ケーススタディ02

紡がれた形式

 藤村さんによる「家の家」の設計プロセスの説明を聞いていると、藤村さんの提唱する「超線形設計プロセス」の、ある重要な側面が見えてくる。それは、藤村さんが言うには、「形式は、当てはめるものではなく、生成されるもの」という点である。
 たとえば、6000㎜角という大きさにおいて、7000㎜角だと広いので平面、5000㎜角だと狭いので断面の検討の重要性が増すが、6000㎜角は平面と断面の両者が拮抗した緊張感のある寸法になる、という平面寸法のある種の形式に、藤村さんは自ら到達している。この住宅の設計が終わり、オープンハウスなどでほかの建築家と話をしたところ、同様に感じている人が多かったという。藤村さんの師にあたる塚本由晴さんが、「アニハウス」(1998)などで昔から実践していた寸法でもあるらしい。
 この寸法に限らず、藤村さんは「家の家」において、田の字型、片寄棟、棟持柱、シンメトリー、等分割などの、建築言語としてはすでに定着している形式を用いているが、それらは最初から形式に当てはめているわけではなく、試行錯誤するうちに、その形式に至ったのだそうだ。
 これは、形式の有意義性を発見したうえで、その形式を結果的に採用しているのであり、いわば「形式の再生産」といえるだろうか。建築史を見ても、一度形式化されたものは、「形式の墨守」の潮流もあいまって、もともとの形式の意義が忘れられ、形態だけが独り歩きしてしまいがちである。そうした傾向は、社寺建築などで時を超えた形態の再生産が求められる場合には、式年遷宮よろしく、むしろ計りしれない意味をもつが、機微の対応が求められるであろう現代の住宅設計においては、本来の自由を阻害する融通のきかない足枷になりかねない。藤村さんの設計方法は、従来知られていようといまいと、形式を自ら生成するものであり、昔からの建築言語や形式にも再び血を通わせる可能性があるのではないだろうか。
「家の家」というタイトルは、単なる修辞的な同語反復ではなく、「家」には見えない住宅もたくさんあるなかで、汎用を視野に入れながら、郊外に立つ「家」の形式の再生産を試みた強い意志が込められているのだろう。


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