ケーススタディ4

床・壁・天井へと
軽やかに連続する面

「海光の家」は、太平洋を眼前に臨む崖地に立つ。上部の国道から菜園に面した地下1階までのレベル差は12mに達する。こうした土地には鉄筋コンクリートで建てるのが正攻法だと岡田さんは言う。しかしそれではダボついてシャープさが出ないし、カチッとした大きく水平な面は周囲に対して威圧的な存在となる。またポンプ車は国道に止められず、下の細い道路から高圧で打設するのも不合理だ。そこで、もっと変化に富んだ表情をもち、構造・空間ともすぐれたものを目指し、鉄の使用を検討する。
 その結果、上部の3層ほどは鋼材による折板構造が採用された。板厚4.5㎜、成170㎜を基本とするサンドイッチパネルが、さまざまにズレながら折り畳まれていき、床・壁・天井と連続的に姿を変える。その漂うような薄い面が導く視線は水平・垂直に抜け、大海原への劇的な眺望を獲得している。そこには柱がなく、北側の先端は40㎜厚のコールテン鋼を嵌合した「違い棚格子」が支えている。しかもダクトやパイプを内蔵したサンドイッチパネルには丁寧な仕上げが施され、その構法に注ぎ込まれた膨大なエネルギーは慎重に隠されている。
 では、その設計はどのように行われたのだろう。岡田さんは手のひらにのるような初期のコンセプト模型を示し、これができた後は自らの手を離れ、構造家の陶器浩一さん、今回の鉄骨工事を担当した高橋工業の高橋和志さん、そして施主、スタッフなど多くの人がかかわるメディアになったという。そこにさまざまな意見が集約され、反映されていく。「どのように料理されてもつねにフォローし、よいアイデアは喜んで受け入れます」と岡田さん。
 たとえば、3階寝室の床は屋上階のゲートから吊っているが、下から柱で支える必要があると考えていた。しかし陶器さんから、壁を捻って吊ればバネのような効果をもち、柱を省けるというアイデアが出た。それはすばらしいと、さっそく採り入れたそうだ。
「僕らの使命はいい建物を施主さんに差し上げることであり、自分の我を通すことではない」と岡田さんは言う。「海光の家」を見ていくと、竣工に至るまでのプロセスでその姿勢がきわめて高いテンションで持続されたことがわかってくる。


>>岡田哲史さんによる、そのほかの構法的なアプローチを見る
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