戸次 允

バイオ研究グループ(現所属・衛陶開発部 衛陶開発グループ)

“TOTO技術職の魅力”それを体現してきた、一人の技術者
~遺伝子検査技術開発

“TOTO技術職の魅力”それを体現してきた、一人の技術者
~遺伝子検査技術開発

何で自分がバイオなんだ。

衛生陶器のトップメーカーとして、高いセラミック技術を持つTOTO。その技術を発展させて、光触媒等の新領域事業も展開している。
さらに、TOTOが持ち合わせている独自の技術を集めて、遺伝子やたんぱく質などを測定するバイオセンサー技術を開発できないか――入社したばかりの戸次が取り組んだのは、そんなテーマであった。

戸次は機械工学科の出身である。「正直、『何でバイオなんだ』というのはありました」。モル計算を一からやり直したと笑う戸次。開発を手がけたバイオセンサーは、基本的に、人から採取した遺伝子やたんぱく質を、溶液と一緒にセラミックの基盤上にあるDNAに流して反応させ、そこに光などを当てて電気信号へ変換する。幸い、バイオについては研究所にプロがたくさんいたため、基礎知識だけでなく評価方法などについても教えてもらうこともできた。しかし、実際の製品化までつなげるためには機械系の知識を持った人財が不可欠だったのだ。

原理検証から試作機づくりまで。

ターゲットを、遺伝子測定にするか、たんぱく質など他の成分の測定にするかも未定のまま、プロジェクトはスタート。
最初の4年間は、現象を正確に測定するための原理検証に費やされた。
装置の開発担当者は戸次しかいない。ごみ箱に捨ててある部材を拾い、リード線を切り、テープで貼り付け装置をつくった。当てる光はレーザー?LED?周波数は?電流を測るための条件は?DNAを載せるチップの材料・形状は?――実際の検証作業も、上司や色々な人に相談しながら、初めはすべて戸次ひとりで行なった。

次は試作機づくりだ。もちろん、原理検証をもとに外注メーカーに発注するのも戸次である。メーカーはバイオについては素人。「『なぜ、こんなことをするか』から説明しなければなりません。しかし、できたものを見るとこちらの意図と全く違っていたり」。できあがるまでに1年以上かかった。さらに検証と修正の時間が加わる。
使いやすさを工夫する必要もあった。「開発技術を用いた遺伝子測定は、ある程度大きい病院で使われることが想定されたので、専門の技師が扱うことが考えられます。けれど、たんぱく質測定の場合だと、小さい病院でも扱えるよう簡単にする必要がありました」。

TOTOとしても初めての技術であり、上手くいく確証がない中、評価 ~検証~修正を繰り返す日々。開発テーマが遺伝子測定に絞られ、試作機が完成するまで、4年の歳月が費やされた。

事業計画に携わる中で芽生えた想い。

一方で研究所は、利益など目に見える成果が出にくいため、少しずつではあるが、進展していることを的確に報告する必要があった。
そのために、国のプロジェクトに参画し、大学や他の企業と一緒に開発することを模索したり、試作機を展示会に出展し、来場者に技術を売り込んだりする業務も行った。最初は一人で行っていた開発も、その後は10名ほどに増えていたが、リーダーとして彼らをまとめる役割も戸次が担った。

そして、特許戦略の策定も。
他社の特許を調べることはもちろん、TOTOとして一番守りたい技術はどこかを考え、特許出願を検討。その特許を他社に使ってもらいパテント料でビジネスをすることも考えていた。もはや戸次は、必然的に事業戦略にも関わるようにもなる。事業計画そのものは主として上司が担当したが、現場の開発者として、戸次が担当役員など経営層に報告する場面も多くあった。
国の制約が非常に厳しく、高い精度を求められる医療機器を、TOTOが安定して量産できるかなど、事業化の検討では、様々な意見が出された。なかなかプロジェクトは、前に進まない。

入社して9年が過ぎようというころ、戸次には、ある感情が生まれていた。
「このプロジェクトでは、原理検証から特許・事業戦略まで、あらゆる領域に関われて、すごく楽しかった。けれど、その先の量産に関しては、自分は全く経験がないことに気づいて」。当時、33歳。手を動かしてものづくりをするには年齢的にギリギリではないか――そんな想いを抱いた戸次は、転籍を決断する。「上司は希望をかなえてくれましたが、長年研究して、自分の手で利益を生み出すところまでたどりつけなかったことは、今でも心残りです」。

入社10年目の新人。

戸次が異動したのは衛陶事業部。最初の1年間は洋風大便器に関わった。
0からの出発、すべてが勉強だった。まずは、先輩について性能評価業務から。「製造するための問題やクリアすべき基準などを、実際にモノを触って、手を動かし、理解していきました」。
その後は、小倉工場で設計したものを、国内、国外の工場で量産するための生産移行を経験。プラスチックと違って衛生陶器は、同じ品質のものを製造するのが極めて難しい。さらに、海外では気候や材質も変わる。生産を行うための調整や評価を先輩社員など多くの人達に教えてもらいながら1年半ほど経験する中で、戸次は量産品の開発の難しさを嫌と言うほど味わった。

その後は、現在まで、一体型タンクの制御開発を担当している。タンクに溜まった水を流すために、どのタイミングで、どれくらいの時間弁を開けるかなどを制御する部分の開発だ。
「遺伝子検査技術とは全く違うものですが、便器の圧力損失も電気の抵抗みたいなもの。考え方は装置と基本的に一緒です」。逆に、衛陶事業とは異なる研究所で異なるテーマに取り組んでいたことが、新しいアイデアにつながる。戸次は、異なる形状の便器の洗浄水量が一定になるよう自動で調整できる、新しい制御の仕組みを考え出した。
でも、と戸次は言う。「開発者とはまだ言えません。本当の開発者に失礼です」。勉強の日々は、今日も続く。

戸次は、紛れもなく典型的なTOTOの技術者である。学校の専攻とは直接関係ないテーマに取り組み、力を発揮することや、研究や開発のあらゆる領域・サイクルに関わっていく点。あるいは、「やりたい」と手を挙げ全く異なる領域に挑戦し、それまでの経験を活かして新しい技術を開発していること、そして、成長のために努力し続けること。
戸次のキャリアを見れば、TOTO技術職のおもしろさ、そして魅力が凝縮されていると言っても、過言ではない。
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