TOTO
建築に内在する言葉
 
著者=坂本一成
編集=長島明夫
発行年月=2011年1月
体裁=菊判(152×218mm)、上製、320頁
ISBN=978-4-88706-316-7

ブックデザイン=秋田寛+アキタ・デザイン・カン

定価=本体2,800円+税
イベントレポート
対談:〈建てること〉の射程
レポーター=長島明夫
もともとは3月17日に予定されていた坂本一成さんと塚本由晴さんとの師弟対談が、2ヶ月半ほど時期を遅らせながらも、過日、ジュンク堂書店池袋本店にて無事開催された。
周知のように塚本さんは東京工業大学の坂本研究室の出身であり、新刊の『建築に内在する言葉』に収録された坂本さんの文章も、すでに大部分を雑誌発表時の状態で読まれている。おそらく本書の内容は、現在独自の活動を展開する塚本さんのある部分を形成していると言ってよいと思うが、この企画ではそうした建築家としてのお二人が共有する部分、そしてその上でさらにそれぞれの固有の部分までが浮かんでくることが期待された。「〈建てること〉の射程」というタイトルは、震災を経て、あるいは震災の只中にあって、ますます重みを増すことになったが、一方でそのことは、お二人のこれまでの問題意識が、この大惨事の状況においても確固とした議論のテーマになりうることを示している。大多数が3月の時点から引き続いての予約であるという聴衆を前に、対談は充実したものとなった。
〈建てること〉の射程をめぐるさまざまな話題のなか、議論は建築における共同性をひとつのキーワードとした。ハイデッガーを援用した坂本さんの「〈住むこと〉、〈建てること〉、そして〈建築すること〉」は1978年の発表だが、まず塚本さんは、その文章での〈建てること〉に共同性が想定されていなかったのではないかと切り込む。そしてケン・フォレットの歴史小説『大聖堂』(1989)を引き合いに出し、〈建てること〉が本来的に持っている社会構築の側面、その共同性に意味を見る。対して坂本さんはあくまで共同性と距離をとる。すなわち、そのような幸福な共同性は現代社会においてもはや成立しえないのではないか、空間の共同性は外部に対する排他性と表裏一体なのではないか、と。塚本さんの主張は、近作の町家のシリーズ(「だんだんまちや」「タワーまちや」「スプリットまちや」)などで実践されている思考と連続しており、また当然坂本さんも、『建築に内在する言葉』としてまとめられた三十数年間の思考に通底する認識にほかならない。二人の建築家の実感を湛えた言葉の行き来は、その場を共有する人間に予定終了時刻を忘れさせた。塚本さんからは、坂本さんの実作にじつは興味深い共同性があるという指摘がされ、話はパブリックとコモンという概念の捉えなおし、建築の自律性の捉えなおしを経て、なぜ建築をつくるのかという根源的な地点にまでさかのぼっていった。

※対談の記録は『建築と日常』No.2に掲載

坂本一成 Kazunari Sakamoto
建築家。1943年生まれ。アトリエ・アンド・アイ 坂本一成研究室主宰、東京工業大学名誉教授。主な作品「House F」(日本建築学会賞作品賞)、「コモンシティ星田」(村野藤吾賞)、著書『坂本一成 住宅─日常の詩学』『建築に内在する言葉』(TOTO出版)、『坂本一成/住宅』(新建築社)、共著書『建築を思考するディメンション──坂本一成との対話』(TOTO出版)など。
塚本由晴 Yoshiharu Tsukamoto
建築家。1965年生まれ。アトリエ・ワン共同主宰、東京工業大学大学院准教授。主な作品「ミニ・ハウス」(東京建築士会住宅建築賞金賞、吉岡賞)、「ハウス&アトリエ・ワン」(グッドデザイン賞)、著書『「小さな家」の気づき』(王国社)、共著書『図解アトリエ・ワン』(TOTO出版)、『アトリエ・ワン 空間の響き/響きの空間』(INAX出版)、『The Architectures of Atelier Bow-Wow: Behaviorology』(Rizzoli)、『WindowScape 窓のふるまい学』(フィルムアート社)など。
長島明夫 Akio Nagashima
編集者。1979年生まれ。雑誌『建築と日常』編集発行者。『建築に内在する言葉』編集担当。共編著書『映画空間400選』(INAX出版)など。
イベント情報
イベント名
『建築に内在する言葉』刊行記念トークイベント
対談:〈建てること〉の射程
出演
坂本一成、塚本由晴
司会
長島明夫
日時
2011年6月2日(木)
会場
ジュンク堂書店 池袋本店