ケーススタディ3

壁柱の展開

 壁柱構造は「えんぱーく」にとどまらず、さらなる展開をみせる。
 分譲集合住宅「ルネヴィレッジ成城」(10)。それぞれが地下1階、地上2階の3層メゾネット9戸が長屋形式で連なる。長さを異にする31枚の現場打ちRC壁が平面的に直交して配され、相互に交差も接しもせず、独立して立っている。壁の位置と長さは、周辺環境や住戸相互の見合いなどの条件を勘案して、精妙に決められている。現場打ちRC壁だからこそ可能だったことである。ここでも梁のない床スラブは壁柱に引っかかるように設置されていて、垂直な壁の自立性が優位に保たれている。壁と壁のあいだには床から天井までの開口(ハイサッシ)が設けられ、白い壁からの反射光が室内深くに達する。
松庵 森の家」(10)は地下1階、地上3階、4層6戸のコーポラティブ住宅。通常と異なりモデルプランを用意して購入者を募り、決定後にそれぞれ居住予定者と打ち合わせをしてプランニングを変えていくという方式であった。そのため全体を鉄骨造とし、十分な剛性を確保した床スラブ上の自由な位置に壁柱を設ける構造を採用している。鉛直荷重の逓減に応じ、壁柱の量は上階に行くに従い少なくなる。結果として壁柱の位置は各階すべてで異なり、上下階で通っている箇所はひとつもない。床スラブの水平なラインが強調されている外観は、壁柱の自立性を第一とした前2作とは大きく異なる。
「壁は壁、床は床として明瞭に分節された存在としたい。それらのあいだはすべて開口部になる。壁と柱を一体化し、壁面に設けた開口の大きさやプロポーションをデザインの主要な決定因とする方向には行きたくない」と柳澤さんは言う。そうして導かれた壁柱だが、ここまでの3作をみても、壁柱がつくり出す空間の様相は多様であって、決して収束しない。用途、目的、利用者の意見、周辺環境、コストなど、現実の諸条件にがんじがらめになりながら、それらを解く筋道を探るうちに壁柱が浮上してくるのであって、壁柱ありきではない。どの建築も、望ましい空間の様相をつくり出すことが主題であって、壁柱は主題を成立させるための規準線なのである。主旋律をのせる五線譜の役割といえようか。
 そうしてみると、壁柱を構造形式のひとつととらえるよりは、より広義に、計画、構造、施工、使用の全過程を通じてよりどころとなる「構法」としてみなしたほうがよいのだろう。


>> 柳澤潤さんによる、そのほかの壁柱の実例を見る
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