Vol.16 4つのエコ機能を搭載「タッチスイッチ水ほうき水栓」開発の裏にはひたむきな努力と過酷な日々が。

Vol.164つのエコ機能を搭載「タッチスイッチ水ほうき水栓」開発の裏にはひたむきな努力と過酷な日々が。Text:Yayoi Okazaki Photo:Hiromitsu Uchida

TOTOのシステムキッチンのeco代表選手「水ほうき水栓」。サッと洗い流せる幅広シャワーで後片付けがスイスイできると大好評です。この「水ほうき水栓」が美しいデザインはそのままで、さらにパワーアップ。知らず知らずのうちにお湯を節約できる節湯(せつゆ)機能「エコシングル」に加えて、新たに「タッチスイッチ」と「エアイン」が追加され、2014年3月発売のシステムキッチン「クラッソ」に搭載されました。節水効果も29%から41%と大幅にアップし、よりecoでお得に。ただその裏には開発スタッフのひたむきな努力と苦闘の日々が…。今回は新「水ほうき水栓」開発のストーリーをお届けします。

荒木 一文(あらき・かずふみ)

機器水栓事業部 機器水栓開発部
キッチン・洗面水栓開発グループ
1992年 TOTO株式会社入社

2000年に水栓事業部へ異動し浴室用水栓を担当。
2012年からキッチン水栓担当に。
水ほうき水栓のタッチ化、エアイン化に携わる。


Chapter 1

10万回以上押しまくらないとOKがもらえない!

10万回以上押しまくらないとOKがもらえない!


タッチスイッチなら手の甲で楽に水を出し止めできる。

トイレや浴室で着実に節水化を進めてきたTOTOの、次の目標はキッチンでした。すでに「エコシングル水栓」や「水ほうき水栓」が誕生し、どちらも大変好評でしたが、もう1歩踏み込んだ節水を実現したい。そのためには、こまめに水を出し止めできる「タッチスイッチ」と、空気を含んだ大きな水粒で節水しながらたっぷり洗える「エアイン」をなんとか現行の「水ほうき水栓」に搭載できないか。それもお客様に好評の美しいデザインはそのままで。それが僕のチームに与えられた課題でした。

まずは「タッチスイッチ」です。使用者モニターさんを観察すると、調理中に汚れた手を洗ったり、食器をさっとゆすいだりする際に、大量の水を無意識に使っている。だから、こまめに水を出し止めできる「タッチスイッチ」は、汚れた手でも容易に使えるため、節水には非常に効果的。しかも、水栓の先端で出し止めできると一連の作業がスムースに行えるんですよね。ただ、既に「タッチスイッチ」が導入された浴室用水栓と比べると、キッチンは桁違いに出し止めが多い。その回数は、なんと10万回をはるかに超える! さらに「水ほうき水栓」は先端が細いのでコンパクトじゃないと入らない。そんな耐久性がある「小型防水スイッチ」は世の中に存在しません。じゃあ自分たちで作るしかない。防水性をキープできるか? 適度なクリック感は? 配線はどうする? 現行の水栓フォルムを崩さないサイズは? その過程は本当に悩みだらけでした。

しかも40近い数のパターンを検討し、いくつか試作品を作り上げたのですが、本当にそれだけの耐久性があるのかがわからない。それを証明できるのは、実地検証だけです。そう、チームみんなでひたすら押し続けましたよ(笑)。延べ100人以上が回数を数えながら30分交代で。ロボットにお願いしたいところですが、やはり人が使うものですからね。どんな角度から押しても大丈夫か、水没にも耐えられるかなどあらゆる使い方を想定した結果じゃないと、社内のOKがもらえない。

またもう1つの難題が、先端のタッチスイッチと駆動部をつなぐ有線ホース。「サッと洗い流せる」が特徴の水ほうき水栓は、ヘッド部分を引っ張り出せる形状になっているので、数万回の曲げ伸ばしへの耐久性が必要です。万が一、線が切れて信号が送れなくなったら一発アウト。部材の選定や配線方法に細心の注意を払うのはもちろん、いろんな動きを試したり、寒冷地でも使えるよう凍らせてみたりと、さまざまな検証を進めて、ようやく信頼性の高い独自の「タッチスイッチ」と「有線ホース」が完成したのです。


  • 水ほうき水栓の有線ホース。

  • 電線を巻く間隔や材質選びにも苦労した。

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Chapter 2

たくさんのケチャップとコンパクト化に煩悶する。

たくさんのケチャップとコンパクト化に煩悶する。

次は「水ほうき」のエアイン化です。TOTO独自の技術「エアイン」は、既に浴室シャワーで「浴び心地」と「節水」を両立させていますが、浴室とキッチンでは求められるものが違う。キッチンでは、心地良さではなく食器の汚れをきっちり落とせることが大前提です。でも「水ほうき水栓」の特徴である当たって広がる「ぬれひろがり」による優れた「洗浄性」や「作業効率」を、「エアイン」で実現するのは至難の技。水に含ませる空気量が多いと水流が柔らかいので汚れ落ちに時間がかかって、トータルの使用水量が減らせないんですね。そこで「ぬれひろがり」を損なわずにエア混入率をどこまで高めることができるか。エア混入率を微妙に変えた試作品をいくつも作り、徹底的に現行品との比較検証を繰り返しました。それも単純に「ぬれひろがり面積」を比べるだけじゃなく、実際にケチャップなどで汚した食器を用意し、予洗いとすすぎ洗いで作業時間を計測。最適なエア混入率にたどりつくのに、どれだけ大量のケチャップを消費したことか(笑)。「キッチンならではのエアイン」開発は、想像以上に大変でした。


  • 空気を含んだ大きな水粒が特徴のエアイン。

  • 当たって広がる「ぬれひろがり」が作業効率を高める。

というのも、あの直径28mmのスリムな水栓に「水ほうき」「タッチスイッチ」「エアイン」の部品を詰め込まなきゃいけない。本来なら追加機能があればサイズも容積も大きくなって当たり前なのですが、いまの「水ほうき水栓」のフォルムは絶対崩せないので、エアイン機能部(水と空気を混ぜる部分)を非常にコンパクトにする必要がある。それも単純に小さくするだけじゃ全然ダメ。吐水のムラ、割れ、逆流などが発生するたびに設計は何度もやり直し。研究所と協力しながら難題に挑戦し続けましたが、なんども「タッチかエアイン、どっちかやめてくれー」と叫びたい気持ちに(笑)。会社からの帰り道でもずっと考え続け、あっ!とひらめいてあわてて会社まで戻ったこともありましたね。でも苦労の成果・新「水ほうき水栓」は、従来のシングルレバーと比較して約41%節水という画期的なキッチン水栓になり、TOTO全体での環境目標達成にも貢献できました。いまでも、我が家の食卓にケチャップが登場すると苦闘の日々(笑)を思い出しますが、多くの人に喜んでもらえる水栓を作りたい。そんな僕の夢がこれでひとつ実現できたように思えます。


  • 直径28mmのスリムなタッチスイッチ開発に四苦八苦した。

  • 部品を極限までコンパクトにして水栓内に収納。

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編集後記

編集後記by Yayoi Okazaki

いやはや、ものすごいストーリーでした。特に「タッチスイッチ」をひたすら押し続けたという話にはびっくり。「まさに苦行ですよね」と思わず言ってしまいましたが、実験室の壁には「気分が悪くなったら交代してください」という貼り紙が、実際に貼ってあったそうです。そこまでする開発者たちもだけど、そうじゃないとOKを出さない会社もスゴイ。それが「信頼できる商品」を世の中に送り出すということなんでしょうね。もともと「簡単に水を出し止めできれば(手が汚れていても)取っ手を汚さなくて済むのに」というお客様の声からスタートしたタッチスイッチ開発。女性なら誰しも「わかる、わかる」と思うはず。手の甲でちょんと押すだけなら、そりゃ自然と節水になりますって。そんな「意識しなくてもeco」な工夫が4つも搭載された水栓。以前「エコシングル」や「アクアオート」を取材したときにも感じましたが、本当に「たかが水栓、されど水栓」なんですね。

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