TOTO×マガジンハウス 環境と建築


Vol.7[海外特別版] ZGF渡辺義之さんが目指す 包括的なサスティナブル・デザイン。

Text:Sawako Akune

「道歩き」が楽しいアメリカ西海岸の街・ポートランド。

アメリカ・オレゴン州のポートランドは、人口約60万、
周辺人口まで合わせると220万人程度の中規模都市。
2008年”全米一環境に優しい都市”に選ばれました。
日本では片田舎の街と思われがちですが、第2のシリコンバレーとも呼ばれ、
産業もかなりしっかりと根づいています。
海まで近く、また街の中をウィラメット川が流れ、東にはフッド山という山も見える。
南側にはワイナリーが広がって ……、と大自然に囲まれた街でもあります。
僕は12年ほどボストンに住んだ後、5年ほど前にポートランドに来ましたが、
全米の他の都市とは全く異なる街づくりをしていることには驚きますね。

なんといっても、歩いていて楽しい「道づくり」がなされている都市なのです。
アメリカの都市はたいてい、規模が大きくなると
郊外に向かって広がっていく傾向にあるのですが、ポートランドはその全く逆。
都市の外郭を設定し、トラムも導入しつつ都市内部の活性化や高密度化に力を注ぎました。
実は1950〜60年代にかけて、車社会が到来して、
街が車と駐車場だらけになってしまったことがあるのですが、
その荒廃から脱して美しい街を取り戻すために
ニール・ゴールドシュミットという若い市長が住民とともに改革を押し進めました。

彼が目指したのは、昼も夜も安全に歩き回ることのできる“24時間ダウンタウン”。
建築家たちはそのスローガンのもと、中〜高層のミックスユースの建物を提案するんです。
10〜20階建て程度の建物の一階にレストランやカフェ、バー、店舗などが入り、
その上階がホテルや学校、マンション、オフィスなどになっている建物ですね。
そういう街づくり、道づくりを40年にわたって続けてきましたから、
街をぶらぶら歩いていても、ただの壁とか、光の当たらない薄暗い場所があまりありません。
さらに建物には昼も夜も人が出入りするから治安もいいし、街路樹や花壇は街を彩っている。
日本から視察にいらした方にも、
歩いていてすごく居心地がいい街だという感想をいただくんです。

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ポートランドの街中ではトラムが活躍。写真はZGFデザインの停留所。 Photo:Bruce Forster Photography, Inc.

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ポートランドの街とトゥエルブ・ウェスト
Photo:Timothy Hursley

サスティナブル・デザインの集大成・Twelve West(トゥエルブ・ウェスト)。

私がポートランド拠点の設計事務所、
ZIMMER GUNSUL FRASCA ARCHITECTS(以下ZGF)に移籍して初めて担当した建物が、
2009年に完成した本社屋である「Twelve West(トゥエルブ・ウェスト)」です。
23階建て、総面積5万平米以上の巨大なこの建物もまた、ミックスユースの建物で、
我々のオフィスのほかに、270室の賃貸住居やレストランが入ります。

ZGFは、まだサスティナブル・デザインという概念が根づく前の1980年代から、
環境に配慮した建築を手がけてきた実績をもつ会社。
ですから「トゥエルブ・ウェスト」でもサスティナブル・デザインであることは大前提でした。
日本だとまだまだ、サスティナブル=省エネくらいに考えている方が多いようです。
「トゥエルブ・ウェスト」では、たとえば水の使い方ひとつをとっても、
160坪の屋上庭園に落ちる雨水を庭園の土壌で濾過して、
年間100万リットルの規模でトイレや庭園の灌漑などに再利用しています。
ポートランドは雨が多いので雨水の利用は費用削減の意味でも効果的なのです。
一方でカリフォルニア州、ネバダ州、アリゾナ州など水不足に悩む地域では、
水の有効利用にはとくに関心が高く、節水性に優れた製品への大きい需要があります。
TOTO製品は、特に個人住宅のプロジェクトやレストランの設計などの際に節水はもちろん、
美しいデザイン、高品質といった観点から選びますね。

さらに「トゥエルブ・ウェスト」では節水のほかにも、
断熱性能の向上、ソーラーパネルの設置……と、
細かいものから大きなところまで、さまざまな工夫や試みがなされています。
しかし、本当のことを言うと、これら全てを合わせてもまだ、
真に「サスティナブルである」とは言えない。

サスティナブル・デザインとは、敷地選択/再生可能エネルギーの利用やエネルギー浪費削減
/水利用の効率化/正しい建材や商品の選択/室内環境の向上……といった、
いくつもの側面から考えなければならない、包括的なものだからです。

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トゥエルブ・ウェストの屋上 Photo :Eckert & Eckert

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トゥエルブ・ウェストのオフィス Photo:Basil Childers

固有の風土とバックグラウンドをベースに、
環境に優しい都市開発を進めてきた
ポートランド。
ZGF建築事務所が設計し
LEED認証プラチナ認定を受けた
トゥエルブ・ウェストを例に、
建築家・渡辺義之さんの考える
「包括的なサスティナブル・デザイン」
について、うかがいました。

渡辺義之(わたなべ・よしゆき)

ZGF建築事務所アソシエート/建築家。1966年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、金融機関勤務。建築への夢を果たすべく米国留学、MIT建築学修士。ボストン市Kallmann McKinnell&Wood建築事務所を経て、2006年ポートランド市発展の力となったZGFに魅力を感じ移籍。敷地、間、動線、素材を、日本の美意識や環境設計の視点を通し美空間として創造することを目指す。プロジェクト・デザイナーとして関わったTwelve/WestやPort of Portland HeadquartersはLEEDプラチナを取得、John Jaqua Center for Student Athletesは2011年度米国建築家協会最優秀インテリア賞をはじめ主要デザイン賞を多数受賞。

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