新商品開発物語

暮らし方で選ぶ。
新・システムドレッサー「エスクア」

システムドレッサー「エスクア」。この6月、斬新なグローバルデザインをまといながら、暮らし方に合わせて自由に組み合わせられる、新しい洗面化粧台がTOTOから新発売されました。そのセミオーダーメイドシステムを、よりわかりやすくお伝えしたい。そう考えて、ショールームやカタログなどの企画・制作・デザインを担当するコミュニケーション系のスタッフ3名が、開発部門やデザインチームとともに、製品開発に参画してきました。どういう試みをしたのか、新商品「エスクア」をご紹介しつつ、語ってまいります。

聞き手・まとめ/村上浩平
写真/山下恒徳

  • 6つの基本プランのひとつ「フローティングデザインプラン」。鏡の上下にはLEDが取り付けられている。空間を均一に照らし、顔に影が出にくい。

ライフスタイルで選べる「エスクア」

今回新発売された「エスクア」はどういう商品ですか。

金井麻紀「エスクア」は、高級グレードである「システムJ」という洗面化粧台の13年ぶりのモデルチェンジですが、まったく新しいコンセプトから生まれています。それが、さまざまなご要望に応えられるセミオーダーメイドのシステム。従来は、片隅に「あればいい」という存在だった洗面化粧台が、時代の変化、お客さまの生活やニーズの変化によって、いつのまにか住まいの重要な場所になり、お客さまのご要望も多様になってきたんですね。

というと。

金井たとえば家事労働を軽減するため、キッチンの横に置いて動線や作業効率をよくする。あるいはホームパーティをよく開くので「見せられる洗面空間」にしたい。また家族のなかでもプライバシーを尊重するために、寝室の横にバスルームと一緒につけるとか。暮らし方によって、洗面化粧台がいろいろな意味をもつようになってきています。

具体的には、「システムJ」とどう違うのですか。

金井「エスクア」は、お客さまが自分の暮らしに合わせてセミオーダーメイド感覚で各パーツを選べる商品です。従来の「システムJ」は空間の寸法、つまり間口に合わせて部材を組み合わせるものだったのですが、「エスクア」は、さまざまなライフスタイルに応じた6つの基本プランをご提案しています。お客さまのニーズに一番近いプランを選んでいただき、そのプランから、水栓やボウル、さらには扉やカウンターなどの個々の部材を自分の好みで決めていくというかたちにしました。

ライフスタイルで選ぶということですね。その6つのプランとはどういうものですか。

金井開発が始まってから、お客さまの声やトレンドなどをいろいろ調べ、ご好評をいただいていた「システムJ」から、お客さまのニーズが高かった組み合わせを5タイプ。それに加えて、最近の調査でデザイン性の高いものがほしいという声が非常に増えてきています。そこで、ミラノサローネなどに出品されている海外のデザイン性の高い洗面化粧台を参考にし、フローティングデザインプランを加えました。

デザイン面で大きく進化

先ほどの「見せられる洗面空間」ですね。

金井TOTOの調査(※1)では、洗面所のリフォームに関して「来客に配慮した、人に見せられる空間にしたい」という方が約41%、「シティホテルやリゾートホテルのような空間にしたい」という方も約22%いらっしゃいました。

姚瑶海外の展示会などで目にするトレンドの洗面空間、化粧台というのは、水まわりの設備というよりは、インテリアのひとつ、家具のようなたたずまいになっています。空間全体にマッチする形や色、引き出しの中まで美しく仕上げられていて、部材同士もピタッとおさまる精緻な造りになっています。
 家具のようなデザインは「エスクア」の一貫したコンセプトですが、とくにそのシンボルとしてつくったのがフローティングデザインプラン。空間に余白をもたせることで圧迫感をなくしつつ、自分の好きなインテリアや小物を組み合わせて楽しむことができるプランですね。

金井カウンター10種類、ボウル4種類、水栓9種類、鏡4種類……パーツをいろいろ選べるということを、お客さまに楽しんでいただきたいので、それぞれのデザインや機能にもこだわりました。

たとえば水返しをなくして、バックガードを極限まで薄くすることで、すっきりさせたスリムフォルムカウンター。クリスタルカウンターには「霞(かすみ)」「彩糸(いろいと)」という2タイプの柄入りのものも新規に採用しています。新開発した上下LED照明は、鏡の上と下それぞれ横方向に広がるスリムな照明。どの位置に立っても影ができにくいうえ、鏡の上方向も照らすので間接照明の役割も果たします。

金井これもいわばホテル的な演出ですね。

水栓や洗面ボウルは、それぞれ海外のデザイン賞をとったトレンドデザインのものを各種取り揃えています。面材のカラーバリエーションについても、消費者マインドや建材のトレンドをウォッチしながら綿密につくりあげ、上質感や自然さ、落ち着きを表現しました。

クリーン機能もさらに進化

クリーン機能も魅力ですよね。

金井もちろんTOTOの一番の強みであるクリーン技術も搭載しています。今回新たに開発されたのが「お掃除ラクラク排水口(抗菌・防カビ仕様)」。アンケート(※2)によると、洗面所のお掃除で一番わずらわしいところは排水口なんですね。排水口部分に抗菌・防カビ効果をもつ樹脂を練りこんで、汚れのもとになる菌を抑えるようにしました。形状にもこだわり、排水口は段差をなくして掃除しやすくし、ヘアキャッチャーも集めた髪の毛をさっと落とせる形にしています。さらにTOTOの看板技術である「きれい除菌水」も採用。排水口に直接吹きかけることによって、さらにきれいが長持ちするようになっています。

製品からカタログまで開発する

ここにいる3名は価値伝達、つまりお客さまや建築家、業者のみなさんへのコミュニケーションを担当しています。

稲毛幸菜ものづくりの事業部と、私たちコミュニケーション部隊が一緒になって、お客さまのご要望にフィットできる商品をご提案できるように取り組んできました。

金井新技術のお掃除ラクラク排水口に使用している「抗菌・防カビ樹脂」は、洗面化粧台を開発する事業部だけでなく、菌・カビの分析を得意とする総合研究所や、樹脂材料を専門とする生産技術本部といったTOTO内の研究部門と連携してつくりあげた新しい材料です。ほかのパーツでも、事業部、デザインチームが携わり、そして私たちが一丸となって「エスクア」全体の商品づくりを行ってきたわけです。先ほどの6つのプランをつくったり、ユーザー目線の洗面空間をどう形にし、どうやって世に出していくかなどは私たちがリードしてきた部分ですね。

なるほど、ユーザー目線ですね。

金井これまでは選ぶのが難しいといわれていた商品なので、6つのプランからスムーズに選んでいただけるよう、今回はカタログなどのツールを強化しました。

稲毛これが「エスクア」専用のカタログです。

造りが違う感じですね。

稲毛お施主さまと設計者とのあいだの共通言語となるようなものを表現したい、見る人がワクワクするものにしたいと思いました。
 6つのプランのなかのどれにするかというのが最初の入口で、その具体的な展開例(バリエーション)を見ていただき、最後にパーツを選んでいくという構成になっています。各プランに基づくバリエーションは数多く掲載しました。「ホテルのような洗面化粧台」がほしいといっても、シティホテルとリゾートホテルでも全然違いますし、お客さまによってもイメージは変わってきます。自分のライフスタイルに本当にマッチするのはどれなのか、どのエッセンスをわが家に入れていったらいいのか、洗面空間を形にしていくときに活用してほしいと考えたからです。そのため平面図も一緒にのせるなどして、暮らしのシーンが想像できるように工夫しています。
 サイズやパーツの組み合わせで概算の見積もりがわかる一覧表ものせて、使い勝手もよくしました。

暮らしを一緒につくるTOTO

デザインにこだわるとき、建築家は造作で洗面化粧台をつくることが多いと思いますが、TOTOの商品でもデザインを追求するようになってきたんですね。

金井洗面空間にこだわるお客さまが増えてきた。洗面化粧台が表舞台に出てきたということだと思うんです。

建築家のみなさんには、まだ物足りないかもしれません。さらに選択肢を増やす作業を続けていきたいですね。

稲毛ものを選ぶというより、建築家の方もお客さまも「暮らしを一緒につくって」いけるというふうに思っていただければ、うれしく思います。

金井「エスクア」は多様な「暮らし方」の実現を目指した商品ですから、いろいろなシーンに合わせられます。お客さまの「暮らし方」をこれからもキャッチアップしつつ製品に反映させていきたいと考えています。

※1「住宅設備と生活意識に関する実態調査」TOTO調べ(2016年)
※2「暮らしに関するアンケート」TOTO調べ(2014年)

Profile
  • 金井麻紀

    Kanai Maki

    かない・まき
    TOTO㈱
    販売統括本部
    商品営業推進第二部
    浴室・洗面商品
    営業グループ
    1973年東京都生まれ。95年に工学院大学建築学科卒業後、二級建築士取得。TOTOハイリビングに入社。マンション・住宅の特需向けキッチン・洗面の商品企画に携わる。2016年より現職。

  • 稲毛幸菜

    Inage Yukina

    いなげ・ゆきな
    TOTO㈱
    販売統括本部
    商品営業推進第二部
    商品コミュニケーション
    企画グループ
    1982年千葉県生まれ。2006年に多摩美術大学大学院修了後、TOTOハイリビングに入社。洗面化粧台の販売企画業務に配属。
    10年より現職。

  • 姚瑶

    Yo Yo

    よう・よう
    TOTO㈱
    デザイン本部
    デザイン企画部
    マーケティング
    デザイングループ
    デザイナー
    1988年中国江蘇省生まれ、富山県育ち。2012年に金沢美術工芸大学卒業後、TOTOに入社。デザイン本部に配属。システムバスルームのカラー企画などに携わる。15年より現職。

購読のご案内はこちら
TOTO通信WEB版が新しくなりました
リニューアルページはこちら