Vol.24 消費電力3割減を達成! 悔しい思いをバネに奮闘した高速片面タイプ最新型・挑戦の軌跡。

Vol.24消費電力3割減を達成! 悔しい思いをバネに奮闘した高速片面タイプ最新型・挑戦の軌跡。Text:Yayoi Okazaki Photo:Hiromitsu Uchida

誰にでも使いやすく、しかもecoなハンドドライヤーを。それを目標にして開発した、最新型「高速両面タイプ」のクリーンドライは業界最高水準のコンパクト化に成功。乾燥性能はもちろん、使う人にとって気になるイライラまで解消したTOTOの自信作です(VOL.23参照)。ところが、想定外の非常事態が。自分たちの製品が、世の中に受け入れてもらえない? 突然の逆風に開発者はどのように立ち向かい、次の段階をめざしたのか。2014年2月に発売した最新鋭の「高速片面タイプ」。その完成に至るまでのハンドドライヤー開発秘話第2弾をお届します。

山口 謙悟(やまぐち・けんご)

機器水栓事業部
機器開発部 機電商品開発グループ

2005年TOTO株式会社入社
機器事業部で3年間、食器洗い乾燥機関連開発業務、生産設計業務に従事。
以後、クリーンドライの開発業務、生産設計業務を担当。


Chapter 1

震災後の逆風がショックだった。

震災後の逆風がショックだった。


「使用停止中」の文字が本当に切なかったと言う山口さん。よりecoな製品にしなければと、強く心に誓ったそうだ。

それは「高速両面タイプ」のフルモデルチェンジ(VOL.23参照)を進めているときでした。最適なノズル形状を求めて検証実験を繰り返していた頃、東日本大震災が起こったのです。僕は家も工場も北九州なので、直接的な被害はありません。開発中の新製品も、発売予定は2012年の2月。多少の影響はあるにせよ、ギリギリ間に合うタイミング。それも消費電力を抑えるために試行錯誤している真っ最中。めざす方向性は間違っていなかった。そう思ってはいたものの、現実はそれどころではなかった。予想もしていなかった厳しい逆風が襲ってきたのです。

計画停電等で厳しい節電が求められた。そのため全国各地でハンドドライヤーが次々と使用停止に。それは電力事情が回復しても続きました。北九州でも近所の百貨店ではずっと使用停止のまま。見ると心が痛みましたね。たしかにこの状況では無理もない。当然の処置だとは思いましたが、ハンドドライヤーは電化製品のなかでも特に目の敵状態。パブリック向け製品ですし映像的にもインパクトがあるからでしょうね。でも本当はそんなに電気を使わない。そのためにいま苦労しているのにと、正直悔しかったです。

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Chapter 2

最高水準のエコに挑戦する。

最高水準のエコに挑戦する。

ハンドドライヤーは電気を大量消費すると思われている。利用者の方ならそれも仕方がない。家庭用の製品じゃないので知らなくても当然です。でも設置する側の方はわかっているはず。ヒアリングするとやはりそうでした。使用停止は節電中というアピールの意味合いが強い。もともと「エコだから」という理由でクリーンドライの設置を決めてくださる事業者さんも多い。ペーパータオルだとゴミが出るし補給の手間もかかる。「高速両面タイプ」と比較すると、1000人規模のオフィスだと年間で約12トンの紙を削減、つまり約857本分の木を守る計算になる。電気代もクリーンドライ1台1か月で約100円程度。なのに、無駄なもののように扱われている。ならば、引き続きフルモデルチェンジ予定の「高速片面タイプ」は、もっと厳しく電力削減を進めないとダメ。そう覚悟を決めました。

そこで、新たな「高速片面タイプ」の開発目標は、消費電力約3割減の業界最高水準を超える数字に設定。それで乾燥性能を維持するのは本当に厳しい。でもあえてハードルは高くしないと世の中に認めてもらえない。もう意地でしたね。ただ、前回同様にノズルを工夫すれば、なんとか達成できるはず。手ごたえはありました。それからは再び検証実験の繰り返し。前回は両面にノズルがあったので、工夫の余地がいろいろあった。でもこんどは片面だけ。穴を大きくし過ぎると風量は多くても「まばら感」が出てしまう。ノズルの直径とピッチのバランスに四苦八苦。シンプルな形だけに難しい。でも「使用停止」を見たときの悔しい思いをバネにして頑張れた。ecoに貢献できる製品に仕上げて自信を持ってお届けしたい。その一念でした。


  • 「片面高速タイプ」旧機種のノズル。

  • 新機種ではノズルを大きめにしたのがよくわかる。

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Chapter 3

世の中の小さな声にも応えたい。

世の中の小さな声にも応えたい。


手前が新機種。写真ではわかりにくいが、奥の旧機種より薄くなり、乾燥室内のつなぎ目がなくなって形や色もシンプルになった。

奥行きを薄くすることにこだわったのも同じ理由からです。ペーパータオルから替えたくても、洗面スペースが狭くてあきらめるケースも多い。再度、そんな事業者さんに向けて提案できる製品にしたかった。結果、たった2cmですが薄くすることに成功。これでほとんどすべてのところに設置できるはず。これも大きく見れば、紙ゴミが減って森林資源を守ることに繋がります。他にも色々試行錯誤しましたよ。たとえば清掃しやすくするために、極力つなぎ目もなくす試みも。どうしてもつなぎ目の部分に汚れが溜まる。それをなくしたので、見た目もきれいで気持良く使える。そのために樹脂の素材を変えて、薬品での清掃もできるようにしました。成形が非常に難しい素材ですが、ノロウィルスなどの影響もあり、ここ数年で衛生概念ががらりと変わった。もともとハンドドライヤーは非接触なので非常に衛生的な製品です。だから食品関係施設でのご利用も多い。いままでより強い薬品で本体を消毒することが必要なら、それに応えたい。どの製品もそうですが、世の中の求める声に耳をすまし、それを実現するために努力するのが開発者なのですから。


乾燥室をより広くしたので手が乾かしやすい。また水滴飛散防止に役立つ水受けも完備。奥行き154mmのスリムボディで空間にすっきり収まりそう。

僕は就職活動中に、UD(ユニバーサルデザイン)の考え方に共鳴してTOTO入社を決めました。TOTOの製品は誰もが毎日使うものばかり。クリーンドライも同じです。だからこそ「誰にでも無理なく安全に使ってもらえる」ことに、今回もこだわって開発を進めました。第6世代のクリーンドライとして、それを実現した「高速両面タイプ」「高速片面タイプ」を完成させることができてほっとしています。いままでのクリーンドライの歴史を振り返っても、そのときどきの問題点を着実にクリアしながら進化しているんですね。乾燥方法が1999年発売の第4世代から、熱で水滴を気化させる方式から風で水滴を吹き飛ばす方式へと大きく変化したのもそのひとつ。風の方が圧倒的に省エネなんです。この頃から時代はecoへと大きく方向転換した。そういう大きな流れを見据えながら、1人1人の使い心地にもずっと配慮し続けたい。外でのトイレを嫌がる子どもさんが、低めに設置されたクリーンドライがあるスーパーだけは「ゴーしにいくね」と喜んでトイレに行く。そんな話を聞くと、本当にうれしく思います。

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編集後記

編集後記

お話の最後に「UDの考えに共鳴して」という山口さんの言葉を聞いて合点が行きました。誰にでも使いやすい製品を。その気持ちがひときわ強く感じられた開発秘話でした。またハンドドライヤーが熱ではなく、風で吹き飛ばす方式に変化したと聞いて、なるほどと。だから電気代がごくわずかなのですね。いまでもヒーターこそ付いてはいても、それは寒冷地対策だとか。寒い時期にぬれた手に風があたると、ひやっとする。冷たい、痛い。そう思われないための配慮で、ごく弱いヒーターには切り替えスイッチも付いている。でも使う側は知らない。だからハンドドライヤーが電気を食うと思い込んでいる人は、昔の温風を知っている年齢の方。思わず手もみをしてしまう人だそうです。私もそう。手もみ派なのですが、「高速片面タイプ」の場合、早く乾かすには最初の手もみは必要ないそうですよ。節電のためにも、覚えておきたいですね。


  • 開発者直伝の「片面高速タイプ」上手な乾かし方。まずは手のひらを上向きにして風を当てる。

  • 次に手の甲側。どちらも両手を揃えてゆっくり引くのが、早く乾かしたいときのコツ。

  • 最後に、手の側面などに残った水滴を手もみしながら吹き飛ばす。さっそく試してみてください。
Vol.23 イライラがなくなるハンドドライヤー?「乾いた感」と使い勝手をとことん追求した高速両面タイプのクリーンドライ決定版。 Vol.23 イライラがなくなるハンドドライヤー?「乾いた感」と使い勝手をとことん追求した高速両面タイプのクリーンドライ決定版。

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