長坂大さんが改修設計を手がけた「淡路島の家」。
蛇行する急な上り坂の先に現れたその姿は、帯状にまわされたガラス窓が際立ち、生き物の眼のような奥行きをもって風景を映していた。
印象深い外観だが、じつは外観上の改修前と後の違いは少ない。アプローチ側から見れば、瓦屋根と瓦屋根のあいだにあった板張りの外壁が、ガラスの水平連続窓に変わっただけ。
長坂さんは「最小限の操作で大きな効果を」と言っていたが、ガラスの存在感を見るとそれは十分に達成されたといっていいのだろう。
もともと、ガラスを建物全体になじませようという気はさらさらなかったようで、突き出た開口部に対して、ガラスは下にはみ出して取り付けられた(断面詳細図参照)。それによって、シャープなフレームの眼鏡をかけるかのごとく、壁面から浮いたように見せている。
新しく付け加えられた要素と、すでに存在している要素の対比。この新旧の衝突の違和感というか異物感は、改修の仕事に限らず、長坂さんの作品にときどき見られるが、どれも強さがあって忘れがたい。
ちなみに、今ひとつわからなかったガラスの固定方法について質問したら、長坂さんとともに「淡路島の家」を担当したMegaの田中郁恵さんがスケッチを描いてくれた(PDF参照)。密閉容器のパッキンの発想。ざっくりとした表現の裏で、細部に宿る設計者の思いが伝わってくる。