TOTO×マガジンハウス 環境と建築


Vol.1 原研哉さんに聞く環境とデザインの未来。

Text/Norio TAKAGI Photo/Kanako NAKAMURA

「家」は、ライフスタイルを完成させる場。

「新しい常識で都市に住もう」──原研哉さんが2011年3月に立ち上げた
「HOUSE VISION」のテーマです。日本のグラフィック・デザイン界の第一人者。
様々な広告やポスター、パッケージなどで日本を美しくデザインしてきた原さんが、
住宅の領域にまで踏み込んだのは、
「デザインとは、暮らしやコミュニケーションの総体であり、
建築はその大きな要素ひとつ。
そうしたデザインの本質を突き詰めて行くと、
どうしてもデザイナーは、最終的に“家”をやらざるを得なくなる」から。

さらに日本を取り巻く社会情勢や価値観の変化を感じ取り、
家づくりのあり方、住まいのかたちも変化すべきだとの想いが、
「HOUSE VISION」を発足した動機だとも語ります。

「高度成長期を経てバブルの時代まで、不動産的ハウジングは、まずマネーでした。
地価は毎年右肩上がりに高騰するものと信じられ、
土地ばかりが重要視され、家そのものは軽視されてきました。
土地は値上がりするけど、家の資産価値は住み続けるほど、どんどん下がっていくし、
間取りも2LDKなどに均一化され、建築家の関与も少なかった。
しかし経済的には水平飛行の時代となり、
土地ではなく、家そのものに価値を見出す人が増えきています。
パックツアーで海外旅行に行くのではなく、個人旅行する人が増えてきているように、
ハウスメーカーのお仕着せではなく、
自身のライフスタイルに合わせた家を考えようとする人たちが登場しているのです」

イメージ
タコ焼きのイメージ イラスト/日本デザインセンター

そうした家への関心を高めつつある人たちに対し、
原さん、すなわちHOUSE VISIONは、リノベーションを積極的に推奨しています。

「中古住宅や中古マンションを買って、
内側を自分の趣味嗜好や暮らし方に合わせてリノベーションすれば、
新築するよりもはるかに安く、自分好みの家を手に入れられますから。
家を構造体であるスケルトンのストラクチャーとインフィル(内部空間)に切り分け、
インフィルから家を作っていこうというのが、“新しい常識”のひとつの考え方です」

原さんは、ユニークにもそれをタコ焼き機に例えます。 タコ焼き機の型はそのままに、
タコ焼き自体はクルクルと次々に新しくなっていくように、
家も構造体をそのまま使い、インフィルがどんどん刷新されてゆく。
原さんの自邸も、中古マンションを建築家と一緒にリノベーションしたもので、
自身の経験からその有益性を実感しているとか。
またエコの観点からも、スクラップ&ビルドより
既存建物の一部を使うリノベーションの方が、はるかに環境負荷が小さく、有効です。

「インフィルから家づくりを考えると、家の可能性は無限に広がります。
僕は将来、家は総合家電化していくだろうと予想しています。
照明自体が天井になり、テレビモニターが壁になるような。
そうなってくると、ハウスメーカーではなく、
家電メーカーが家づくりをするようになるかもしれない。
インフィルから家にアプローチすれば、例えばTOTOが、
一番見晴らしがよく日当たりが良い場所にドーンとバスルームを置いた、
“お風呂が主役の家”のような、大胆な提案もできるでしょうし、
実際にどんどん提案していって欲しい。
さまざまな企業が、集結して家づくりに関与していけば、内需拡大にもつながります」

第1回でお話を聞くのは、
デザイナーの原研哉さん。
「家」づくりへの新しいトビラを明けた
原さんが考える建築という枠にとらわれない、
環境とデザインが向かうまったく新しい
ビジョンを語ってくれました。

原研哉(はら・けんや)

1958年生まれ。グラフィックデザイナー、日本デザインセンター代表、武蔵野美術大学教授。「もの」のデザインと同様に「こと」のデザインを重視して活動中。無印良品のアートディレクション、長野オリンピック公式プログラム、愛知万博プロモーションほか数々のデザインやディレクションを担当。また『RE DESIGN』 『HAPTIC』『SENSEWARE』など価値観を更新していくキーワードを擁する展覧会数多く手がける。『RE DESIGN』展で世界インダストリアルデザインビエンナーレ大賞を受賞。近著『Designing Design』、『白』は世界各国語に翻訳され多くの読者を持つ。

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