桐原 麻衣子

機器水栓事業部 機器水栓開発部 カスタム水栓開発一グループ(現・キッチン・洗面水栓開発グループ)

デザインと機能の両立が、もたらしたもの。
~円筒状のエアインシャワーの開発

デザインと機能の両立が、もたらしたもの。
~円筒状のエアインシャワーの開発

真ん中に手すりのある浴室?

桐原はある日、上司に呼ばれ、こう切り出された。「プロジェクトに参加してみないか?」――お客様のライフスタイルを模索するためのプロジェクト参画への打診だった。入社1年目はほぼ研修、2年目は教育の一環としてマーケティング部門で企画の仕事を経験した。そして2年目の終わり、上司に告げられたのは、開発部門が企画にも関わり、しかも、製品単体ではなく浴室空間全体から製品を考えるユニークな活動である。
だが、その頃の桐原は、「つくる」ことに飢えていた。「正直、『まだまだ企画か……』という気持ちはありましたね」。

そんな桐原を待っていたのは、浴室・手すりの開発者、社内デザイナー、そして、外部のデザイナーである。「私より、年齢も経験も上のメンバーばかりでした」。
アイデア出しからプロジェクトはスタート。
第1回目のミーティングでは、「夢のある浴室を考えてくる」という課題が出された。「私は、浴槽のふちから溢れんばかりのお風呂をイメージして、枡酒の風呂を描いて行きました(笑)」。そうした既成概念にとらわれないアイデアを、年齢に関わらずメンバー全員で出し合い、議論していくところからスタートした。
アイデアの一つに、「真ん中に細い手すりがある浴室」というものがあった。「『邪魔なのでは?』という意見もありましたが、『手すりが真ん中にあることで、壁際に寄り添いながらやっていた動作が、広い空間いっぱい活用でき、浴槽へのアプローチも変えることができる。新しい浴室空間を提案できる』という話になり」、カタチにしていくことが決まる。

まず、デザイン画作成、器具や部分的な形状を検証する模型づくり、それを空間検証する1/1のモックアップ(模型)製作――「真ん中に手すりがある浴室」が具体化されていく中で、手すりには、節水性に優れたエアインシャワーを搭載することが決まる。壁にあるのが当たり前だった器具も真ん中に持ってくることで、更なる可能性が広がるからだ。また、手すりとデザインを一体化するため、円筒状の形状が採用されることになった。

浴び心地は譲れない。

社内外のデザイナーがデザイン検討した円筒状のエアインシャワーは、シンプルで洗練されたフォルムだった。
「円筒状のシャワーは他社にも色々ありましたが、浴び比べをすると、デザインはよくても、浴び心地が悪いものがほとんどでした」。デザイン性と浴び心地のよさを同時に実現すること。これが、桐原のミッションとなった。
早速、桐原は研究試作に取りかかる。円筒状の中にエアイン機能を搭載できるかを、原理モデルをつくり検証していく。

デザインはすでに完成していたが、桐原がエアイン機能を入れてみると、エアイン部分が収まらなかったり、浴び心地が悪くなったりと、変更を余儀なくされる部分も出てきた。「何より、浴び心地は譲れません」。
しかし、デザイナーも、自分達のデザインに自信もプライドもあるため、なかなか変更を了承してくれない。「どちらも譲らない状況が続きましたが、何度も資料を持って行きました」。写真や口頭ではダメと判断すれば、試作品をつくり浴び心地を優先すべき根拠を示して説得。最終的には、実際にデザイナーにシャワーを浴びてもらい、ようやく納得してもらった。
一方、円筒形のシャワーは握り易さを考慮し、丸ではなく異形断面となり、しかも、デザイナーのこだわりで外観面に継ぎ目もなしという形状になった。これにより、エアイン機能を収納するには、これまでの構造が全く使えないことも分かった。
「私の知識だけでは解決できない。」桐原は、先輩知見者を集め議論の場を設けた。先輩たちは実に様々なアイデアを提供してくれた。新たな構造を実現するために、たくさんのアプローチがあることを、桐原は身を持って知る。議論は教育の場でもあった。

どうしてカタチに出来ないのか?

プロジェクト開始から3年、ようやく構造が決まり製造へ――だが、ここでも壁が立ちはだかる。「図面を持って行くと、技術部門から『できない』とバッサリ」。開発の意図を伝えても取り合ってくれない。「『ここまで来たのに、どうしてカタチに出来ないのか?』って泣きそうでしたね」。

今思えば、異形断面で継ぎ目なしの形状、製法などから考えれば、安定して製造できないという技術担当者の判断の方が妥当である。
しかし、桐原はどうしても実現したかった。色々な情報を集めては技術担当者のもとへ出向く毎日。「『お前、また来たのか』って言われるくらい」。そうした行動が技術担当者を動かす。気付けば、製品化する方法を一緒に考え、アドバイスをくれるようになっていた。
数カ月後、海外での製造が決定。ここからは、開発部門から製造部門や技術部門に移管するということも多いが、桐原は技術担当者とともに製造ラインに立会った。現場にも出向き、検証や確認作業に汗を流した。
任せっきりでないことを示すと、技術担当者は強力な味方になった。「上手く製造できないときは、一緒によくなる方法を考えてくれたりして、今では大の仲良しです。」と桐原は笑う。

プロジェクトがもたらしたもの。

2013年、円筒状のエアインシャワー発売。
「正直、カッコいいなと思いました」。外部デザイナーからは、シャワーを頬張るような写真が送られてきた。そこには「よく頑張りましたね。」という言葉が添えられていた。技術担当者は「本当に苦労させられたよ」と一言。桐原は、その言葉にいろいろな想いを感じた。

企画から設計・開発、発売までを手がけることで、桐原が大きく成長したことは言うまでもない。「自分にいろいろな伸びしろがあると実感できた4年間でした」。
デザイン、構造、製造……一つの形にするまでに、実にいろいろな壁があることも知った。「それまでは、シャワーは水を出すだけのもの、つくったら、すぐに発売できると思っていましたからね」。
こんなこともあった。
完成後、桐原は社内で「自分も昔同じようなものを考えたけれど、カタチに出来なかった。よくできたね。」と言われた。今までの知見ではできるはずがないと思われたことを、実現したということだ。「製品としてカタチにした以上の達成感を感じましたね」。それは、事業部、TOTOにとっても影響度が大きいはずだ。
そして「節水性や浴び心地のよさなど使い勝手は、TOTO製品である以上外せない。そのうえで、デザイン性も満足できる製品を世の中に出せたことは、大きな成果だと思います」。

美しいだけではない。エアインというだけでもない。
円筒状のエアインシャワーは、桐原に、一緒にもの創りに関わったメンバーに、TOTOに、そして、世の中に、様々な価値を提供したのだ。
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