ホッとワクワク+(プラス)

ユニバーサルデザインの「今」がわかるコラムホッとワクワク+(プラス)

TOTOx日経デザインラボのコラムです。

ホッとワクワク+(プラス)

vol.17Vol.17
終の棲家へのリモデル 適度な距離感を大切にする住まい・ ゾーニング編 東京都 S邸終の棲家へのリモデル適度な距離感を大切にする住まい・ ゾーニング編東京都 S邸

リビング

vol.17とvol.18では、70代の国際結婚のご夫婦が、お互いの生活スタイルや趣味を大切にしながら、終の棲家として快適・安全に暮らし続けられるようリノベーションした住まいをご紹介します。
Sさんご夫婦は2人暮らし。数年前、以前お住まいだったマンションの建て替えを機に、親戚が多く住んでいるエリアに引っ越すことを決めました。気軽に受診できる病院が多く、空港に行きやすいなどSさんご夫婦には条件の揃ったエリアです。理想の間取りへの変更が可能なほか住宅の管理やメンテナンスを重視して、そのエリア内にあるマンション住戸を選びました。

Sさん夫婦がリノベーションに望んだのは、まず、パブリックとプライベートを明確に分離すること。来客が多いため、夫婦の寝室や浴室などはゲストの目にまったく触れない間取りを計画しています。また、夫婦の生活スタイルやスケジュールが異なるので、それぞれ専用の寝室や収納スペース、浴室などを設け、互いに気兼ねなく暮らせるようにしました。「こういった点を守りながら、夫婦が互いの気配を常に感じ取れるなど、より快適・安全に暮らせる工夫をさりげなく設計に盛り込んでいます」と、物件購入アドバイスからリノベーションの設計まで担当したカガミ建築計画の各務謙司さんは話します。
vol.17では、夫婦ともにパブリック、プライベートの双方を存分に、そして安心して楽しめるさまざまな間取りの工夫をご紹介します。

Before

Before写真リビングダイニングが仕切られ、長い廊下に沿って部屋が並ぶ。家族のコミュニケーションが取りにくい間取り

Before→After

Before図面→After図面

DATA
構造/RC造 13階建7階部分
築年数(リモデル着工時)/約7年
延床面積/187m²
リモデル面積/187m²
リモデル工期/2009年5月~2009年10月
設計/カガミ建築計画 各務謙司
施工/青

リビングダイニングまでのパブリックゾーン

トイレ上/リビングとダイニングの間の引き戸を取り払い1部屋に。右の突き出た部分がトイレに当たる
左/玄関ホールそばのトイレ。ドアを開けたとき目に触れないように便器の位置を調整。手すりも設けた

パブリックとプライベートを明確に分けてゾーニング

パブリックとプライベートを明確に分けてゾーニング

友人、親戚を含め、ゲストの多いSさん宅。そのため、ゲストを迎える玄関から右側にあるリビングダイニングまでをパブリック・ゾーン、玄関の左側にご夫婦それぞれの個室や水まわりをまとめプライベート・ゾーンとして明確に分けました。ゲスト用のトイレを玄関ホール付近に設置しているほか、玄関とプライベート・ゾーンの間に設けた引き戸を閉め切れるので、プライバシーを気にせずおもてなしできます。明確なゾーニングは、パブリックとプライベートの双方を、タイミングを問わず楽しむための代表的な工夫といえるでしょう。

寝室 水まわり 寝室をつなぐ出入口 シャワールーム

上/妻用の寝室。椅子なども置きプライベート・リビングの風情。左奥には専用の浴室
下左/ベッドヘッドの右側に2つの寝室をつなぐ出入り口。ベッドは互いに見えない位置にある
下右/夫用のシャワールームは、ベンチに座って入浴も。以前の浴室を縮小し納戸などを拡張

それぞれに専用の寝室と浴室。ひとりの時間も存分に堪能

それぞれに専用の寝室と浴室。ひとりの時間も存分に堪能

自由にひとりの時間を過ごせるように、夫婦それぞれに専用の寝室兼個室と浴室を設けました。寝室では、のんびりと読書などの趣味も楽しんでいます。以前の住まいでは2人の寝室は完全に壁で仕切られた別室でしたが、今の住まいでは寝室の間に引き戸を設けることに。夫婦いずれかが体調が優れないときには引き戸を開けたままにし、何か変化を感じたらすぐに声掛けできるようになりました。浴室を別にしたのは、入浴スタイルの違いも大きな理由。夫用は米国流にシャワーのみ、妻用はゆったりと湯につかれる浴槽が主役です。

セミオープンな書斎

玄関ホールから上/書斎内と廊下沿いにはふたりの蔵書がズラリ。これらの本を話題に話が弾むことも
左/玄関ホールからプライベート・ゾーン方向を見る。廊下に沿って書斎、寝室、浴室などが並ぶ

廊下沿いの書斎はセミオープン 互いの気配を感じる安心感

廊下沿いの書斎はセミオープン 互いの気配を感じる安心感

家にいるときは、プライベートを守りつつも、家族の気配を感じられるとリラックスして過ごせるもの。そこで、住まいの真ん中を通る廊下沿いの部屋は、セミオープンの書斎に変更。夫が書斎にいるとき、妻がほかのどの部屋にいても、それとなく互いの存在を感じることができます。2か所の出入り口は普段は開け放しておきますが、仕事などに使用するときは引き戸を閉じることも可能。このように適度に触れ合い、日々安心して暮らし続けられる工夫も、高齢者リモデルに必要なデザインといえますね。

住み替えの際は高齢者向けの設計を重視

資金面を考慮せずに新しい住宅に住み替え(引っ越し)をする場合の、住宅や住環境で重視する点は、「手すりが取り付けてあったり、床の段差が取り除かれているなど、高齢者向けに設計されていること」が39.1%と最も高く、次いで、「駅や商店街に近く、移動や買い物に便利であること」が35.4%、「医療や介護サービスなどが受けやすいこと」が30.3%になっている。前回調査(平成17 年)と比較すると、「駅や商店街に近く、移動や買い物に便利であること」の増加傾向が目立つ

住宅や住環境に関する優先度 グラフ

お話をうかがった会社
カガミ建築計画/カガミ・デザインリフォーム

建築家、各務謙司さんが主宰する設計事務所。早稲田大学大学院(建築計画)卒業後、米・ハーバード大学大学院に留学。ニューヨークのハイエンド・リノベーション事務所で研修後1996年に帰国し建築設計事務所、カガミ建築計画を設立。現在は高級マンションのインテリア改修、築古のヴィンテージマンションのリノベーションに特化し、カガミ・デザインリフォームのブランド名で活動中。カガミ・デザインリフォーム


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写真/澤田聖司 構成・文/介川亜紀 監修/日経デザイン 2013年11月22日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。

次回予告
vol.18は、終の棲家へのリモデル 適度な距離感を大切にする住まい・ 安全編をご紹介します。
2013年12月13日公開予定。

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