特集/ケーススタディ2

建築家の提案ありきの住棟計画

―― 今まで何棟を手がけられましたか。
織山 進行中の物件も含めると、70棟になります。建築家は20人ほどにお願いしてきました。塚田さんには、たまたま雑誌やホームページを見て、いいなと思い電話をかけました。
塚田 織山さんには電話で、いきなり石神井をお願いしたいと言われたように記憶しています。でもコーポラティブハウスは大変ということを実際に手がけたことのある設計者から伝え聞いていましたので、最初はお引き受けするのは難しいのではと思っていました。プロデュース会社が入っていても、あくまで建て主の希望にしたがう自由設計というのがコーポラティブハウスの売りですから。ただ、説明をうかがうと「アーキネットスタイル」は建築家の提案ありきということで、そこが決定的に違うところでした。
織山 そもそも私は集合住宅は半公共的なもので、施主が完全に自由設計できるものだとは思っていません。事業の仕組みとしては、建築家の提案が生きるようにと考えました。
―― 「石神井プリーツ」での与条件はきびしいものでしたか。
塚田 そうでもありません。通常の案件では容積率を使い切ることを要求されるものですが、「石神井プリーツ」ではかなりゆとりがあります。織山さんは最初に説明にいらしたときから、「街並みをよくしたい」と言われていましたけれど、ここまで受け入れられるとは思っていませんでした。プランニングは最初から個性的なものを提案しました。それでも却下されず、まずはホームページ上で募集されたのです。希望者があまり集まらなかったことから、今の形に変えて提案しました。組合を立ち上げ後の最終案では、下2層分の住戸に光を届けるために、上2層分の住戸の面積を縮めることを提案しました。また光や風が入るようプリーツ状に設けた共有空間は面積的にはインフィルに入りますが、スケルトンとして素材などを統一して決めさせていただきました。あのプリーツ部分を外に対して閉じて各自の領域にしていたら、建物全体の魅力がなくなってしまうでしょう。ただ、この変更では建て主の方々に集まってもらい、時間をかけて説明して了承していただきました。あいだにアーキネットが入りながら、設計者の立場でいてくれたことが大きいと思います。
織山 ゴルフにたとえるなら、私はフェアウェーとホールは設定しますが、アプローチのしかたは建築家が専門ですから、そこはお任せしています。自分が建築家に依頼する判断基準は、簡素で深い空間をつくれることです。室内の空間ではいろいろな暮らし方をされますから、凝った造形がされなくとも空間が豊かなことを重視します。それは光の具合も含みます。豊かな光があると、何もなくても気持ちのよい空間になるものです。自分もコーポラティブハウスに住んでいて、最低限の仕様にしています。「これでも住める」とわかっていただくために(笑)。施主の立場からすれば、気持ちのいい空間であればお金を払います。専有面積の大きさにこだわる分譲マンションの発想とは異なりますね。
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