TOTO×マガジンハウス 環境と建築:Vol.8 東利恵さんが考える  省エネでないエコロジー


省エネの前に考える「エコロジカル」のあり方。

「星のや 軽井沢」では、エコロジカルとは何か、をずいぶん学びました。
それはあくまで“省エネ”とは違う。
“省エネ”は結局、かかる金額をいかに抑えるかという方向に行ってしまいがちですが、
“エコロジカル”であることは、最終的には、CO2排出量ゼロを目指すなど視点が違うんです。
極論をいえば、薪を燃やして出るCO2を木々が吸収して育ち、かつO2に変換し、
育った木々をまた薪にするという循環が成立することが理想なのでしょうが、
大規模施設ではなかなかそうはいきません。
「星のや 軽井沢」では、最終的には元々持っていた水力発電に加え、
地中熱と温泉の廃熱を利用したヒートポンプで給湯と暖房を行い、
足りない分を買電で賄い、厨房用だけプロパンガスを使っています。
施設全体の7割以上が自然エネルギーというかたちになっているんです。
建築的には、軽井沢の涼しい風を最大限に利用するために、
建て替える前に既存のコテージの屋根に風楼、風の通り道をつけ、実験をしました。
すると実際に冷たい空気が抜け、やわらかく下りてくる。
その心地よいやわらかさはエアコンには絶対にできないんですよね。
この風楼によって、エアコンをつける日数が半分にまで減少するというような
実験の結果も出たんです。

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「星のや 軽井沢」すべてのコテージの屋根に風楼がある

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Photo:Kanako Nakamura

設計から設備まで、すべてにおいて日本の魅力を表現したい

6月1日に、沖縄県の竹富島に「星のや」でのプロジェクトとしては3軒目となる
「星のや 竹富島」がオープンしました。
ここでは敷地近くが伝統的建造物群保存地区に指定されており、
竹富島文化の建築が残っています。
石垣に囲まれたなか、南側に入口が、北側には風を防ぐ木立があって
それを大屋根が覆って心地よい影の下に部屋をつくる。
この土地の気候風土にあった、とても理にかなった建物です。
先人の知恵が形となり、風景となっているんですね。
「星のや 竹富島」でも、この知恵を踏襲したいと考え、
各室は南から北へと風が抜けるプランを基本としました。
伝統的なものを踏襲することと、新しいものをつくりたいという建築家としての意思とは
一見相反するかに思えるかもしれません。
でもここでは、自己主張は抑えて島のための形を考えることこそ、建築家の良心だと思いました。
3.11で東北の沿岸がいっぺんに失われました。これから新しい町がたち現れていくときにも、
昔ながらの風景に思いを込めた町が現れてほしい、と強く願っています。
とくに短期間に大きな面の開発を考えるときには、
建築家は自己主張としてのデザインを注意深く抑え、
その土地の文化や歴史を考えるべきだと思うのです。

「星のや 竹富島」の話に戻ると、ここはお風呂がとにかく気持ちいいんですよ。
風の通り道、バスルームのど真ん中にぽん、とバスタブがあって。
開放的で明るく、広々としています。
リゾートにとって水回りはとても重要な部分。
ただし機能がいいだけでは不十分で、日常から少し抜け出た感じを演出する必要があるんです。
そのために海外製を使用することもあったのですが、
元々日本製水まわり製品の性能は世界一だと私は思っているんです。
ウォシュレットやエアコンのきめの細かい調整は、誰にも真似できない(笑)。
だからデザイン力がついてきたことはとても嬉しいことだな、と思っています。
建築を通じて日本を表現する空間を作っているからには、
水回りも日本のものだけでつくっています、と自信を持って言いたいですから。
だから今後にも大きく期待しています。

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6月にオープンしたばかりの「星のや 竹富島」

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風の通り抜けるさわやかなバスルーム。

 

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