人にやさしいプロダクト“soil”
お話をお聞きしました。
soilは、珪藻土という環境にも優しい自然素材を原料にしているのですが、本当に原始的なつくり方をしています。その根底にあるのは日本古来から続く左官の技術です。きっかけは、200年の伝統を持つ金沢の左官会社「イスルギ」の石動(いするぎ)博一専務という方かな。彼が左官の技術を活かしていろんなこと、例えば額縁に左官でアートを施し「左官アート」と銘打ってフランスの展示会に出品したり、孤軍奮闘していた時に出会いました。
金沢に関わるようになったのは、金沢のデザインセンターから「金沢の面白い人を集めるからデザインの話をしてほしい」とオファー頂いたのが最初です。金沢は、九谷焼や山中漆器などモノづくりが息づいている上に、金沢美大という最高学府でデザイナーが育っている。産地にデザイナーがいるって日本では珍しいんです。だからこそ、産地に根づく企業とデザイナーを組み合わせて新しいモノづくりができたら面白い。
たいがい地域には人材のマッチングスキルがないんですが、僕は割と得意なのでその接着剤になりますと。それで1年ぐらいのプロジェクトに仕立ててやってるうちに、冒頭の石動(いするぎ)博一さんが面白いアートをやっているからと引き合わせていただきました。
いや、soilになるまではもうちょっと紆余曲折があります。
金沢には、和菓子のパッケージなどを手がけるグラフィック系の方が多いのですが、伝統を意識してか、金箔を貼るような加飾に走りがちな特徴が垣間みえました。
なので、石動(いするぎ)さんが本気なら「(悪いけど)今のデザイナーだと壁は破れない。売れるものは作れない」と言ってアッシュコンセプトと契約してもらいました。僕たちは製品を作るのはもちろん「ブランドを作る」意識で引っ張る。その過程で古巣のデザイナーも気づいてくれるかもしれない。それが、イスルギの成長にもつながるはずと考えました。そこを最初から既存デザイナーさんの意見を聞きながらいい塩梅でやったら良いものはできない。だから、きっぱりうちで引き取ったんです。
そこから、スタッフと綿密な打ち合わせをしました。決めたのは「加飾はだめ・素材感重視」ということ。素材となる珪藻土を調べ上げ、モルタルと違い調湿・消臭性能を持ち、環境面でも特長的な素材で、茶室とかお手洗いなどに使うと効果的であること。また価格は決して安くない(手をかければかけるほど高額になる)などの要素を抽出しました。シンプル・ミニマルに徹して10アイテムほどのデザインを作り、イスルギさんに全て試作してもらった。
soilがまさに体現していますが、アッシュコンセプトでは、それぞれの地域の地元デザイナーの提案で商品を企画したりプロジェクトとして発信していきたいと思っています。地産地消をベースにしながらも、よくあるような”地産地消ブランド”で終わらず、例えば「soil」という世界観を大事にしたモノ作りを一緒にやっていきたい。デザイナーありきじゃなく、その土地と使う人の使い勝手を第一に考えた、使う人のためのブランドづくりをやっていきたいんです。