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UD style TOTOのユニバーサルデザイン

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ホッとワクワク+(プラス)

vol.22 インタビュー企画 生活とデザインの関わりを再考する2

TOTO汐留ビルディング オフィスにて

vol.22 インタビュー企画生活とデザインの関わりを再考する2

TOTO汐留ビルディング オフィスにて

日経デザイン編集長 丸尾弘志氏×ヒロタデザインスタジオ代表 廣田尚子氏

「生活とデザインの関わりを再考する」その2では、
今後のデザインの役割について、広くお話を伺いました。
進行する少子高齢化を前提に、
ユニバーサルデザインに求められるものとは何でしょうか?
日本のビジネスが国際競争力を持つために、
デザインはどのようなサポートができるのでしょうか?
デザインの未来を感じさせるインタビューをお楽しみください。

身体に合わせ変えられるのが今後のユニバーサルデザイン

身体に合わせ変えられるのが今後のユニバーサルデザイン

モノの快適は機能と”空気感”が生み出す

日経デザイン編集長 丸尾弘志氏(以下、丸尾)
プロダクトデザイナー 廣田尚子氏(以下、廣田)

丸尾:
ユニバーサルデザイン(以下、UD)と言っても、さまざまな形が見られます。どんなジャンルのデザインにも、また、どの年代向けの商品にも存在していますね。多くのジャンルのデザインを手掛けてきた廣田さんからご覧になって、今後求められるUDとはどういったものでしょうか。
廣田:
ユーザーメリットがあれば、その工夫をUDと呼んでいいと思います。ただし、やはり、UDには単によい機能があればいいわけではなく、心の満足が求められますね。
丸尾:
そうですね。
廣田:
近年、少子高齢化が深刻な問題になっています。混同されがちですが、少子化と、高齢化はまったく別なもの。先進国であれば、必ず高齢化社会が訪れますが、少子化は適切に対策すれば避けられるんですね。
丸尾:
確かに。
廣田:
高齢化が避けられないなら、商品も住宅も、ユーザーの年齢に限らずUDを意識してデザインしたほうがいいでしょう。どこまで使い勝手をUDでカバーするかは、モノの性質やユーザーの年齢などによって違います。ですから、モノは基本的に高齢になってからも使えるように考えておくといいですね。10年後などに身体の調子が悪くなっても、部分を変化させて使い続けられるように。そのとき、ユーザーの愛着の源である空気感は維持できる工夫もほしい。
丸尾:
現在、TOTOでも、アクティブシニアに向け、10年後、15年後を見越した住まいのリモデルを提案しています。商品の使い勝手のポイントが、一部のユーザーを対象にしたバリアフリーからUDへ移り変わってきたんですね。
廣田:
長らく、心地よく使い続けられる商品づくりですね。
丸尾:
これから、「ロングライフデザイン」の定義も変わりそうですね。今後はUDと同様に、ライフステージが変わっても使い続けられることが求められますね。

丸尾氏ポートレート丸尾弘志氏日経デザイン新編集長。1998年国際基督教大学卒。同年日経BP社に入社、日経システムプロバイダ記者。2001年に日経デザインに配属後、パッケージデザインのリサーチやブランディング、知的財産、新素材開発にまつわる取材を行う。2014年現職。主な著書に「パッケージデザインの教科書」「売れるデザインの新鉄則30」など
日経デザイン

インタビューの様子

「こと」のデザインがビジネスもサポートする

「こと」のデザインがビジネスもサポートする

丸尾:
廣田さんご自身は、どのくらい先を見越してデザインしていますか?
廣田:
これまで、時代より少し先、10年後程を意識して実験的にデザインに取り組んできました。
丸尾:
たとえば、どういったことでしょう?
廣田:
1996年に以前の会社から独立して間もなく、独自のブランドを立ち上げました。その際、モノのデザインだけでなく、ブランディングしながら商品企画、在庫も抱えて、流通までをやる。一通り商品の流れを見通してみることで、各段階での情報がフィードバックできるんですね。バブル経済が崩壊した頃に、デザイナーはそこまでやったほうがいいと感じたからです。今となっては、それは普通ですけどね。
丸尾:
最近はどうでしょう?
廣田:
今、取り組んでいるのは「こと」のデザインです。この考え方は、デザイナーにとってとても重要だと思います。私たちデザイナーは、ある依頼を受けると、レンダリング(スケッチ)して、クライアントにプレゼンテーションし、合意を得たら設計に取り掛かります。そのとき、背景のこまごまとした用件を常に念頭に置きながら作業を進める。でも、そのようにある限られた要望をそのまま物理的に形にするだけでは、限界があるんですね。それよりも、その問題点をもっと大きな「こと」としてとらえ直してから、形に落とし込んでいくほうが本質的な解決になると思うんです。たとえば、機能的なUDのみでなく、もっと全体的な視野を持って誰でもが快適に使える方法とは何かを探求する。そこでは、使う人の“心”も大切にする。
丸尾:
モノを成立させている、こと=仕組みのデザインといったところでしょうか。
廣田:
そうですね。私は、この仕組みのデザインをすでに大学で学生に教えているんですよ。
丸尾:
学生に意味を伝えるのは、なかなか難しそうですね。どのような授業ですか?
廣田:
簡単に言うと、WINWINの新しい関係を仕組みとしてつくります。人の心が豊かになるストーリーを組み立てて、そこに必要とされるモノをデザインしよう、といった内容です。デザインが社会に貢献できる可能性を追求します。
丸尾:
これまで、デザインの研究の中には見られなかったように思います。
廣田:
これは、本来は社会システム工学の授業、システムデザインだと思います。これからは、デザインとしてのアプローチもあるべきだと思い、授業を始めました。デザインには、人の感情や行動に寄り添って何かをつくり上げると言う長所があります。デザインの立場から、こと=仕組みをつくっていくと、人にフィットするものに近づくのではないかと。
丸尾:
廣田さんはデザインの仕事をしているとき、やはりモノの背景にある大きな仕組みを分析したり、デザインに反映したりしているのですか?
廣田:
常にそういうことを考えながら、プレゼンテーションはしていますね。仕組みのデザインは、かなり広い範囲に関わるんですよ。家具であれば、森林の問題から、山の伐採、売り方や関わる人の構成にも影響します。
丸尾:
デザイナー以外の人も、デザインの考えを持って仕組みづくりに取り組んでほしいと。
廣田:
デザイナー以外の人たちは、デザイン的な思考を仕組みの中に盛り込んでいく。その一方でデザイン側の人たちは、モノのデザインに留まらず、仕組みを考えるようにする。そうすると、クライアントとデザイナーが共感する部分も増えるんですね。モノづくりがポジティブな方向に向かいやすくなるのでは。
丸尾:
そうですね。
廣田:
仕組みを共有できていてビジネスの方向性、つまり、モノづくりのストーリーが揺らがなければ、プロジェクトの進行中に些末な変更があっても問題にならない。クライアントとデザイナーがストーリーをきちんと共有していれば、お互いに迷わずに済むでしょう。たとえば、部材が変わっても、デザイナーは新たな提案がスムーズにできます。
丸尾:
なぜ、今後、「こと」のデザインが重要になるとお考えになったのですか?
廣田:
国際的に見ると、日本の企業は今、技術で勝ってビジネスで負けるという状況にあります。本来デザインは、モノや人をつないで新しい関係をつくるのが得意。ビジネスで勝つためには、仕組みづくりにもモノづくりにもデザインが役に立つのではないかと考えたんですよ。
丸尾:
デザインは生活をはじめビジネススキームまで、至るところで役に立つということを再認識できました。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

廣田氏ポートレート廣田尚子 氏ヒロタデザインスタジオ代表。女子美術大学教授、多摩美術大学客員教授、グッドデザイン賞審査委員、東京ビジネスデザインアワード審査委員長。1990年東京芸術大学卒業後、GKプランニング&デザインを経て1997年にヒロタデザインスタジオ設立。1998年、オリジナルブランドを発表。ブランドの立ち上げから企画、デザイン、製造、プロモーション、販売など製品ビジネスに関わるソルーションを総合的にディレクションする
ヒロタデザインスタジオ

「naoca」の旅行用スリッパ廣田氏が独立後に立ち上げたオリジナルブランド「naoca」の旅行用スリッパ、「One Piece Slippers」。1枚の生地を裁断して二つ折りにし、先端を縫製しただけのシンプルなつくり。素材はフェルト、牛革などがある(写真:ヒロタデザインスタジオ)

インタビューの様子2

デザインの概念図廣田氏が「こと」のデザインの授業の際に使用する図。ことのデザインの概念を示している

デザインする際の考え方の順序同じく廣田氏が「こと」のデザインの授業の際に使用する図。デザインする際の考え方の順序を記している。バリューチェーンとは価値連鎖を意味

インタビューの様子3

写真/鈴木愛子(特記以外) 構成・文/介川亜紀 監修/日経デザイン 2014年6月20日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。


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次回予告
次回からはTOTOのUD商品と、それぞれのデザイン企画・開発のストーリーにスポットを当てます。
vol.23は、システムバス「サザナ Fタイプ」です。
2014年7月下旬公開予定。