地域に生きる会社 73

「正直」を徹底する商人魂の家づくり

 花岡秀芳さんが起業した後、本格的に住宅産業に参入したのは1997年のこと。みるみる業績を伸ばし、わずか7年で県下ナンバーワンの注文住宅会社に成長させた。花岡さん自身、それまで住宅や建築の世界での経験がなく、ゼロからのスタートだったこともあって、異例の成功事例として各界から注目を集める。

はなおか
代表取締役

花岡秀芳さん

取材・文/市川幹朗
写真/川辺明伸

  • ロフトに続く階段の前に、社長の花岡秀芳さん。
    21.5畳のLDKは、天井高の違いで広がりを感じる設計。
    右奥に浴室。

  • 提供/(株)はなおか

代々の商売を見て培った経営姿勢

 花岡さんは、戦国時代から徳島県に続く花岡家の16代目として生を受けた。幼い頃は、祖父が手がけていた漬け物の製造卸問屋、長じてからは父親が始めたスーパーマーケット経営を手伝いながら育ったそうだ。そんな環境で育った花岡さんにとって家業を継ぐのはあたりまえのこと。大学卒業後は、地元に戻って両親とともにスーパーを支える。だが、一時期は地域一番店だったそのスーパーも、大型店の進出や道路整備による人の流れの変化などにより次第に売り上げが減少。花岡さんは「余力があるうちに」店を畳む決心をする。ここからが花岡さんの雌伏の時。原因不明の体調不良にも悩まされながら、次の起業に備えることになる。
「地方で代々続く商人の家系」を自負する花岡さんにとって、起業すること自体、特別なことではなかったようだ。祖父や両親が、時代に応じて扱うものを変えながら商売をしているのを見てきたからだろう。もともと好きだったという土地や住宅に焦点を定め、勉強のためにつてを頼って無給で手伝いにいった分譲住宅会社などでの経験は、花岡さんの闘志にさらに火をつけた。「スーパーで1円単位のやりとりをして売り上げを確保するために真剣にやってきた」目からは、数千万円というお金を扱うにもかかわらず、当時の住宅業界の人たちの多くがいいかげんに見えたのだという。同時に、そこに勝機があるとも確信する。それが現在も続く「正直に王道を行く」経営理念であり、「親切に、丁寧に、きっちりと」の社訓につながっている。

  • 分譲住宅「くらしばこ」の水まわり空間。
    洗面所とトイレ。
    大型の陶器製洗面器にこだわった。

  • 分譲住宅「くらしばこ」の水まわり空間。
    浴室はサザナシリーズを採用。

「信用」が最大の魅力となる

 はなおかがつくる家は、こだわりの施工や長期優良住宅、ゼロエネルギーハウスなど、十分な性能を備えている。しかし、ハウスメーカーや同業他社を圧倒するような、ずば抜けた特徴があるわけではない。写真の「くらしばこ」は提案型分譲住宅で、特徴的だがこのスタイルのみならず、幅広いニーズに応えている。本格参入直後、食器棚やオーダーカーテンも含めた完成価格の表示やA2判の広告などの販売手法は人々を驚かせたが、長年続けていれば、もっと強烈な販売戦略を立てる他社が出てきても不思議ではない。
 それでも年に150棟余の依頼を受け、12年連続で県下ナンバーワンの受注を続けている秘密はどこにあるのか。花岡さんの話から見えてくるのは、やはり「信用」の2文字だ。 「『正直な売り方』に徹して、まじめにやってきたのがよかったのではないでしょうか」
「正直」は、売り方だけでなく、つくるものにも表れる。営業などの社員ばかりでなく、50人以上の専属の大工一人ひとりにまで「正直」が浸透しているのが、はなおかの最大の特徴といっていいのだろう。顧客が新たな顧客を紹介してくれるケースが多いことも、「信用」の高さを物語っている。
 花岡さんは、50歳を過ぎて社会人大学院に通ってMBA(経営学修士)を取得するなど、経営者としての歩みを止めない。順調に見える会社についても、課題が「20も30もある」とのこと。なかでも、現場の職人不足、後継者不足は喫緊の大きな課題だ。これは全国的な課題でもあり、一朝一夕に解決できる問題ではないが、「この問題をなんとかしなければ地方の住宅産業は成り立たない」と解決に向けて意欲を見せる。
 まじめに正直に、という姿勢さえ受け継いでくれればいい、と次代へのバトンタッチも見すえつつ、「引き継いだ後、業績が下がることがないように」と腐心する日々。そこには地方で生きる商人の意地が見える。

  • ロフトからLDKを見る。
    大開口で、採光性がよい。右奥に和室がつながっている。

  • 和室。
    腰高の低い連続窓で、落ち着きのある空間。

  • 玄関ポーチには、格子壁や植栽を配している。

(株)はなおか
概要
本社所在地 徳島県板野郡北島町鯛浜字西ノ須162-9
電話 088-698-1114
代表取締役 花岡秀芳
会社設立 1989年
従業員数 52人
事業内容 注文住宅の設計・施工/分譲住宅の設計・施工・販売/企画住宅の設計・施工・販売/リフォーム全般/土地開発分譲/不動産の仲介
売上高 36.7億円(2016年6月期)
 
TOTO使用機器
浴室 システムバスルーム
(サザナHSシリーズ)
洗面所 陶器製流し(SK6)
トイレ ウォシュレット一体形便器(NJ1)
Profile
花岡秀芳

Hanaoka Hideyoshi

はなおか・ひでよし/1957年徳島県生まれ。神奈川大学卒業後、家業のスーパーマーケットの店長を務め、89年に上水処理装置の販売・メンテナンスを受けもつ会社を起業。97年に住宅業界に本格参入した。「正直に王道を行く」家づくりで、県内の地元住宅会社での注文住宅着工棟数は、2005年より連続して1位。

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