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vol.46 インタビュー企画 「見守り支援システム」でトイレをもっと安全に

ケアコム東京オフィス内シミュレーション施設「StudioC」にて

vol.46 インタビュー企画インタビュー企画 「見守り支援システム」でトイレをもっと安全に

ケアコム東京オフィス内シミュレーション施設「StudioC」にて

TOTO UD推進グループ 企画主査 賀来尚孝氏×ケアコム 営業企画グループ 担当マネージャー 安藤智昭氏

2017年1月、TOTOと医療・福祉施設向け情報・通信システムメーカーのケアコムは、
長年の共同研究を続けてきた“トイレ内の見守り支援システム”を発表。
ITの最新技術を使い、トイレと病院内のナースコールシステムを接続させた画期的な仕組みです。
このシステムを取り入れることで、
患者さんや看護師さんのトイレに関する課題がどのように解決されるのでしょうか。
TOTOとケアコム双方のプロジェクト・リーダーに話を伺いました。

入院患者のトイレでの転倒リスクを軽減

入院患者のトイレでの転倒リスクを軽減

賀来尚孝さん(以下、賀来)
安藤智昭さん(以下、安藤)

―――TOTOとケアコムは共同で、入院患者のトイレでの転倒を予防するシステムを開発したそうですね。

賀来:
はい。トイレ内の見守り支援システムと呼んでいます。簡単に説明すると、ケアコムさんが担当した「トイレ離座検知システム」と、TOTOの「トイレ離座センサー専用ウォシュレット」「前方ボード」の3つを組み合わせたもので、病院のトイレ内で、患者さんひとりでも安全に用を足すことができます。前方ボードで患者さんが安全に立ち上がっている間にセンサーで、看護師さんが駆けつけるという仕組みです。前方ボードは便座の立ち座りなどのときに、安全に体を支える設備です。
※前方ボードの詳細はこちら
安藤:
トイレ離座検知システムには、便座から立ち上がったときと、前方ボードが動かされたときに反応するセンサーを使っています。患者さんがトイレから離れようとすると、ナースステーションのナースコール親機や看護師さんの持つモバイル端末に通知を送る仕組みになっています。看護師さんが患者さんのそばを離れていても、通知を受けてすぐに駆けつければ、転倒のリスクが減らせるわけです。私たちケアコムは、自社製品によるものだけでなく、電話・医療機器・ベッドなどさまざまなメーカーとの協業により、患者さんの安全・安心のためのソリューションを実現してきました。その考え方や創業61年の技術を生かして、この見守り支援システムの開発に取り組みました。
賀来尚孝さん

TOTO UD推進グループ
企画主査
賀来尚孝(かく なおたか)
さん
1991年にTOTO入社。総合研究所でベッドサイド水洗トイレの研究企画業務に従事。2004年から「癒しのトイレ研究会」主任研究員を兼任。全国の病院の水まわりをリサーチし、病院の安心安全に貢献できる企画開発を行ってきた。

安藤智昭さん

ケアコム 営業企画グループ
担当マネージャー
安藤智昭(あんどう ともあき)
さん
1996年にケアコム入社。製品企画と販売促進に従事。主に他社とのアライアンスによる製品の企画を担当している。これまで離床センサーや医療機器などの様々なメーカーと医療安全に貢献する製品企画を行ってきた。

―――見守り支援システムは、なぜ必要なのでしょうか。

賀来:
入院病棟で最も問題となるのは感染リスクですが、その次が転倒リスクです。特に、トイレでの転倒は近年増加傾向にあります。入院病棟には、高齢だったり認知症などを患っていたりして、ひとりでは思うように動けない患者さんもいます。そういう場合は、もちろんトイレまで看護師さんが付き添ってくれます。 でも、患者さんがトイレで用を足す時間が長くなったり、そばに他人にいてほしくないなど、看護師さんがずっと付き添っていられないケースもあります。そのため、廊下で待っていたり、他の病室での作業をしているときに患者さんが立ち上がろうとするのを察知できるシステムが必要なんです。付き添いが必要な患者さんには、排泄後にナースコールで知らせるようにお願いするのですが、患者さんが看護師さんに気を使ったり、ボタンを押し忘れたりして、自分で立とうとするケースがあるんです。そういう場面にも、このシステムは有効だと思います。

病院の声に裏付けられたシステム

病院の声に裏付けられたシステム

―――共同開発を始めたきっかけは?

賀来:
2007年に、武蔵野赤十字病院の協力を得て、トイレ内の見守り支援システムの1号機を開発しました。そのときにもすでに、ケアコムさんと共同研究をしていたんですよ。
安藤:
当社では2013年から、開発担当のエンジニアが営業担当者と一緒に病院を回り、困りごとなどをヒアリングするようにしていたんです。その中で改めてトイレ内での転倒対策が重要だという話が出てきて…。その流れで、便座から立ち上がろうとしたときも感知できるといいね、という意見を伺いました。そこで、2007年に共同研究していたことや、トイレのエキスパートでもあることからTOTOさんに声をかけました。
賀来:
TOTOでもほぼ同じころ、同様のシステムの再開発に取り組んでいました。独自でセンサーの開発も試みたのですが、病院の通信に関わる部分は、TOTO単独では解決することができず困っていたところでした。ケアコムさんから声をかけてもらったのは、とてもいいタイミングでした(笑)。
DōZO

「トイレ離座センサー専用ウォシュレット」と「トイレ離座検知システム」。「前方ボード(スイングタイプ)」。他にはね上げタイプもある

人が座った様子

前方ボードの手前に付いているのはトイレ離座センサー。患者さんが前方ボードを動かすと感知し、ナースコール親機や看護師さんの携帯するモバイル端末に通知する

インタビューの様子

「トイレ離座センサー専用ウォシュレット」は便座に圧力センサーを内蔵し、座ったことを感知。患者さんが立ち上がった後、5秒後にナースコール親機や看護師さんが携帯するモバイル端末に通知

センサー切り替えボタン

不要なセンサーの通知を減らすため、見守りが必要な患者さんの離座だけセンサーが通知するよう、看護師さんが設定できる

モバイル端末の表示画面

看護師さんの持つモバイル端末への表示画面。どこのトイレから通知があったのかわかりやすいインターフェース。応答ボタンで通知音が止まる

―――振り返ってみて、一番苦労したことは何でしょうか?

賀来:
実は、開発前のリサーチです。当時、トイレでの課題などについて調査に協力してくださる病院は限られていましたから。それでも、2007年の開発前までに17の病院で44人の看護師の方に協力を得ることができました。 そのとき、看護師さんが介助をする上でどのような点で苦労しているのかについても調査しました。中でも多かったのが、患者さんが用を足す際にトイレ内の様子を見ることができないという声です。お尻を拭く際に体勢が不安定になることや、倒れてしまう危険性があることを知り、このシステムの必要性を強く感じました。
安藤:
私たちは、どうすれば、「前方ボード」に関わる人の動きだけをセンサーで感知できるのか悩みました。トイレ内は狭いものの、トイレットペーパーホルダーや手すりなど、前方ボード以外にもたくさんのものが配置されています。それらを使う人のさまざまな動きを避け、前方ボードの動きだけにきちんと反応するように、試行錯誤を重ねました。

―――その一方で、うれしかったことは?

賀来:
当初の実証実験に協力いただいた武蔵野赤十字病院の看護師さんたちから「素晴らしい」と評価され、努力が報われた気がしました。苦労しても、商品化できて本当に良かった。
安藤:
エンジニアが病院に足を運んで問題意識をもち、看護師さんと一緒になって課題解決に取り組んだものが商品化されたことは感無量です。このような実証実験を行うことは今までもあったのですが、商品化までに至ることは稀です。協力してくださった病院内で活用されるだけのケースも少なくありません。この商品がたくさんの病院で使ってもらえるようになったことはとても嬉しく思います。

人間の尊厳を最優先にケアを行う

人間の尊厳を最優先にケアを行う

―――開発に取り組む中で、医療や福祉について改めて気づいたことはありますか?

賀来:
開発を通じて、やはり排泄は人間にとって最大の尊厳だということを改めて感じました。本来、トイレ内は最大限にプライバシーが守られた空間です。介助が必要だとしても、排泄中の様子を誰かに見られたくない気持ちは健康なときと全く変わりないのですね。入院患者さんの中には、気持ちが落ち込んでいる方もたくさんいます。ですが、大部屋に入院していると他の患者さんと一緒で、落ち込んだ気持ちを表に出す機会はそうありません。トイレでひとりになって泣いている方もいるでしょう。唯一の感情を出せる場所としても、より多くの方がひとりでトイレを安全に使えるようになるといいと思いました。

―――最後に今後の目標を教えてください。

賀来:
IT化を進めることで、第3者が観察したりせずに、トイレの使われ方などの情報が蓄積できるようになります。そこから、新たなトイレの使われ方や、患者さんや看護師さんの心身の負担を減らす方法も導き出していきたいと思います。
安藤:
TOTOさんと一緒に、トイレ以外の水まわりでも療養環境の改善につながる仕事をしていきたいですね。病院には感染リスクがあります。その対策に一緒に取り組んで、患者さんが安心して入院できる施設や病室づくりに貢献したいと思っています。
ディスプレイ

患者さんが一人で立ってしまうとナースコールが鳴るように通知する。またナースステーションに据え置かれているナースコール親機のディスプレイにも通知が表示できる

フロアマップの通知

ナースステーションのディスプレイに表示される通知では、フロアマップでどこのトイレから通知がきたのか確認できる

インタビューの様子

「あくまでも看護師さんがサポートをすることが最優先。その上で、私たちが共同研究したこのシステムが転倒リスクのさらなる軽減の一助になれば嬉しいです」(賀来氏)

編集後記どんな年齢でも、どんな体調でもひとりでトイレに入りたいという気持ちは変わらないでしょう。「トイレ内の見守り支援システム」は患者さんのプライバシーを配慮しつつ、看護師さんの心身の負担も減らす画期的な商品です。今後、こうしたモノとインターネットの組み合わせ(IoT)は、病院の患者さんはもちろん、近所や遠隔地にいる身内の見守りにもますます広がっていきそうですね。サポートされる側もする側も心地よく日々を過ごせる工夫や技術が、この高齢化社会に求められています。日経デザインラボ 介川 亜紀

写真/大木大輔 取材・文/新井作文店 構成/介川亜紀 監修/日経デザインラボ 2017年4月17日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。


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次回予告
vol.47は、LGBT(性的マイノリティー)に向けたTOTOのさまざまな取り組みを紹介します。
2017年6月下旬公開予定。

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