ホッとワクワク+(プラス)

ユニバーサルデザインの「今」がわかるコラムホッとワクワク+(プラス)

TOTOx日経デザインラボのコラムです。

ホッとワクワク+(プラス)

Vol.8
団地再生 快適な生活とコミュニティの創造 共用庭編 東京都 たまむすびテラス団地再生快適な生活とコミュニティの創造 住戸編東京都たまむすびテラス

団地外観

今回のグラフは、マンション内部と外部の住民のコミュニケーションについて訊ねたものです。外部の住民と「あいさつをかわす」「顔がわかる」「会話をする」世帯が一部に見られるマンションは、それぞれ4割を超えています。これとともに行ったヒアリングでは、マンション内のコミュニケーションの度合いが高いほど、外部とも同様にコミュニケーションの度合いが高い傾向が見られました。マンション内での関係性を大切にしていると、自然に「マンション」という垣根を越えて知り合いの輪が広がっていくのでしょう。

バーベキュー・パーティ2011年9月に行われたバーベキュー・パーティの様子。団地内・外の住民が一緒に楽しんだ
(写真提供:株式会社ブルースタジオ)


vol.07とvol.08は、築50年の団地を丸ごとリモデルした事例を紹介します。住棟5棟と周囲に広がる緑豊かな共用庭は、その魅力を生かしながら新たに生まれ変わりました。
リモデルのテーマは、建物、設備、植栽の刷新だけではありません。この団地に住む幅広い年代層の人々のみならず、団地近隣の住民も含めたコミュニティを育む仕掛けづくりです。そういった工夫が、住棟にも共用庭にも盛り込まれています。住棟のうち3棟の設計と貸し庭、貸し菜園の企画に関わった設計事務所、ブルースタジオのクリエイティブディレクターを務める大島芳彦さんはこう話します。「たまむすびテラスに関連する事業者をはじめ、設計担当者全員で、団地内に留まらず、近隣の方々ともコミュニケーションを図れるような新たな“街づくり”を目指しました」
vol.08では、団地の敷地の約8割にも及ぶ共用庭につくられた、老若男女がともに楽しめるさまざまな仕掛けをご紹介します。

マンション外部の住民とのコミュニケーションの度合い

小屋付きの庭 ひだまりのファーム

左/小屋付きのコロニーガーデンは1区画39~47m²。菜園にするなどアウトドアな趣味を楽しめる
右/ひだまりファームは1区画8m²。今夏は野菜がよく育った

貸し庭、貸し菜園で収穫の楽しみを分かち合う

貸し庭、貸し菜園で
収穫の楽しみを分かち合う

共用庭には、「コロニーガーデン」という小屋付きの貸し庭と、「ひだまりファーム」という貸し菜園があります。コロニーガーデンは、週末は家族と一緒に、郊外にある小屋付きの家庭菜園で野菜づくりなどを楽しむというデンマークのコロニヘーヴという習慣からヒントを得たもの。どちらも、団地内はもちろん近隣の方も借りられるので、「お隣の畑の借主と野菜の育て方を談義しているうちに、いつの間にか予想外にコミュニティが広がった」ということもありそうです。


かたらいのテラス こもれびのテラス

左/かたらいのテラスは団地内の「りえんと多摩平」というシェア住宅の前にある。りえんと多摩平の企画・運営はリノベーション事業を主とする会社、リビタ
右/こもれびのテラス。木陰と涼風があり、特に夏に心地よい場所

会話やイベントを楽しめる大型テラスを要所に

会話やイベントを楽しめる
大型テラスを要所に

共用庭の数箇所に、人々が気軽に休憩したり、イベントを楽しめるような大型のテラスを設けました。「かたらいのテラス」は暖かな日差しがたっぷり降り注ぐ場所に、「こもれびのテラス」は木陰を楽しめるケヤキの大木のそばにつくるなど、各季節の心地よさを感じられる場所が選ばれています。この2箇所は団地の周囲にある路地から間近にあるため、近隣に住む方々が散歩や買い物の途中に立ち寄ったり、団地内の知り合いと会話を楽しむ光景も見られます。


リビングの収納 ゆいま~る多摩の森 ゆいま~る食堂

左/低層棟には食堂と集会室のほか、小規模多機能居宅介護施設も
右/「ゆいま~る食堂」の入り口付近。木を生かした温もりある内装

誰でも利用できる高齢者向け住宅棟の食堂

誰でも利用できる
高齢者向け住宅棟の食堂

団地内の住棟5棟のうち2棟は、「ゆいま~る多摩の森」という高齢者向けの住宅です。こちらは設計事務所、プラスニューオフィスが担当しました。2棟の住棟をつなぐように、食堂や集会室のある低層棟を増築しているのが特徴です。この食堂は、ゆいま~る多摩平の森に住む方だけでなく、団地内の他の棟や団地近隣の方々も自由に利用できます。年齢を問わず多くの方が訪れ、食堂にも団地内にもさらに賑わいが生まれています。


所在地/東京都日野市多摩平3-1-6~8 
敷地面積/3,609,65m² 
構造・規模/鉄筋コンクリート造・地上4階 
建築年月/1960年
【AURA243 多摩平の森】
リノベーション完成/2011年6月  貸室戸数/24戸(ヤードハウスはうち6戸)
建築設計監理/株式会社ブルースタジオ 
ランドスケープデザイン/有限会社オンサイト計画設計事務所
貸し菜園運営/東邦レオ
【りえんと多摩平】
リノベーション完成/2011年3月  貸室戸数/142室
建築設計/株式会社リビタ、株式会社ブルースタジオ
ランドスケープデザイン/有限会社オンサイト計画設計事務所
【ゆいま~る多摩平の森】
リノベーション完成/2011年9月  貸室戸数/63戸
建築設計監理/株式会社プラスニューオフィス 
ランドスケープデザイン/有限会社オンサイト計画設計事務所

お話をうかがった会社
株式会社ブルースタジオ

1998年設立。「中古+リノベーション」の立役者として名を馳せる、一級建築士事務所。建築と不動産のプロをスタッフに抱え、フルオーダー住宅から築年数が経った木造賃貸アパートの再生、団地や商業ビルの再生まで幅広く手掛ける。ブルースタジオ ホームページ


【編集後記】

リタイア後は時間に余裕ができ、これまでやれなかったことにチャレンジできる大きなチャンスである一方で、身体の変化によって行動範囲が狭まってくる場合もあります。そういった背景を考えると、毎日の暮らしを楽しく送るためには、精神的、物理的に支え合える近隣のコミュニティはとても心強いもの。
少子高齢化が進む今後は、ご紹介した「たまむすびテラス」のように、お住まいの団地あるいはマンションの中だけではなく、近隣の方々とつながっていく工夫が住環境の要件として一層求められるようになるでしょう。  介川亜紀


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写真/山田愼二(特記以外) 構成・文/介川亜紀 監修/日経デザイン 2012年12月17日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。

次回予告
vol.09は、リタイア後の暮らし 自分らしさを体現した住まい・前編をご紹介します。
2013年2月下旬公開予定。

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