トートー × マガジンハウス グリーンジャーナル
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グリーンジャーナル VOL.7 オーガニックコットンを選んで地球を守る。
編集・ライター / いのうえ あきこさん
編集・ライター / いのうえ あきこさん
編集・ライター。“暮らし”“生活”から見た農や食、ごみやエネルギー問題などの環境問題をテーマにし、雑誌『BRUTUS』や『Hanako』、ウェブなどを中心に編集やライターで関わる。
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写真/柿澤りか

オーガニックコットンへの道。

コットン栽培には、農薬がたくさん使われています。

コットンは、野菜と同じように世界各地で栽培されています。とてもデリケートな植物で、水をたくさんやりすぎると根が腐ってしまい、強い雑草が生えていると地中の養分を取られて生長が止まってしまいます。茎や枝も細いため、強風や雨が当たると倒れることも。そして何よりも虫に弱く、新芽のときにはアブラムシがつきやすく、大きくなっても葉の裏には、ダニ類がつきやすいのです。
そしてようやく花が咲いたら、結実してワタの毛がお目見え。ところが収穫できるのは、その実がはじけて乾燥してから。
生長したワタは、草丈1mほど、中腰の姿勢で手入れや収穫をするのは大変な労力です。アメリカ南部では、18世紀末から19世紀にかけて黒人奴隷によって、コットンの栽培をしていたことは周知のこと。その人員を大きく減らしたのが、20世紀初頭の農薬の導入と機械化です。雑草が生えないように除草剤を。虫がつかないように殺虫剤を。そして一斉に収穫できるように枯れ葉剤をまいて、摘み取り機で刈っていく。こうしてコットンの収穫は短時間で簡単にできるようになりました。

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あらゆる服の元――コットン。白いフワフワのコットンの中にタネがあり、このフワフワの繊維が糸になる。雨が苦手なコットン栽培は、手がかかるが、ここまで生長したらもうすぐ収穫。(写真提供/アバンティ)

「世界の農作物栽培面積のうちコットン畑はわずか2%。けれど使われている全農薬の16%をコットンの栽培に使っていると言われています」と教えてくれるのは、株式会社アバンティの代表取締役であり日本オーガニックコットン協会の理事を務める渡邊智恵子さん。アバンティは、1990年からオーガニックコットンを扱っている会社です。渡邊さんの言葉から、コットンは栽培面積と栽培量のわりに、使用される農薬類がとても多いことがわかります。
使われた殺虫剤や除草剤は、地中に流れこみ、水を汚染することになります。そして土壌も本来の力を失い、弱くなっていきます。ところが虫は薬に対して抗力を持ち、一度使った薬は効かなくなるため、さらに強い薬が必要になります。また地力が弱くなるので、化成肥料を投入。こうした農薬使用を繰り返す循環から、オーガニックコットン製品を製造・販売する興和株式会社テネリータ課の稲垣貢哉さんは「世界保健機関(WHO)の調べによると、殺虫剤や農薬の被害で、全世界で年間2万人もの人々が健康被害に遭っているという問題もあります」と言います。
こうした現実をふまえて、わたしたちが着ている服の生地の約半分がコットンといわれているいま、コットン栽培を見直そうという動きが始まりました。

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高さ10mほどの原綿の山。インドで栽培されたオーガニックコットンは、乾燥している地域もあって収穫後は屋外に山積み。この後紡績工場へ運ばれて糸になる。(写真提供/テネリータ)

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花が終わり結実して間もなくワタがはじけるはずだったが、風で倒れてしまったコットン(少しワタが見えているものも)。オーガニック栽培では殺虫剤を使わないので、葉には虫食いの跡も。(写真提供/テネリータ)

オーガニックコットンを選択できる時代。

オーガニックコットンとは、農薬や殺虫剤などを少なくとも3年以上使用していない畑で、農薬や殺虫剤、化成肥料などを使わずに有機肥料のみを使って栽培されたコットンのことを指しています。世界有数のアパレルメーカーは、そうやって栽培されたオーガニックコットンを使用することで、環境への負荷、人的健康被害を少しでも減らしたいと思ったのかもしれません。実際、2001年には2億4500万ドルだった、オーガニックコットン製品の全世界の売上は、2008年には30億2000万ドルにまで伸びてきています。このような背景から、オーガニックコットンラベルの認証制度が整い始めました。

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米国テキサス州で収穫前の同日のコットン畑の様子。左がオーガニック栽培をしている畑。右の写真は殺虫剤や農薬を使用して栽培している畑。収穫前には枯れ葉剤をまくので、全面的に枯れており、地面もむき出しで雑草すら生えていない。このあと機械で一気に刈り取る。いっぽうオーガニック栽培の畑(左側)は、徐々に枯れているものもあり、青々とした草が生えているのがわかる。(写真提供/アバンティ)

まずコットンは収穫後、ワタをほぐして糸状によりやすくします。それからよって糸にし、ボビンに巻き取ります。続いて、糸を漂白して染めます。その後、その糸を織り生地にして、最後に仕上げのさまざまな加工をして初めてコットン製品が誕生します。
こうした製造行程すべてにおいて、できるだけ環境汚染の少ないものを使用したコットンで服を作っていきたいとするメーカーの動きがあります。前出のアバンティの製品は、日本オーガニックコットン協会が承認する「pure cotton」のラベルが付いている商品を扱っています。このラベルは、同協会が定めた認証基準に基づくオーガニックコットン製品であることを 証明します。素材のコットンは、オーガニックであることはもちろん、服になるまでの工程全てが、規定内の化学物質の使用量、あるいは天然と認められたものだけを使用し、他のコットンが一切混じらないように厳格に区分された工場で生産されていることが条件となっています。
「日本オーガニックコットン協会のマークは、あくまでも目安。けれどそのコットンのトレーサビリティ(生産履歴管理システム)ができます」(渡邊智恵子さん)。いつどこで栽培、収穫され、どこの工場で糸になり生地になったのか追跡できるというシステム。「ラベルが目安になるのは、もうひとつ意味があります。オーガニックのコットンといっても、本当かどうかわからないマガイモノが市場に出ることもありますね。そういった嘘から消費者を守る意味合いもあります。このラベルが付いているものは、間違いなく100%オーガニックコットンです」。
こうしたラベリングは、欧州を中心に広まっています。欧州のオーガニックコットン認証をしているコントロール・ユニオン(Control Union)の認証を得た商品作りをしているのが、興和株式会社のオーガニックコットンブランド「テネリータ」です。コントール・ユニオンの認証は、「グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード(Global Organic Textile Standard:略してGOTS)」といいます。日本オーガニックコットン協会も運営機関に加わっています。
そして、付け加えるならば、服の製造工程まで厳密にオーガニックとうたえなくても、糸だけはオーガニックコットンを使っているという商品も、ここ近年は増えてきています。

また新たにこの認証マークを得るために農家を助ける「プレオーガニックコットンプログラム」も誕生し、ますますオーガニックコットンに注目が集まっています。後編(12月7日UP)では、プレオーガニックコットンとオーガニックコットン製品を紹介します。

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日本オーガニックコットン協会(JOCA)が認証している2つのラベル。「ORGANIC Pure」は、100%オーガニックコットンを使用し、環境に対して影響の少ない一定の条件下での加工や染料を認めるもの。「ORGANIC Basic」はオーガニックコットンを60%以上使用し、化合繊維の使用は10%以内、また絹や麻、通常綿の混用は可。規定の条件下での加工・染料を認めているもの。

<関連リンク>

1 2 PART:2  オーガニック&プレオーガニックを選ぼう。