特集/ケーススタディ2

マーケティングと市場を的確に判断する

塚田 購入される敷地についてのリサーチはどのくらいされますか。
織山 時間をかけてくわしく調べますね。スタッフが業者をまわって探してきた土地の情報の内容はまちまちですから、自分で現場に自転車で赴いて確認します。「この街にはこういう人が似合う」ということを、土地を見て空気を味わいながら考えるのです。商品開発と同じことでしょう。たいていの場合、100坪ほどの規模の土地を探しています。縦長で分割することができず、そのわりには容積をとれてリーズナブルというもので、旗竿形状や崖地が多いですね。そこに平均すると6戸ほどの住戸を計画します。これまでに3~10数戸の規模を手がけていますが、6戸程度が適切でしょう。コミュニティのサイズとしてまとまりがありますし、計画中も組合員の意見が極端な方向に走らないですみます。
―― 「石神井プリーツ」で壁にブロックを使われたのはどうしてですか。
塚田 これまでのアーキネットのプロジェクトで見られたRC打放しよりも、表情豊かなものにしたかったことがあります。最初の案でも、RC打放しの壁に木の板を張る仕上げにしていました。しかし、構造と表層を切り離すことができず、一体で表現できるものはないかと考えていました。そこで最終案では特注の顔料を混ぜて焼いたブロックを積み上げて壁をつくることを思いついたのです。ブロックは焼いただけのものと、焼いた後に工場で小叩きをしたものの2種類を用意しました。これら2種類を雨戸と組み合わせ、ボーダーパターンで使っています。また、壁ありきの建築にしたいと考えていました。床スラブと大きな開口の建物では、周辺の状況に中の暮らしが影響されることがあり、かえって閉鎖的になることもあります。壁主体のシンプルなボックスでありながらプリーツ空間のような場所があれば、内部が自由設計であっても、社会とのつながりは得られると思いました。結局、インフィル設計は2戸を担当しています。アーキネットでは、建て主に好みのスタイルについてアンケートをとっておられましたね。いつもされているのですか。
織山 アンケートは、会話のきっかけになると思ってとっています。「白いインテリアがいい」というときには、その背景を見きわめればいい。建て主は、空間の要素を言葉でうまく表現できないので、何か切り口がほしいのですね。商品開発でも、施主の言葉をそのまま実現するのではありません。何が言いたいのかを知るために行います。
―― プロデューサーには、建築家の通訳をする役割もありますね。
織山 結局は、施主に建物のよさをわかっていただきたいので、ストレートに伝えたいと思っています。そして、マーケティングではよくいわれることですが、一般の人は見たことのないものはイメージできません。それができるのはプロですから、居心地のよい空間をきちんと提案して見せていくことで、経験値を上げていかなければいけないと思っています。
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