衛藤 陽介

ウォッシュレット開発第二部 電装開発グループ

-40%、-20%、-50%への挑戦。
~アプリコット・ネオレスト用コントローラーの開発

-40%、-20%、-50%への挑戦。
~アプリコット・ネオレスト用コントローラーの開発

上司は言った。「多分、無理」。

「この課題に関して、構想を練っておいて」。
衛藤は、2011年のある日、上司であるグループリーダーから言われる。「2012年に発売されるアプリコット・ネオレストの案件でした」。
ウォシュレットには、電源の電圧を変換し、ノズルやモーターを制御するコントローラーが搭載されているが、衛藤は入社以来、このコントローラーの開発に取り組んできた。

上司が提示したテーマは、従来比で40%のサイズダウンを実現し、コストも20%ダウンすること。さらに、環境先進地域ヨーロッパで販売するため、待機消費電力を今までの1Wから0.5Wにする目標も掲げられた。電気部品は、当然小型化すれば高価になる。省エネも、小型化・低コストと相反する要件だ。
上司は言った。「やり方は任せるから」。衛藤は、このプロジェクトの開発リーダーにも任命された。続けて上司は言った。「でも、多分、達成は無理だろうな」。実際、コントローラー史上最も難しいテーマといっていい。「けれど、私は、高いハードルに取り組む方が好きなんです」。

サイズ-40%とコスト-20%の両立という困難。

「まずは、どの部品をどれだけダウンサイジングできるのか検討していきました」。
例えば、物理的に最もスペースを取ってしまう電源部分。衛藤は展示会に赴き様々なメーカーの社員と名刺を交換、アポイントを直接取り、情報を収集した。さらに、メーカーに実際の製作も依頼した。「すべて自分の判断でやってました」。確かに、上司は「やり方は任せる」と言った。TOTOで「任せる」とは、ここまで任せるということだ。

他の部分も同様にして、要求を見える化して検証、具体案をまとめていった。このサイズでいけるという構想がまとまったのは半年後。「けれど、それはコストをいくらでもかけられたらの話。コストダウンしながらというのが、非常にチャレンジャブルでした」。
例えば、温度センサー部分は、不可能を可能にするために従来の回路構成そのものから完全に見直した。見直すことにより、新規の回路構成を生み出したのだが、それが特許に侵害していないか調査しなければならない。そういった調査をしながら10人の開発メンバーとサイズを検討した。構想検討会は30回以上に。「通常の開発なら、3回といったところです」。部品の機能を維持・向上しながら点数を大幅に削減。サイズダウンとコストダウンを両立させていった。

省エネ-50%の壁に挑んだ14人。

待機消費電力半減は、さらに大きなテーマだった。「私一人じゃ埒が明かないと判断して、別のプロジェクトを立ち上げました」。優秀な技術者が必要だが、各技術者がやっている通常業務を優先せざるを得ない。
衛藤はデータをかき集めた。そして、「もし、5年間現在の販売台数で売れた場合、5年間売り続けた製品で削減できる電気量は、一日で4人家族10年分の電力を削減できる」など、待機消費電力を半減する意味を訴える資料をつくった。「各自のテーマがある中で周りを巻き込むために、取り組みたいテーマの効果を数値的に検証し、モチベーションをあげていくことも必要です」。
ようやく14名を集めることができた。ソフト技術者、研究者、ハードのベテラン、製造技術……全員、高い知見を持つメンバーたちだ。

14名による案出しのための会議が始まった。
まずは、どこが消費しているか、どこが削れるという基本的な話から。だが、省エネ部品を使うことはコスト高につながる。せっかく出たアイデアを他社の特許という壁が塞ぐ。議論を深めていく中で、「無理」という結論に何度も突き当たった。
「けれど、突然、アイデアがあふれ出すときがあって」。例えば、アナログ回路設計のベテランが、「こういう方法は?」と部品の位置関係を変えるアイデアを出す。最初は、衛藤も他のメンバーも理解できない。だが、半信半疑で回路を組んでみると課題を解決している!「本当に勉強になりました」。衛藤より年次の浅いメンバーも3分の1ほどいたため、育成勉強会のようであったという。
そんな会議は週1回開催され、それが3カ月ほど続いた。

通常の10倍かかった回路検討会。

さらに、大きな壁が立ちはだかる。
TOTOでは、製造するにあたり回路に日常起こりうる以上のノイズ・負荷をかけ、その動作を検証している。そこで誤作動する部品は、たとえ高性能でも使用できない。しかし、衛藤が取り組んだのは、今までにない回路。安定性の検証は非常に難しかった。
衛藤は、案出しで出たアイデア一つひとつについて、品質保証と協力しながら、お客様が使うときに発生・混入するあらゆるノイズを想定、検証していった。「通常回路検討会は3回くらい。でも、このときは30回はやりましたね」。

検証で安定稼働を確認、特許を取得した7件ほどのアイデアを盛り込んだ。それにより安価に消費待機電力-50%を達成することはできたが、それでもコストの達成には後一歩及ばない。
品質保証は、工場の設備で使うはんだやコーティング剤を見直した。購買は、国内・海外同時立ち上げと現地での部材調達によりコストダウンを図った。「みんなで一つになって取り組みました」。
サイズ40%ダウン、コスト20%ダウン、そして、消費待機電力を50%削減する試作品が完成したのは、2011年の12月。
製造に向けて確認すべき項目は全部で60あったが、修正が必要だったものは一つだけ。「これだけの部署と人が関わりながらです。すごいと思いました。みんなが情熱を持って取り組んでくれたおかげです」。関わったメンバー全員で喜んだ。

2012年、衛藤の開発したコントローラーを搭載したネオレスト、アプリコットは発売された。

1W→0.5Wの大きな意味。

コスト目標の達成が、業績に好影響を与えたことは言うまでもない。また、究極の小型化を実現したため、他の製品にも転用可能となった。これは、事業部が進める部品の共通化に大いに貢献した。

衛藤たちが苦労して実現した消費電力欧州基準を、クリアしている他社製品もある。しかし、そのほとんどが、主電源を切ることで達成している。「電源を切らずにクリアした製品はありません」。欧州市場にタイムリーに導入できるため、事業的価値も大きい。

お客様にもたらしたものも大きい。「1Wを0.5Wにすることは一見小さいこと。けれど、トップシェアのウォシュレットで待機電力を半減することは、大きな意味を持ちます」。
例えば、5年間販売したウォシュレット全ての削減電力量をCO2に換算すると、1時間でガソリン185ℓ分を削減したことと同じになる。「消費待機電力削減による環境性能の向上は、シェアトップメーカーの責務なのです」。
70cm×60cmの小さな基板上での挑戦。しかし、その挑戦がもたらした成果は、とても大きい。
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