TOTO×マガジンハウス 環境と建築:Vol.7[海外特別版] ZGF渡辺義之さんが目指す  包括的なサステイナブル・デザイン。


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渡辺義之さんとトゥエルブ・ウェストの模型

施設のクオリティと、ホテルならではの省エネ法。

サスティナブル・デザインの建築を考えるときに、
スペックを上げることばかりに熱心になってしまうと見逃しがちなことがいくつかあります。
そのひとつが敷地の選択です。ご存知の通りアメリカは車社会ですから、
通勤も車ということが多いのですが、
「トゥエルブ・ウェスト」は街の中心にありますから、
賃貸住居の住人にとっても、私たちZGFのスタッフにとっても、
徒歩や自転車、バス、路面電車での通勤が容易です。
実際に私も家からは10分ほど歩いて通っていますし、
地下に駐輪場が完備されていますから、自転車で通ってくるスタッフも多い。
車通勤によって発生するCO2は、こうして無理なく削減することができるんです。

さらに、資材調達においても、コンクリートや鉄骨等の建設材料は出来る限り近郊から調達し、
ドアや家具、床材なども地元調達のできるリサイクル材料であることを条件としました。
室内環境をきちんと考慮することも肝要で、
「トゥエルブ・ウェスト」では、外に開く窓やテラスが設けられて、
スタッフやアパートの住人といった“ユーザー”が、
いつでも自由に外気に触れられるようになっています。
たとえ高機能の省エネ・デザインであっても、
そこにいて居心地の悪い建築では意味がありません。

自然環境や敷地周辺の環境に優しく、オーナーの懐にも優しい。さらにユーザーの居心地もいい。
関わる全ての人に利点があるというようなサスティナブル・デザインは可能ですし、
建築家がそれを目指して設計することが強く求められています。
「トゥエルブ・ウェスト」は、アメリカのエコ建築の認証制度である
LEED(Leadership in Energy & Environmental Design)の
プラチナ認証を得ることができました。これもとりもなおさず、
包括的なサステイナブル・デザインが達成されているからにほかなりません。

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トゥエルブ・ウェストのアパート・エントランス Photo:Eckert&Eckert

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トゥエルブ・ウェストのオフィス・エントランス
Photo:Nick Merrick © Hedrich Blessing

これからのサスティナブル・デザインに望むこと。

米国グリーンビルディング協会という非営利団体によって開発・運営されているLEEDは、
この10年間ほどで急拡大しました。
行政のバックアップもあり、建築家はもとよりメーカーにまで、
LEED認証を得ることの利点や、サスティナブル・デザインの緊急性が浸透したからです。

日本でも、国土交通省の管轄下で“日本版LEED”ともされる
「CASBEE」という認証制度が施行されていて、今後の普及が期待されます。
「CASBEE」を軸に、包括的なサスティナブル・デザインという概念が
設計サイドや施主サイドに浸透していくことを願います。

ただし建築家としては、“包括的なサスティナブル”を目指すときに、
開口部が小さくなっていくのを避けなくてはいけない、とも思っています。
断熱性や施工の効率を考えるとどうしても閉じた印象の建物になりがちなのです。
でも、道に対してひらいていくことで、街全体が歩きやすいものになり、
住民に愛着も持たれるようになったポートランドの例を考えてみてほしい。

TOTOをはじめとする環境に配慮した商品のメーカーも同じことを考えておられると思いますが、
お風呂であれ、トイレであれ、環境に優しい商品であると同時に、
快適さや満足感も同時に得られる商品こそが、
環境に配慮した商品と呼ばれるべきものだと私は思います。
建築も同じで、街づくりへの貢献やユーザーの快適さへの目配りは常に欠かさずにいたいし、
そのための知識を、建築家は学んでいかなくてはいけない。
真のサスティナブルは、ライフスタイル全体が
気持ちよくサスティナブルになったときに達成される。
そういう暮らしを、建築を通じて達成していきたいんです。

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トゥエルブ・ウェストのサスティナブル・デザイン略図
by ZGF Architects LLP

 

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