TOTOと日経デザインが見つけた、身近なユニバーサルデザインを紹介するサイト「ホッとワクワク」。第21回からは再び、お出かけのときに利用するいろいろな施設のユニバーサルデザインにフィーチャーしていきます。
夏休みに入って間もない第21回は、ファミリーに人気の高い、東京・豊洲の「キッザニア東京」です。通常の約2/3のスケールを目安につくられた街の中で、子供たちが大人になりきって仕事を体験できるエデュテインメント・タウンです。“エデュテインメント”とは、エデュケーション(学び)+エンターテイメント(楽しさ)を組み合わせた造語。仕事を楽しみながら体験して、働くことの意味や社会の成り立ちを理解し、チームワークやコミュニケーション、自分の行動と責任などを学ぶ場所なのです。3歳から15歳までの子供が安全に仕事に挑戦できるよう、さまざまなユニバーサルデザインが溶け込んでいます。
キッザニア東京は、旅行で経験するような欧米の街並みをイメージ。転倒を防ぐため、街の雰囲気を壊さない程度に石畳の凹凸を抑えている。通りに並ぶ建物それぞれで、医師、新聞記者、消防士、バスガイドなど90以上の、職業に関するアクティビティを体験できる。「大人である」ことを実感させるため、日常では大人しか味わえない“夜”の雰囲気を演出。入場料は子供3200円〜4400円(平日・休日、時間帯によって異なる)、大人1900円(写真:キッズシティージャパン)
キッザニア東京にある建物=パビリオンの天井や出入り口の高さ、通りの信号機や街灯の高さなどは、通常の約2/3を目安にデザインしています。
職業体験を楽しむ子供たちは、主に幼稚園の年中から小学校の高学年です。日常生活ではほとんどの設備が大人向けにつくられていますから、使いにくいシーンも少なからずあるでしょう。キッザニア東京では、身長約1メートルから1メートル55センチの子供たちの視線や、ドアを開け閉めするなど実際に使うシーンを想定し、“フィット感”を感じられるように約2/3というスケールの基準を決めたといいます。 そのおかげで、大人になったような気持ちが味わえると同時に、すべての建物や設備を安全に使いこなすことができます。
ドアを開けている男の子は小学校2年生。ドアノブはちょうど腰くらいの高さにあり、通常のドアと比べて、操作しやすい(写真:特記以外は山田愼二)
通りの信号のシグナルも子供の身長に合わせて、通常のほぼ2/3の高さに。背景をみると、建物の看板の位置なども低いのがわかる
家具のカウンターやテーブルの角は丸くカットして、頭や手をぶつけたときのケガを予防しています。嬉しくて、つい思いがけない行動をとってしまいがちな子供たちにも、ストレスなく、スムーズに職業体験を楽しんでもらうためのユニバーサルデザインといえますね。
家具のサイズは、子供向けに2種類の目安があります。テーブルの高さ63センチの場合にはいすの座面高37センチ、テーブルの高さが70センチの場合は座面高44センチです。作業をするとき、リラックスして食事をするときなど、用途によってサイズを使い分けています。
デパートで販売員の仕事を体験中。キャッシャーのカウンターの角は丸くなっており、そばを通って身体が触れてもケガをする心配はない
ハンバーガーショップでは本物の食材を使い、調理を行っている。調理台の高さは、作業しやすい約63センチ(写真:キッズシティージャパン)
キッザニア東京ではそれぞれの職業を体験するとき、親任せでなく、子供自身もアクティビティの内容やスケジュール、場所などの情報をチェックします。そのため、アクティビティ情報や各パビリオンの位置を示す看板は、身長1メートル〜1メートル30センチの子供の目の位置を基準に取り付けました。右の写真は携帯電話ショップ。トライアル用のタブレットはタッチ操作が必要なので、身長に合わせて選べるよう、2種類の高さを用意しています。
各パビリオンやそのほかの施設の場所を示した看板。身長120センチの子供の目の高さは、看板の中ほどに当たる
トライアル用のタブレットをはめこんだ什器。タブレットをはめた丸いプレートは、斜めになっていてより見やすい
(日経BP社「日経デザイン」 介川亜紀 フリー記者)2011年7月25日掲載
※『暮らしのUD ホッとワクワク』の記事内容は、掲載時点での情報です。
- 第22回は、「銀座三越」を紹介します。