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住宅の射程
 
住宅の射程
2刷
著者=磯崎新、安藤忠雄、藤森照信、伊東豊雄
発行年月=2006年11月
体裁=四六判(188×128mm)、上製、276頁
ISBN=978-4-88706-274-0

ブックデザイン=天木理恵

定価1,760円(本体1,600円+税10%)
日本建築界をリードする4氏が語る「21世紀の住宅論」
 ギャラリー・間20周年記念展「日本の現代住宅1985-2005」にあわせて開催された連続講演会では、磯崎新氏、安藤忠雄氏、藤森照信氏、伊東豊雄氏という日本建築界をリードする4氏に「21世紀の住宅論」を語っていただきました。本書は、その全内容を収録したものです。

建築家の道程のひとつに、住宅設計でデビューを果たした後、徐々につくる建築の規模が大きくなり、建築家としての地位が確立していくという流れがあります。その意味では、住宅は建築の原点、出発点であるともいえます。ただ、公共建築物の仕事が激減した現在では、若手建築家はなかなか住宅の先に進むチャンスがない時代でもあります。そうした状況の中で、いま建築家は何をするべきか、何を考えるべきなのか。本書の中で4氏は、歴史的名住宅や今話題の住宅作品を分析しつつ、ご自身の若い頃を振り返りながら、それぞれの語り口で厳しく挑発的に、若手建築家に向けてメッセージを発信しています。

「この状況で唯一できることは、自分のロジックで組み立てた仮説を信じる。それしか方法はない」(磯崎氏)、「条件の悪い仕事を良い仕事に変える、仕事がなければ大きな構想を練り自分でつくり出すのも建築家の仕事」(安藤氏)、「建築を外の条件から説明するのではなく、自分の内側から説明する人を求めていた」(藤森氏)、「リアルなものがあるとすれば一体それは何か。その問題こそが今の建築家にとってのモラルであり、使命感ではないだろうか」(伊東氏)。

住宅設計に対する考えはそれぞれ異なりますが、通底しているのは、住宅をつくる意味を若手建築家に問いかけていることです。単なるスタイルの提案にとどまらず、「住宅」を「建築」に昇華させること。住宅が思想に裏付けされ、歴史に耐えうるだけの射程をもつことを投げかけています。自ら実践してきた建築家の言葉だけに重みがあるこの熱いメッセージを、ぜひ多くの方に受け止めていただきたいと思います。
プロフィール
磯崎新 Arata Isozaki
1931年大分県生まれ。61年東京大学数物系大学院建築学博士課程修了。63年磯崎新アトリエ設立。主な作品に「大分県立図書館」(66年)、「群馬県立近代美術館」(74年)、「つくばセンター・ビルディング 」(83年)、「水戸芸術館」(90年)、「ラ・コルーニャ人間科学館」(95年)、「秋吉台国際芸術村」(98年)、「北方町生涯学習センターきらり」(05年)などがある。66、75年日本建築学会作品賞、70年日本建築学会特別賞、83年毎日芸術賞、86年王立英国建築家協会(RIBA)ゴールドメダル、96年ヴェネツィア建築ビエンナーレ金獅子賞など受賞。主な著書に『空間へ』『見立ての手法』(ともに鹿島出版会)、『UNBUILT/反建築史』(TOTO出版)などがある。
安藤忠雄 Tadao Ando
1941年大阪府生まれ。69年安藤忠雄建築研究所設立。97年より東京大学教授、現在名誉教授。主な作品に「住吉の長屋」(76年)、「小篠邸」(81年)、「光の教会」(89年)、「淡路夢舞台」(99年)、「フォートワース現代美術館」(02年)、「表参道ヒルズ」(06年)などがある。79年日本建築学会作品賞、87年毎日芸術賞、95年プリツカー賞、96年高松宮殿下記念世界文化賞、97年王立英国建築家協会(RIBA)ゴールドメダル、02年アメリカ建築家協会(AIA)ゴールドメダルなど受賞。主な著書に『建築を語る』、『連戦連敗』(ともに東京大学出版会)などがある。
藤森照信 Terunobu Fujimori
1946年長野県生まれ。71年東北大学建築学科卒業。78年東京大学大学院博士課程修了。現在、東京大学生産技術研究所教授。主な作品に「神長官守矢史料館」(91年)、「タンポポ・ハウス」(95年)、「ニラ・ハウス」(97年)、「天竜市立秋野不矩美術館」(97年)、「高過庵」(04年)などがある。80年日本都市計画学会賞、市政調査会藤田賞、83年毎日出版文化賞、86年日本文化デザイン賞、サントリー学芸賞、97年日本芸術大賞、01年日本建築学会作品賞など受賞。主な著書に『明治の東京計画』(岩波書店)、『日本の近代建築』(上下、岩波新書)、『藤森照信 野蛮ギャルド建築』(TOTO出版)、『人類と建築の歴史』(筑摩書房)などがある。
伊東豊雄 Toyo Ito
1941年京城市(現ソウル市)で生まれた後、父親の郷里の長野県へ戻る。65年東京大学工学部建築学科卒業。66~69年菊竹清訓建築設計事務所勤務。71年アーバンロボット(URBOT)設立。79年事務所名を伊東豊雄建築設計事務所に改称。主な作品に「八代市立博物館」(91年)、「せんだいメディアテーク」(01年)、「サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2002」(02年)、「まつもと市民芸術館」(04年)、「TOD’S表参道ビル」(04年)などがある。85、03年日本建築学会作品賞、92年毎日芸術賞、98年芸術選奨文部大臣賞、99年日本芸術院賞、02年ヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞、06年王立英国建築家協会(RIBA)ゴールドメダルなど受賞。主な著書に『風の変様体ー建築クロニクル』、『透層する建築』(ともに青土社)などがある。
コンテンツ

磯崎新  住宅は建築か
なぜ「住宅は建築か」/住宅もつくった建築家/小住宅はすべてnLDKである/公団住宅という悲喜劇―団地サイズと『家族ゲーム』/住宅は建築じゃない――篠原一男と野武士たち/nLDK批判から見えてきた新しい家族像/おたくという建築的テーマ/再々「住宅は建築か」

安藤忠雄  すまいについて考える
サヴォア邸との出会い/建築は現実との闘い/建築と同時に都市を考える/冨島邸/大淀のアトリエ――トレーニングの場/神戸と大阪、2つの住吉の住宅/小篠邸――抽象と具象の葛藤する建築/六甲の集合住宅/中田邸/今も続く建築への思い

藤森照信  20世紀から21世紀への日本のすまいの流れ――分離派問題――
21世紀の分離派/現代住宅の最前線/梅林の家/森山邸/Tハウス/戦後日本の開かれた住宅/1 丹下自邸/2 森博士の家/3 メタボリズムの明るい未来像/4 自閉に向かった住宅/建築をつくる原理/自閉を開く――反転の時代/21世紀の茶室/1 一夜亭/2 矩庵/3 高過庵

伊東豊雄  今、住宅とは何か?
住宅設計のモラル・使命感/2006年の住宅――抽象的な森山邸/70年代の住宅――モラルの表明/1 弧の余白/2 塔の家/3 住吉の長屋/4 中野本町の家/シルバーハット/80~90年代の東京――快楽都市の出現/東京遊牧少女の包/住宅の可能性――エマージンググリッド/1 東雲キャナルコートCODAN/2 台中市メトロポリタンオぺラハウス/森山邸に住むナマな人/新しいリアル

関連書籍
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関連展覧会
監修=石堂威、小巻哲
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著者=磯崎新+新保淳乃+阿部真弓
企画・編集=小巻哲
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著者=藤森照信
写真=増田彰久
藤森照信
著者=藤森照信
企画・編集=ギャラリー・間
伊東豊雄
著者=瀧口範子
安藤忠雄
著者=安藤忠雄
関連講演会
第1回 2006年1月10日
住宅は建築か
講師=磯崎新

第2回 2006年1月17日
住まいについて考える
講師=安藤忠雄

第3回 2006年1月31日
20世紀から21世紀への日本の住まいの流れ――“分離派”問題
講師=藤森照信

第4回 2006年2月2日
住宅論――いま、住宅とは何か?
講師=伊東豊雄

会場=草月ホール