荒木 裕典

工務部 設計グループ

教えて、任せる先輩。食らいつき、成長する後輩。
~中国工場での特殊空調設備立ち上げ

教えて、任せる先輩。食らいつき、成長する後輩。
~中国工場での特殊空調設備立ち上げ

設計から施工管理まで。

入社2年目を迎えた2011年、荒木は、初めて上海に出張することになった。中国上海市「東陶華東有限公司」の工場設備立上げに参加するためである。
荒木の所属する「工務部」は、この業務を2010年のプロジェクト発足以来リードしてきた。

工務は、研究や開発などに比べ、一般には馴染みがないかもしれない。「私も、配属されたときは、何をやるのか全く想像できませんでした。『電球交換でもやるの?』なんて思っていたぐらい(笑)」。とんでもなかった。工務の仕事は、荒木の想像をはるかに超えたスケールの大きいものだった。

荒木のいる工務部設計グループの業務は、大きく工場建設と大型設備設計に分かれる。
工場建設は、国内外にTOTOグループの工場を建設する業務。衛陶工場などあらゆる工場の設計、ゼネコンへの発注だけでなく、生産設備をどうレイアウトし、インフラ(水、電気、ガス、他)をどう引くかなどの検討も行う。
「大型設備とは、工場で使われる大規模インフラ設備や特殊空調設備から始まり発売前製品の開発実験設備、生産設備も手がけます。設計や機械メーカーへの発注を行うだけでなく、安全に工事を進められるよう管理する仕事もします」。
施工管理という専門の職業もある領域を、設計者が行うことはなかなかない。「スケールだけじゃなく、本当に1から10までものづくりに関われるのが、この仕事の醍醐味ですね」。

テスト。飛行機内での補習。

2011年当時、東陶華東のプロジェクトはハード的な工事が終わり、随時設備を立上げる状態だった。
荒木のミッションは、「特殊空調設備」を試運転し、立ち上げること。陶土でつくられる衛生陶器の製造において、温湿度が変わってしまうと品質に影響が出る。工場を一定の環境に保つ特殊空調設備の重要度は、非常に高い。
「試運転にも専門的なスキルが必要なんです」。

「一般空調は経験があったので、今回は勉強のために行って来いという感じでした」。しかし、赴任が決まったときに、その装置を設計した先輩技術者から「今の状態で荒木を行かせるわけにはいかない」と、待ったがかかる。
確かに、当時、荒木の特殊空調の知識は0。「その先輩が、『オレがテストするから、合格したら連れて行ってやる』となりました」。全部で十数問。先輩は簡単といっていたが、荒木には難しかった。実際、1回目は不合格に終わってしまう。
当時、荒木は、ウォシュレット茨城工場の立ち上げにも携わっていた。合格するためには、業務の間に自分で勉強するしかない。「土日に茨城の図書館へ行って調べたりしました」。
やっと合格したのは、最初のテストから3カ月後、出張に行くかどうかを決めなくてはならない期限ギリギリのことだった。「それでも先輩は『うーん』と、納得いってないみたいで」。
そのため、行く途中の飛行機の中では、再び空調の問題を出された。補習である。「答えられないと、『なしかー』って怒鳴られました(先輩も荒木も九州出身である)」。

「今年一番しびれたよ」

補習をしながら中国に着くと、早速、業務開始だ。
まずは、外観、仕上がりなど、設備がきちんと仕上がっているかをチェックする。「日本と中国では施工のレベルが違いますからね」。仕上がりのチェックができるのは、工務だけである。
次にデータの収集だ。工場内の温湿度はもちろん、空調機を制御する熱源冷温水の温度、OA(外気)、EA(排気)、RA(環気)の風量制御状態のデータを取る。それらのデータから傾向を読み解き、一定に管理されているかを調べる。その際、設定条件への寄り付き、制御方法を確認し、最適の制御とするために現地の技術者へ設定変更を依頼していく。

製造は夜間も続く。当然、外気の負荷も変わってくるため、日中だけのデータでは不十分だ。「先輩が、『俺は夜のデータを取るから、昼は頼む』と」。勉強になると思って、荒木も「やります」と答えた。どこかにあった先輩に甘える気持ちは、たちまち消えた。
翌日から、荒木はひとりでデータ収集を行った。
中国語の分からない荒木と、中国語しか分からない現地の技術者の作業。「制御をこう変えてほしい」「???」。二人で、カタコトの英語を駆使して意思疎通を図った。

一番いいデータを見つけたら、その値を装置に覚えさせていく。
今までは、その場その場でデータを入力していたが、それでは分かりづらいと荒木は考え、図示化してデータ利用することを提案、一目で分かるよう見える化した。「私には、試運転のノウハウはないですから、自分が何ができるか考えたときに、こういう改善ならできるかなって」。
先輩に見せると、「すごい!今年一番しびれたよ」。試験に不合格し、補習を受けていた荒木が成長し、自主的に業務に取り組んだことが余程嬉しかったようだ。

先輩から荒木、そして後輩へ。受け継がれる技術。

10日が経ち、試運転完了後、工場での生産が始まった。今後発展が予想される中国南部や内陸部、あるいは、台湾へ製品を供給する重要な製造拠点だ。この拠点のフル稼働により、中国におけるTOTOの衛生陶器の生産能力は、格段に上がった。
TOTOが中国戦略の一つとして掲げる「地産地消体制の充実」を実現するために、また、拡大を続ける中国市場のニーズに応えるために、荒木ら工務部が大きく貢献したことは間違いない。

「一連の流れを知ったのは一番の収穫です」。荒木は、試運転に関わることで電気的な知識だけではなく、ダクトの構造など設備系の知識やPID制御など制御方法に関する知見も得た。「どれも工務にしかないノウハウ。それを勉強したのは大きいです」。
それにより、空調のことを他のメンバーから頼られるようになった。
「今、中国で立ち上げている工場があるのですが、私が試運転を手がけた装置とほぼ同じシステムが導入されます」。その設計を、今度は荒木が担当することになった。先輩の立場になったわけである。
後輩に教える役も担うようになった。では、後輩のために問題をつくる?と聞くと、「いや、後輩がすごくできるんで。私がつくったものなら、簡単に解けると思います」と笑う。

先輩から荒木へ。荒木から後輩へ。工務の技術は受け継がれ、TOTOの生産基盤を支えていく。教えて、任せる先輩がいる。それに、食らいつき、自分ができることを考え、実行し、成長する後輩がいる。それが、工務の、TOTOの風土である。
2018採用エントリーはこちらから
Share

CLOSE