Vol.14 「包装」が裏方だなんてもう思えない!知恵と情熱の結晶「包装設計」驚愕の世界。

Vol.14「包装」が裏方だなんてもう思えない!知恵と情熱の結晶「包装設計」驚愕の世界。Text:Yayoi Okazaki Photo:Hiromitsu Uchida

製品を守るための「包装」も進化しているのをご存じですか?
TOTOでは20数年も前からリサイクルが容易な段ボールだけを使う環境にやさしいecoな包装に切り替えています。それも、いかに少ない資材で製品の安全をしっかり守るか。包装設計の開発者たちは、ありったけの知恵と技術を駆使し続けてきました。その成果が国内外での包装設計における輝かしい受賞歴です。
過剰包装から適正で扱いやすい包装に進化するための苦労とは? 生産・流通・施工に関わる人たちみんなに喜ばれる包装とは? 今回は普段、消費者が目にすることのない「包装設計」の驚くほどクリエイティブな開発ストーリーをお届けします。

桐野 賢太郎(きりの・けんたろう)

ウォシュレット開発第二部
包装・印刷物グループ
2002年 TOTOハイリビング入社

入社から7年間、洗面化粧台の改良を担当。
2008年 包装管理士の資格を取得。
2009年 包装・印刷物グループに転籍。
ウォシュレット、ウォームレットなどの包装開発を担当。


Chapter 1

「包装はゴミ」という言葉に衝撃を受ける。

「包装はゴミ」という言葉に衝撃を受ける。

僕が「包装管理士」の資格を取得したのは、当時の所属部署に誰も取得者がいなかったから。正直、「手に職が付くかも」程度の軽い気持ちでした。だから社内に包装の世界では有名な岡崎上席技師※がいることも知らなかった。そんな自分が包装設計のおもしろさに目覚めたのは、いまの部署に異動し、岡崎さんの思想に触れてからです。まず言われたのが「包装はゴミである」。これは衝撃でしたよ。でもその言葉の裏には、包装資材の無駄を省けば製品全体で環境負荷を減らせるという信念がある。だから、いかに最小限の資材で、製品の品質を守れるか。それを極限まで考えろと、徹底的に教え込まれました。

※岡崎義和氏。包装設計歴25年以上の大ベテラン。従来の包装の無駄を省き改良に心血を注ぐ様子は2013年「プロフェッショナル仕事の流儀/NHK放映」でも紹介された。

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Chapter 2

「緩衝材レス」のひらめきは卵パックから。

「緩衝材レス」のひらめきは卵パックから。

たとえば、このウォームレット(暖房便座)の包装では、底面に敷いていた緩衝材用段ボールを丸々1枚なくしました。その替わりに利用したのが、二重になった底の部分。ほら、この2枚の内底って何にも使われてなくてもったいないでしょ。この部分に切り込みを入れたり、折り曲げたりと工夫すれば、立派に緩衝材として機能するはず。そう思いつくまでが本当に大変でした。過剰包装を減らすといっても、大前提は製品を安全に守ること。あらゆるダメージを想定しなければならない。製品を保護する緩衝材を別に組み立てて、隙間を埋めることも試しましたが、やはりどこかに固定されてないと緩みが出てしまう。すると、固定のためにまた余計な材料が必要になる。試行錯誤の連続で煮詰まっていたとき、同僚が「紙の卵パックってすごいよね」とつぶやいた。たしかにケースが緩衝材を兼ねているんですよね。そこでひらめいたのが、箱のいらない部分の形状そのものを緩衝材にすることでした。


ウォームレットの包装に使われていた緩衝材用段ボール。これを丸々なくすことに挑戦した。


2枚の内底を利用して緩衝材の代用パーツを組み立てる。サイズや角度などすべての部位が緻密な計算の成果だ。

ただ内底の大きさには限度がある。あと数ミリ欲しいと思っても無理。特にスイッチのような突起部分は、脆弱なので手厚く保護したい。でもそのために使える部分がもうない。この段階では「なにがなんでも段ボール1枚ですべて包装する」と決めていたので、仕切りの追加は考えなかった。もう意地ですよね。ああ、ここで発泡スチロールが使えれば簡単なのにと何度も思いました(笑)。でも段ボール1枚にこだわったのには理由がある。それは包装のしやすさです。製品を固定するための段ボールの折り数は52ヶ所から20ヶ所へ。複雑な組み立てが楽になって1台あたり21秒、ひと月だと現場全体で約70時間もの短縮に。結局、完成まで8カ月もかかりましたが、この「緩衝材レス包装」は包装材50%削減に成功。現場での組立もラクになり、材料だけでなく時間のeco(時短)にもつながりました。2011年の「アジアスター賞」と「適正包装賞」を受賞し、国内外で高く評価していただきましたが、僕にとっては現場の人の喜びの声の方がずっと価値がある。環境にやさしい包装は、人に対してもやさしくあるべきですよね。


  • 1つの箱だけで包装が完結するようになった。

  • 上蓋には施工説明書をセット。これも施工業者の負担を減らすための工夫。

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Chapter 3

抜き打ちテストで2㎏のダイエットに成功!

抜き打ちテストで2㎏のダイエットに成功!


1アクションで引きぬけるように改良した紙製のジョイント。

人にやさしいといえば、こちらのタンク付きウォシュレットの包装もそうです。かつて、この製品のように背が高いものは、箱を開けて製品を上から引っ張り出すのが大変だった。重いから腰を痛める施工業者さんも多かったんです。それをジョイント(紙製のネジ)さえ抜けば、箱が上からスポッと抜けるように工夫したのが岡崎さん。このジョイント方式は特許を取り、腰痛も激減したそうです。それを更に改良してくれと頼まれたので、ジョイントを回す、引きぬく、の2アクションを、回しながら引きぬくだけの1アクションに。また付属品の収納を工夫して「天面(上)を開けて付属品を取り出す」動作をなくしました。何百台も施工する現場では、そのひと手間が大変な負担になるんですよね。でもそれだけじゃ資材削減にはならないし、もともとこれは岡崎さん設計の箱なので無駄な部材ももちろんない。正直、困りました。

ただ、ふと思いついたのが「こんな大きなものを、真っ逆さまに落とすことがあるだろうか」ということ。気になったので、輸送テストを実施して裏付けの数字を取ることにしました。輸送時の振動や衝撃を測定できる「環境データレコーダー」を製品にこっそり忍ばせた、いわば抜き打ちテスト。工場出荷からお客様宅まで、不慮の落下事故があるとしたら、どんな状態でどこの面から落とされたのかを何十回も調査。その結果、天面や側面からの落下事故は1度もなかった。ならば底面強化に全力を尽くせばいい。すると、シンプルな箱だけにすることが可能になり、段ボールの重量を2㎏近く減らすことができたのです。48%の資材削減という予想以上の成果に対し「いまは以前より物流の質があがったからな」と、岡崎さんにはからかわれましたけど(笑)。


  • タンク付きウォシュレットの新旧包装を比較。見た目は変わらないが…

  • 箱を上から引き抜いてみると違いが歴然。右の新型は緩衝材が激減している。

このように包装設計はアイデア勝負。開発者の個性がはっきり出る。10人いれば10通りのやり方があるわけです。それがおもしろい。いまでは、この包装設計の技術やノウハウを、海外拠点にも伝えて広めているんですよ。たしかに裏方ではあるけれど、人の気持ちを考えて工夫すれば多くの人に喜んでもらえますよね。運びやすいように設計すれば、運搬時に落とされることもない。しかも包装廃棄物が減ればCO2削減でecoに貢献できる。「包装」って奥が深いんだなと、心底思います。だからこれからも素晴らしい製品を美しいままお客様に届けることに、知恵と情熱を注ぎたい。いまではこの仕事に就けて、本当に良かったと思っています。

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編集後記

編集後記by Yayoi Okazaki

お話を聞きながらも目は桐野さんの手元に釘付け。実物の段ボール包装材は、まるで精巧な紙細工です。なかでも「凄い、凄すぎる!」と感嘆の声が一斉にあがったのが、箱の内底を使った緩衝材の見事さ。折り曲げた部分を斜め10度傾けて便蓋が開かないようにそっと押さえこむなど、驚くほど芸が細かい! 動画でお見せできないのが本当に残念です。また「包装試験室」が、これまた大迫力。「圧縮テスト」「落下テスト」「衝撃テスト」専用の大型機械がずらりと揃い、どんなに苦労した包装も厳しいテストをクリアしないと採用されない。だから完成までに図面は約20~30回は書き直し、試作モデルも10数回作り直すのが当たり前だとか。ならば新製品は出来ているのに包装が未完成なんてこともある? そう伺うと「そんな事態になったら、僕、出社できないですよ」と、桐野さん。製品完成日から逆算して設計を進め、デザイン変更があれば、また知恵を絞る。その姿は「裏方」というイメージとは真逆で、実に明るく生き生きと見えました。


  • 包装検査用大型機械を自前で持つ会社はあまりないとか。

  • TOTOは「日本パッケージングコンテスト」で、最多の13年連続受賞している。

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