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原 広司展  ディスクリート・シティ
Hiroshi Hara   Discrete City
2004 12.02 - 2005 2.19
 
原 広司展  ディスクリート・シティ :  Discrete City  
展覧会レポート
交通のための窓を開け
レポーター:太田浩史
 
位相空間の数学の論理と、モンテビデオでの実験住宅の実践。その2つを両輪とする原広司のギャラリー・間での12年ぶりの展覧会である。前回の「500Mx500Mx500M(1992)」から「一人都市(1997)」を経由し、「離散性」という言葉へと収斂する思考が、鮮やかに立ち現れた建築のうちに、その強度と実効性を示している。それに伴い、自律と交通を同時に呼びかける原の声が、より明るく、より透明に、われわれの実践の根拠を問うてくる。「離散性」という主題は、まずは現代建築の特質を示すものとして一般化され、やがて「新たなヒューマニズム」を導出するものとして展開されているから、展覧会と、それに併せて出版された書籍『DISCRETE CITY』は、われわれ一人ひとりの実践を共振させようとする、挑発的なものとして受け止められなければならない。分散しつつ、ところどころにブリッジと屋根が架けられた住居群のポスターは、「インターネットのような社会」という原の言葉が説明するように、点在し、時に交通を図るわれわれ自身でもある。それが直観されるとすれば、「離散性」の提示という原の最初の目的はまずは達成されていると私は思う。後は、わわれれがその直観をいかに展開するかである。

私自身、12年前の「500Mx500Mx500M」以降、「離散性」の考察の現場に長く立ち会ってきた一人である。必ず深夜へと差し掛かる原広司との対話のなかで、南米の居住環境や未来住居の姿を論じることは、遠く離れたどこかの、または昔か未来のいつかの、同じように深夜に考えをめぐらす誰かとの交信のように感じたことを覚えている。その感覚について、例えば原はギリシャ神話、ダンテの『神曲』、そしてエリオットの『荒地』に共通して登場するテイレシアスという予言者を引き、離れた場所と時間を共振させる文学的作業の重みとして教えてくれたのであるが、そのように原との対話は、つねに遠く離れた誰かへの共感についてのものであった。だから「離散性」という言葉に私が証言として解説を加えるならば、それは「離れている」という状態の描写ではなく、その後に生じる交通論の予兆として発想されているのではないか、ということである。「近傍」についての考察にも登場するが、近距離の社会において流通する論理だけはなく、例えばインターネットによってこのように私の文章に到達する貴方にも通用する論理をもって、建築は構想されなければならない。だからこそ、原は自らの交通論の飛距離を測定するために、日本から最も遠く離れたウルグアイで、最も違う居住環境にある不法占拠者のために、自身の労働力という最も通常とは異なった建設法をもって、建築の実践を試みたのである。
第一会場エントランスから。左にあるテーブルが「エロス」(1971)、シャンデリアは「V+V」(1967)
第1展示室パノラマ画像

第一会場エントランスから。左にあるテーブルが「エロス」(1971)、シャンデリアは「V+V」(1967)
第2展示室パノラマ画像
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PopulouSCAPE
* PopulouSCAPE
制作/太田浩史+伊藤香織+岡部友彦
交通をいかに建築の論理のなかに定位するか。私は原広司の作業をそのような問いとして受け止め、自分の建築をもって応答していきたいと考えている。ひとつの応答法は、居住単位の周囲に展開される公共空間のありようを巡って、もうひとつは類似性によって支えられている「都市」を巡る作業の中に見出せるのではないだろうか。例えば原との対話がきっかけとなって作成することになったムービー「PopulouSCAPE」*は、アーバニゼーションがわれわれに突きつける「近傍」に拠らない論理基盤と、出来事の共時性を見出すための私なりの仮説的作業である。それは内なる世界風景の描写なのだが、内なる風景の一般化を続ける以外に、「DISCRETE CITY」に向けて交通のための窓を開く方法はないのだろうと私は考えている。場所と時間を超えることのできる言葉を、いつか原広司にも届けられればと思っている。
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