特集/ケーススタディ

天守閣になった屋根裏

 改修のハイライトは2階。そこは屋根裏の物置で、床には下方の部屋の天井高をそのまま映した段差があり、壁も付けられていて、まったく利用されていなかった。傾斜する天井、36㎝と60㎝のふたつの段差、太い木の柱と梁。それらを生かすべく、内部の壁はすべて取り払われ、床は数段のステップを付けたほかは元の段差をそのままに杉板を張りつめ、小屋組みはすべて現しとし、天井にも杉板を張り、大きな一室空間としている。
 さらに壁の四周すべてに高さ38㎝のガラスの窓を水平にまわしている。フィックスのガラスは柱や筋交いの外側に張り出して付けられているので、遮るものがなく、完全な水平連続窓となっている。この効果はめざましい。八方に眺めが効く。裏山の畑の様子、せまる大木の梢、隣の棟の立派な瓦葺き、はるかかなたの平地、さらに先には海まで見えることもあるという。設計者の言葉によれば小さな天守閣。眺めだけではない。軒で遮られた直射光はやわらかな間接光となって八方から射し込む。屋根架構全体が浮き上がって見えるような軽快感がもたらされる。ガラス窓の下には板戸の通風口が設けられていて、風を通すこともできる。閉鎖と開放の双方の属性をもった秘密基地めいた空間。読書にも音楽鑑賞にもまどろみの場所としても適している。現状は夫婦寝室として利用されているが、将来は陶器のギャラリーとしての利用も考慮されているそうだ。

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