編集ノート

慣れと不慣れの両輪

文=伏見唯

特集「新しい構法を訪ねて」のケーススタディは、どれもあまり一般的ではない構成でつくられた、特殊な構法の建築である。そのため、取材で現場に行くと見慣れない風景が目の前に現れ、やはり一瞬、戸惑う。その是非は人それぞれだとしても、少なくとも建築によって心が動かされているのであり、こうした戸惑いこそが自身への問いを生み、ひいては新しい建築の可能性を思索するための、人の知性と感性を育むひとつのきっかけになるのではないかと思う。
一方で、取材のためにたった数時間そこに滞在するだけで、見慣れなかった風景が、驚くほどの速さで見慣れた風景に変わっていくとも感じた。先ほどまで不慣れだった環境のなかで、快適に過ごしている自分がいることに気がつく。特殊な構法は、もちろん、奇をてらい、特殊であることを目的にしているのではないのだから、時間がたち、見慣れた頃にこそ、その内容が問われるのかもしれない。
新しい構法に取り組む建築家は、そうした慣れと不慣れの両輪をまわしているように見えるから、おもしろい。