高い棟をもつ母屋、それと土間を介してつながる付属棟。2棟のあいだには風呂場が増設されていた。全体として込み入っていて暗く、見通しが効かない空間だったという。
そこで1階では風呂場を撤去して屋外のデッキとし、それに面してLDKを設け、その隣の和室をつぶして洗面・バス・トイレをまとめたゆったりとした水まわりとした。窓の位置はほとんど元のままとし、サッシを入れ替えるだけにとどめるなど、改修箇所には明瞭なメリハリをつけている。
薪ストーブのあるLDKがすばらしく快適な空間となっている。天地いっぱいの大きなガラス開口で屋外デッキと一体化している。柱と梁の古い部材と、床と壁の杉板や天井の砂漆喰といった新しい部材が軽重なく並置されていながら、何の不自然もない。デッキの向こうには先祖が植えたにちがいない防風のための樹林があり、振り返ってステンレストップの長いキッチンカウンター方向を眺めると、ふたつの小さな窓の外の間近に葉陰が揺れている。林の中の静謐な空間である。