TOTO×マガジンハウス 環境と建築


Vol.2 光を通じて自然を感じる――“気づき”を表現するトラフ。

Text/Norio TAKAGI Photo/Kanako NAKAMURA

自然環境の変化を視覚化する“気づきの建築”。

年に一度、イタリア・ミラノで開催される
インテリア・デザインの祭典「ミラノサローネ」
50周年を迎えた2011年、日本の光学機器メーカーの展示会場が、注目されました。
会場構成を手掛けたのは、トラフ建築設計事務所。
鈴野浩一さんと禿真哉さんによる建築家ユニットです。
「光の織機」との作品名通り、
光源からスクリーンまでの間の光跡に沿って放射状に糸を束ねて、
“光の形”を視覚化していました。

「映写機の光が周囲のチリを照らして見えてくるように、
普段は見えない光跡が形となって現れることをイメージしました」と、鈴野さん。
「会場を訪れた人は、映像ではなくて、みんなプロジェクターの方を振り返り、
光の形を目で追っていました」と、禿さんも笑顔で語ります。
まさに意図した通り。してやったりでしょう。
2011東京デザイナーズウィークの、
TOTO展示会場でも光を利用した構成を披露します。

「建築でも、会場構成でも、普段は形として意識していない
光だったり風だったりの現象を扱うことに興味があります」とは、
ユニットとしての共通認識。
それは、最初の建築作品である「港北の住宅」(2008年)でも、明確に表現されています。
夫婦が老後を過ごすためのバリアフリーの1階建て鉄筋コンクリート造の住宅は、
まるで4つのフジツボが集まり、
方々に突き出しているかのような特異な形状が特徴的です。
それぞれの筒型屋根には天窓が設けられていて、光を室内へと導く仕掛け。

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港北の住宅のプレゼン時に用意した模型。

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港北の住宅の外観。

「周囲に住宅が建ち並ぶ旗竿敷地に、“明るい家を”との希望に応えるために、
トップライトによって自然光を取り込む形を考察しました。
それぞれの屋根は、四季や時間によって変わる光の方向と、
周囲からのプライバシーを確保できるよう、角度を変えています」(鈴野さん)

室内はワンルームで、4つの屋根の傾斜が、ゆるやかに空間を分節しています。
内断熱を施した内壁は、トップライトからの光を反射して、
全体を明るく照らし出してもいます。

「4つのトップライトからの光は、刻一刻と位置が変わり、
太陽の動きを意識させます。
それに伴い白い壁には陰影が浮かび、
より強く光を感じられるようになっています。
夜には月の明りも取り込めて、“満月の夜には照明が要らないほど”だと、
お施主さんにも喜んでいただけました。
自然の光は静止状態にはなく、
常に変化していることを引き受け、デザインしました」(禿さん)

太陽や月といった自然の光を意識させる住宅は、
住む人に自然環境の有り難さも、認識させるような、いわば“気付きの建築”。

「建物は動かないからこそ、自然環境の変化を映し出してくれます。
だから環境を強く意識させる効果があるのだと思います」(鈴野さん)

4つの天窓で切り取られた空は、やはり住み手に雲や青空、星などの動きも意識させ、
自然への配慮へと導くのかもしれません。

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港北の住宅。リビングに太陽の光が射しているとき。

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港北の住宅。表情を変える夜のリビング。

第2回は、東京デザイナーズウィークでも
活躍する、トラフ建築設計事務所。
建築家の鈴野浩一さんと禿真哉さんが
作り出す光のアートは、
いろいろな視点で自然や環境への思いが
込められています。
3・11を受けて変えなければいけないこと
「個々の環境意識の覚醒と気づき」を
さまざまな形で表現していきます。

トラフ建築設計事務所

鈴野浩一(すずの こういち/写真左)さんと禿真哉(かむろ しんや/写真右)さんが2004年に設立。建築の設計をはじめ、ショップのインテリア・デザイン、展覧会の会場構成、プロダクトデザイン、空間インスタレーションやムービー制作への参加など多岐に渡り、建築的な思考をベースに取り組んでいる。主な作品は「テンプレート イン クラスカ」「NIKE 1LOVE」「ブーリアン」「港北の住宅」「空気の器」など。2011年「空気の器の本」、作品集「TORAFU ARCHITECTS 2004-2011 トラフ建築設計事務所のアイデアとプロセス」 (ともに美術出版社) を刊行。

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