高い。「どれだけ大気汚染物質が除去できるのか、まずは実験してほしい」という要望にも見事に応え、外壁に採用していただいたトヨタの堤工場のような例も出てきましたし。いま現在でも、自他ともに認める最高品質の光触媒塗料だと思いますよ。

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Chapter 3

発想の転換と現場再現検証で大躍進。

発想の転換と現場再現検証で大躍進。

でも、1つだけ問題があったのです。光触媒機能を持つコーティングは、熟練した職人さんじゃないとなかなかうまく塗れない。僕たちとしては懇切丁寧なマニュアルも作ったし、勉強会も数多く開催していたので、それで大丈夫だと考えた。だけど実験室とは違い、現場の人たちは屋外の過酷な条件下での仕事。天候の急変もあるし、足場を組んで高いところで作業するから、マニュアルなんて読む状況じゃないですよね。そうなるとどんなに良い製品でも「扱いが難しいから」と広く普及しない。ものすごいジレンマでした。そこで気付いたのが、どんなに完璧な塗料でも最終的に完成させるのは職人さん、人なんです。職人さんとの共同作業でようやく完成品となる。そこに「半製品」独特の難しさがある。ならば現場の負担を減らし、塗る人にもやさしい製品を新たに開発しようと決めました。


  • 塗り心地を左右するのは粘り気。微妙な調整が難しかった。

  • 板に塗り一晩乾かしてサンプル完成。これを何百回とくり返す。


光触媒塗料の壁だと時間がたっても白さの差が歴然。

目標は、マニュアル不要のシンプルで簡単施工が可能な光触媒塗料。なので、一般的な塗料と同じ工程で塗れる「混ぜ込み式」に再チャレンジしました。幸いにも、試行錯誤していた10年前に比べると原材料が格段に進化。「混ぜ込み式」でも光触媒効果が十分期待できる目途がたったのです。ならばあとは使い勝手。そこで3人の職人さんに小屋を実際塗ってもらうことに。ウチの光触媒塗料をよく使う人、1回だけ使った人、使ったことのない人に、試作品とは告げず、使い方の説明もなしで「ちょっと塗ってもらえますか?」。施工を僕たちも勉強したいという設定でした(笑)。それで「塗料? 別に普通だね」と言われたら、小さく「よしっ」。「違和感がある」と言われて改良し「おっ、塗りやすくなっているね」で、やはり小さく地味に「よっしゃ!」(笑)。塗り心地は人それぞれの感覚だから、改良を加えていくのはかなり大変でしたよ。でもこの実地検証のおかげで、本当に自信を持って薦められる製品が出来たのです。それがこの2014年5月に発売を開始した「ECO-HG」。価格もお手頃なので、ぜひ指名買いしてもらえたら(笑)。僕たちの地道な実験と検証の日々がむくわれますね。おかげさまで現場でも評判は上々。だから、できるだけ多くの方に光触媒塗料の素晴らしさを知ってもらいたい。そして、ハイドロテクトの輪を世界に広げ、大気汚染に悩む国でも広く普及していけばと、心から願っています。

※ハイドロテクトコートは、2014年に、第12回「環境・設備デザイン賞」設備器具・システムデザイン部門で奨励賞を受賞しました。

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編集後記

編集後記by Yayoi Okazaki


塗りポーズでキメる大久保さん。地味な仕事を明るく語ってくれました。

あのプリウスを造る工場にも採用された「ハイドロテクト カラーコート」。それが自宅の壁にも塗れるとは! 我が家の外壁がそろそろ気になる私にとっては、ちょっとした驚きでした。特に「白い家」にあこがれている方には朗報では? 「どうせ汚くなるから」とあきらめる前にぜひご検討を。それにしても、知らなかったことばかりです。塗料の世界は本当に奥深い。「地味でマニアックな仕事だから」と大久保さん。でも奥様にもネイルのアドバイスだけはできるとか。ネイルもたしかに塗料ですものね。日の当たるところで塗ったらすぐ固まるんだそうです。ちなみに職人さんに塗ってもらった小屋は「みんなで協力して建てた」そう。塗る人への配慮は、本当に大きな気付きだったようです。たしかに環境にも人にも優しい塗料があるのなら、それにこしたことはない。色と価格だけで選んでしまうのは、もったいないですよね。

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