インディテール

峯田 建さん+恩田恵以さん設計の「SPROUT」 理にかなう形がある
峯田 建+恩田恵以「SPROUT」へ

「SPROUT」の建物本体の周囲に巡らされた、駐車スペースの雨よけ屋根。上部にはすべて芝が敷き詰められている。2階室内から見ると手前の緑と遠くの雑木林がつながり、なんとも牧歌的で不思議な景観を生み出している。芝屋根は室内への照り返しを防ぎ、芝の水分が蒸散する際の気化熱がまわりの気温を下げる効果もある。
 フラットな屋根面は、鉄骨の骨組みの上に構造用合板の下地を張ってできている。ウレタンシート防水を施したうえ、軽くて水はけのよい鹿沼土を敷き、高麗芝を並べて敷く構成。屋根の上にのる土+芝の厚みは全体で約80mm。いずれもホームセンターで入手できるような一般的な材料である。
 芝への散水・灌水方法はさまざまあるが、ここでは四周の軒先に30mmの立ち上がりを設け、屋根全体をプールのようにして水を行き渡らせている。中央建物の屋根から散水された井戸水は壁を伝い流れ、芝の上に落ちていく。水が溜まり切ると、余分な水は軒先からオーバーフローして地面に流れ落ちるというシンプルな仕組み。「畦を築く水田に近い考え方です。水やり位置が1カ所でも水が行き渡りますし、屋根に多少不陸があっても対応できます」と峯田さん恩田さん
 ただし、オーバーフローすることで軒先から客土が伝って汚れるおそれがあるので、屋根端部にはぐるりと600mm幅・60mm厚の保水マット「ドムマット」を敷き、その上に芝を置いている。軒先側では芝をマットに巻き込むようにすることで、地上から見ても芝がのぞくようになっている。この保水マットはウレタンマットの中に温度変化で給排水する樹脂「サーモゲル」を入れたもの。水分を吸収するだけでなく、晴天で気温が上昇すると貯えていた水分を放出するため、水が効率よく芝に与えられる。
 峯田さん恩田さんは、この保水マットにあらかじめ芝を活着させた「ドムターフ」という製品も、傾斜した屋根をもつ住宅(「志木の家」)で導入したことがあるという。今回は保水マットの使用量を限定することで、コストダウンを図った。芝屋根は単純な構成で施工も難しくないため、建て主も一緒になって施工したという。つくり方がわかっていると、住んでから自主的なメンテナンスができるため、結果として長持ちにもつながる。

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