TOTO × マガジンハウス GREEN STORY

いまや女性用トイレの必需品。それがトイレ用擬音装置の「音姫」です。
このユニークな商品は1988年に誕生。当時各地を悩ませた渇水がきっかけに、高まる節水意識に応えて商品化。
以来「音消し」用の無駄な水削減に貢献してきました。
その「音姫」がこの2月に大リニューアル。新製品は節水&消音に加えて、リラックス効果まで期待できそう。
日本女性のデリケートな女心と真正面から向き合ったチーム「音姫」の3人衆が語ります。
(過去の掲載記事をリニューアルして再掲載したコラムです。)

  • 五十嵐 拓真(いがらし たくま)
    レスト・機器商品営業推進部
    機器商品営業グループ

    2007年TOTO株式会社に入社
    大学では医療・福祉経営を専攻。

  • 藤田 将継(ふじた まさつぐ)
    エレクトロニクスセンター
    通信ユニット開発グループ

    2002年TOTO株式会社に入社
    大学では電気工学を専攻。
    新「音姫」では人感センサー開発を担当。

  • 土井 啓之(どい ひろゆき)
    福祉・アクセサリー開発部
    アクセサリー開発グループ

    1991年TOTO株式会社に入社
    大学では機械工学を専攻。
    新「音姫」プロジェクトのキーマン的存在。

節水効果は抜群なのに
気づかない人がいるのが問題だった。五十嵐 拓真

新「音姫」のデザインは、すっきりとシンプル。

トイレでの音を他人に聞かれたくない。
そんな日本女性ならではの恥じらいの文化から生まれたのがTOTOの「音姫」です。
だから男性はその存在すら知らない。
だって男性用トイレには普通設置されていませんからね。
僕だって入社するまで知らなかった(笑)。
でもその節水効果は抜群。
なにせ女性は1回のトイレに平均2.3回の水を流す。
その無駄な水が「音姫」で一挙に減る。
試算によると1000人(内女性400人)規模のオフィスだと年間約386万円もの節約に。
まちなかの飲食店や美容室でも年間約8万円の節約になります。
もちろんCO2削減にもつながって環境にも優しい。
無理なく快適に節水できるからかおかげさまで発売以来ずっと右肩上がりで売れています。
ただ問題なのは「音姫」の存在に気付かずに音消し目的で水を流してしまう人がいること。
なんと約4割の女性が「経験あり」。
また自分で作動させるのが恥ずかしいという声もありました。
なので、人を感知すると自動的にスタートするオートタイプを新たに開発。
また「気になる音を聞かれてしまう」と思われないようによりさまざまな音に配慮した新音源になりました。
なんと発売以来、22年ぶりになる音源の変更です。
しかもコレ、実に心地良い音なんですね。
これからトイレで、あれ、この音なんだかいい感じ。
そう思ったら、それはきっと新しい「音姫」のはずです。

あらゆるパターンを想定した
人感センサー開発に四苦八苦。藤田 将継

トイレブースに籠って実験を続けた藤田さん。

まずは社内の女性への聞き込み調査から人体感知センサーの開発は始まりました。
なにせオートタイプは初の試みなのでどれぐらいの範囲を感知するのがベターなのかをイチから調べるためです。
高さ、つまり身長は140から190cmを想定。
140cmというのは約10歳。
この年頃から女の子も恥じらいを覚えるということで。
また日本女性の心理としてはトイレに入ったら自分がいる気配自体を消したいらしい。
となると、便座に座ったら音が流れるというよりも便ふたの開け閉めや後始末まで考慮しようと。
想像以上に幅広いエリアをカバーすることになりました。
これは難問だなと思いましたね。
というのも、トイレブース特有の問題として便ふた自動開閉などの人体感知用に他の機器からも赤外線が飛び交っており混信による誤作動を避けないといけない。
しかも感知しにくい黒い服の人用に従来の手かざしセンサーも残したい。
いちばん問題だったのは操作系JIS(日本工業規格)配置への対応でセンサーをいままでの膝横に設置できなくなったこと。
そして幅広い感知エリアをカバーするには従来は1つだった赤外線を出す投光LEDはいくつ必要でそれぞれの角度は上下左右に何度傾けることが最適なのか。
どれもデータが全然ありません。
すべて実験で検証するしかない。
それからはトイレブースを模した実験室で投光LEDの角度を少しずつ変えながら試行錯誤。
3カ月間、まさに閉じこもり状態でしたね。
でもこの地道な実験の積み重ねの結果、便座に座った状態用、便座に接近してくる状態用、そして従来の手かざし対応用と3つの投光LEDを配置したセンサーで感知エリアをすべてカバーすることに成功しました。 ただ、これだけ苦労して開発した人感センサーなのでできれば僕も使ってみたい(笑)。
男女問わずトイレにこの「音姫」を設置してもらえれば実際の使い心地などが確認できる。
開発者としては、最後まで面倒を見たいですからね。

トイレブース内の限られた場所に設置される「音姫」のセンサーが人を感知する範囲を細かく設定。

確実な音消しとリラックス効果を
自然の流水音で実現させた。土井 啓之

「音姫」には、ウォシュレット内蔵型もある。

実は、「音姫」の音は以前からの懸案事項でした。
機械的な音で不自然だ。
そんな声をよく聞いていたしモデルチェンジの話も数年前から出ていたんです。
しかも09年に発売された「ケータイ音姫」が非常に好評で。
TOTOが音源提供などで技術協力したタカラトミーアーツ社製の商品ですがニーズの高さを改めて思い知ったわけです。
じゃ、いよいよやろう。
ならばecoな時代にあるべき「音姫」とは?
それをこの際、徹底的に追及しようということになりました。
そこで社内の女性たちとディスカッションを始めたところ出てくる、出てくる。
細かい要望がもう驚くほどあるんですね。
なかでも男性としてびっくりしたのは女性がトイレ内で聞かれたくない音の種類の多さ。
それもドアの外で待つ人だけじゃなく洗面スペースにいる人にも聞かれたくないと。
もちろん高級ホテルや美術館でも違和感のない上質な音への変更が今回の目標でもある。
女性の心理はデリケートだからただ単純に音が流れればいいわけじゃないらしい。
確かに現行のフラッシュバルブ音はトイレの洗浄水量が今より多い時代に作った音源ですからかなり勢いの激しい流水音です(笑)。
それを上質な音に変えていままで消えにくかった音まで消そうというのだからハードルはえらく高い。
これはもう地道にやるしかないと腹をくくりました。
まずは新音源の元になる音探しから。
マスキング効果は似たような音を重ねるのが一番。
なおかつ上質な音ということで検討の末行きついたのが自然の流水音。
ナチュラルでマスキング効果の高い音を探して何か所も採録しに行きましたね。
その上で周波数を上げて高音質にし自然の流水音を忠実に再現したサンプル音を作りました。
デジタルに音を作るのではなく快適に感じるのはやはり本物の音に限ると思いましたから。
それからは聞かれたくない音と音源のサンプル音を同時に流してドア外とちょっと離れた洗面所を想定した場所の2か所で録音。
それをひとつずつ確認するという繰り返し。
特に女性から要望の多かったおならと生理用品の包みを破る音の2つは音が目立たなくなったかどうか、何度も確認しましたね。
おならだと30種から選んだ5パターンで。
生理用品は特にベリベリと激しい音が出る銘柄で。
男2人で本気で取り組みました。
その結果、いちばん聞かれたくない音すなわち大便、小便、おならに衣擦れと生理用品の音。
この5つに関しては流水音でうまくまぎれさせることが可能に。
しかも新しい流水音は女性モニターに大変好評です。
22年ぶりのミッションでしたがグリーン商品にふさわしい新音源ができました。
この新「音姫」で少しでもリラックスしてもらえればマイク片手に作業服姿で走り回ったかいがありますね(笑)。

コスメグッズのようなデザインの「ケータイ音姫」(タカラトミーアーツ社製)。