ホッとワクワク+(プラス)

ユニバーサルデザインの「今」がわかるコラムホッとワクワク+(プラス)

TOTOx日経デザインラボのコラムです。

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vol.19Vol.19
新しい形の二世帯住宅 つかず離れず暮らす住まい・ 交流編 東京都 I&F邸新しい形の二世帯住宅つかず離れず暮らす住まい・ 交流編東京都 I&F邸

住居1階 外観

心身ともに心地よく暮らせる工夫=ユニバーサルデザインとするなら、親世帯と子世帯が互いに支え合って暮らせる二世帯住宅もそのうちのひとつと考えていいのではないでしょうか。そこで、vol.19とvol.20では、親世帯のIさん家族と長女世帯のFさん家族が暮らす二世帯住宅をご紹介します。この住まいは、家族全員がそれぞれを見守りながら、先々まで心地よく暮らしていけるアイデアに満ちています。
7年前、Fさん家族は、単世帯で戸建てを新築する計画を立てていました。しかし、当時、Fさんはフルタイムの共働きだったため、2人の子育てをサポートしてもらおうと、両親に二世帯住宅を提案したといいます。Fさんは同時に、これから高齢期を迎える両親を見守っていく心づもりがありました。「そうした要件を配慮したうえで、双方の世帯が適度な距離を保ちつつも、家族全員が互いの気配を常に感じられる住まいを目指しました」と、設計を担当したスタジオCY(サイ)の建築家、堀内雪さんは話します。
vol.19では、両世帯がプライバシーを守りながら、祖父母から孫までの全員がさりげなく交流できるような工夫を取り上げました。

図面

DATA
構造/在来木造
築年数/約7年
敷地面積/185m²
建築面積/103m²
床面積/1階95m²、2階93m²、3階64m²
合計 252m²
設計/堀内雪(スタジオCY)
施工/高政工務店

親世帯のリビングダイニングのデッキ

窓から見える階段上/2階にある親世帯のリビングダイニングのデッキから、中庭を眺める。窓越しに階段と3階の子世帯のリビングダイニング(写真中ほど)が確認できる
下/中庭に面した大きな窓を通じ、階段は1階から3階まで見える

住戸はL字型に。大型の窓から、各部屋の家族がちらりと見える

住戸はL字型に。大型の窓から、各部屋の家族がちらりと見える

住まいは3階建て。それぞれが独立して暮らせるように、1階は主に親世帯、2階は両方の世帯、3階は子世帯の住居として分けました。各世帯には、専用のリビングダイニング、キッチン、浴室を設けましたが、お互いの姿がまったく見えない、というわけではありません。
建物は中庭を囲むようなL字型にして、中庭に面したリビングダイニングや階段には大きな窓を設けています。そのため、お母様が料理などの家事にいそしむ様子や、子ども(孫)が外出から戻って階段を上がっていく様子などがそこここの窓から自然に目に入ってくるのです。プライベートの尊重と見守りを、無理なく続けられる住まいですね。

2階の階段まわり

中庭に面した窓上/2階の階段まわり。右が階段、正面が親世帯のリビングダイニングへの入口
下/階段の右側が中庭に面した窓。光が上下階にまで広がる

共用の階段を通じて両世帯が互いの気配をキャッチ

共用の階段を通じて両世帯が互いの気配をキャッチ

1階から3階までまっすぐに貫く階段も、ほどよい距離感のポイント。親世帯が2階、子世帯が3階と分離していますが、この階段があるおかげで、それぞれの階にいても互いの世帯の気配を感じられます。一方、それぞれのリビングダイニングは階段近くに配置しましたが、直結はさせていません。入口の引き戸を閉め切れば、世帯のプライバシーを優先できます。
この階段には光や風を取り込み、快適な室内環境を生み出す役目も。1階から3階まで中庭沿いに設けた大きな窓から、階段を通じて住まい全体に光と風が行き渡ります。

子ども部屋

親世帯のリビングダイニング上/子ども部屋奥から正面の階段方向を見る。階段の左方向に親世帯のリビングダイニングが位置する
下/親世帯のリビングダイニングから、入り口付近を見る。ここからも入り口を通じて子ども部屋の様子を確認可能

両世帯ともに目が届くよう2階の階段沿いに子ども部屋

両世帯ともに目が届くよう2階の階段沿いに子ども部屋

Fさんが共働きで帰宅が遅かったことから、子ども(孫)の幼稚園の送り迎えや夕食、入浴、寝かしつけなどの世話は、親世帯が担っています。子ども部屋の場所は、親世帯のリビングダイニングがある2階の階段沿い。そのためご両親は面倒を見やすく、また、子どもたちは親世帯の住まいと子ども部屋の間も気軽に行き来できます。一方、Fさん夫婦が帰宅した際には、3階に上がる途中で子ども部屋や親世帯のリビングダイニングにいる子どもたちに気軽に声を掛けることができます。
子ども部屋の位置を工夫することで、各世帯のプライバシーを守りながら、大人が代わる代わる子供たちを見守れる環境と習慣が生まれています。

親世帯、子世帯ともに20%弱が同居を意向

高齢期の親世帯のうち「子と同居する(二世帯住宅を含む)」意向がある世帯が17.1%、「同一の敷地内・住棟内」「徒歩5分程度」「片道15分未満」などの近居を希望する人は計18.9%を占めた。一方、高齢の親との住まい方については、子世帯のうち18.0%が「親世帯と同居する(二世帯住宅を含む)」、19.3%が近居の意向があった。同居を希望しているのは、親世帯、子世帯ともに同程度の20%弱である。

「親世帯の住まい方の意向」「子世帯の住まい方の意向」

お話をうかがった会社
スタジオCY(サイ)

建築家、堀内雪さんが主宰する一級建築士事務所。筑波大学基礎工学類卒業後、毛綱毅曠建築事務所設計室長を経て独立。毎日の生活が楽しくなる空間づくりのお手伝いをしたい、という思いを基本に、住宅の設計、ライフスタイルのデザインを手がける。シンプルでナチュラル、開放的でありつつ、くつろげる居心地のよい住空間を生み出しているスタジオCY(サイ)


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写真/澤田聖司 構成・文/介川亜紀 監修/日経デザイン 2014年2月21日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。

次回予告
vol.20は、新しい形の二世帯住宅 つかず離れず暮らす住まい・ 各世帯編をご紹介します。
2014年3月20日公開予定。

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